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大宮伸一は桜カレンにフラグされた。  作者: 海堂ユンイッヒ
15/212

【e1m15】相手にパス

これでゲット&ランは終了します。

「New roun――」

Wolfplayer〔弓道場 〕:カレン!

 言うまでもなかった。既に1人を忘却の彼方に吹き飛ばしていた。続けて、別の1人にブチ当ててフラグを稼いだ。最後はミニガンでないだ。カウントダウンが終わるまで、小早川氏以外のモブを全て蹴散らした。彼女の脳内で、厳つい声のオッサンが“マルチフラグ!”と叫んでいるだろう。

 次のラウンドでは、全員駐輪場2階にリスポーンした。最後の攻勢へと駆け出す。

RoadMaster123〔駐輪場2階 〕:What’s next?

 試合終了は、掃除終了時刻と同じ。てことは、後2分ちょっとで、スコアは10対14。フラグされた青は、武器集めからか……。

Wolfplayer〔駐輪場2階 〕:あっちはタイムアップを狙ってくるな。

❀R0cketeeR✿〔駐輪場2階 〕:突撃あるのみっ!

 俺らの勝利条件は、ゴールリングに突っ込む7点の他ない。流れはあるが、不利な状況は変わずだ。

めでぃまる〔駐輪場2階 〕:物語的においしいシチュエーションで、最終ラウンドを迎えました。

❀R0cketeeR✿〔駐輪場2階 〕:アイテム取るから!

Wolfplayer〔駐輪場2階 〕:メグ、クワッドダメージ取れ。教官室にあるぞ。火のついた猫のように暴れろ。

RoadMaster123〔駐輪場2階 〕:わかったニャン♪

❀R0cketeeR✿〔駐輪場2階 〕:ケッグオ――。

Wolfplayer〔駐輪場2階 〕:それ俺の!

❀R0cketeeR✿〔駐輪場2階 〕:なんなのぉ⁉︎

Wolfplayer〔駐輪場2階 〕:お前はスーパーウェポンを取れ。ゴミ倉庫の上にあるぞ。

 カレンは、驚きと喜びを足した顔になった。そして集団から離脱し、近くの柵から飛び降りた。

Wolfplayer〔駐輪場2階 〕:ただし、喜び勇んで下手()つなよ。TK(チームキル)で負けましたとかシャレにならん。

 巡行ミサイルランチャーの爆破範囲と威力は凄まじく、誰彼関係なくフラグしてしまう。バカレンが考えなしに撃つと、はた迷惑だ。

 体育館に着くとメグは教官室に向かい、俺と鹿島は、演台で止まった。

Wolfplayer〔体育館 〕:……。

めでぃまる〔体育館 〕:これ、本当に飲むの?

 彼女は呆れた。“ケッグオーヘルスは俺の”とは、この不味いジュースを大量に飲むということだ。業務用サイズだな。一斗缶よりひと回りも大きい樽だ。地面の反重力装置のおかげで、ふわふわと浮いている。

めでぃまる〔体育館 〕:触れたら取得、ってわけにはいかない?

Wolfplayer〔体育館 〕:ヘルスパックとは違うらしい。クソ、カレンに譲ればよかったな。

めでぃまる〔体育館 〕:時間押してるけど?

 意を決して栓を開けた。

めでぃまる〔体育館 〕:わっ! 大丈夫?

 だめだマズすぎ。甘すぎはともかく、炭酸が強いので、一気飲みできない。手の甲で口を拭うしかめっ面を見て、鹿島は樽に顔を近づけた。

めでぃまる〔体育館 〕:香料も強いね……無理しなくてもよくない?

Wolfplayer〔体育館 〕:いや、負けらんねぇから。

 と、また樽を傾けた。

めでぃまる〔体育館 〕:さすが主人公! と言いたいけど、本当に無茶はやめようね?

 主人公云々じゃなくて、負けて怒り狂うカレンが嫌なのだ……。そう突っ込む暇もなく、ひたすらジュースを流し込む。

Wolfplayer〔体育館 〕:あ゙ー! ダメだダメだ。も〜飲めん!

 ヘルスは150になっていた。

Wolfplayer〔体育館 〕:っておい鹿島っ! なに口付けているんだよ!

めでぃまる〔体育館 〕:うぇ。

 鹿島さん、癒し系ヒロインにあるまじき顔してるじゃないっすか……。甘すぎる菓子を食べたようなウンザリ顔。舌先と唇は真っ青になっていた。着色料も相当なんだな。

めでぃまる〔体育館 〕:残念、おいしくなかった()す……。

RoadMaster123〔体育館 〕:シン! Time’s runnin’ out! Move out!

Wolfplayer〔体育館 〕:了解! 行くぞ。

 メグが教官室から飛び出してきた。そのミニガンは、怪しく紫色のまだら模様になっている。あの効果は50秒。


You have the ball take it to enemy goal!


 ボールをとっても相手は出てこない。やはりゴールを固めている。武道館へ突き進む最中、カレンから通信が入った。

❀R0cketeeR✿〔ゴミ倉庫 〕:でっかいお急ぎ便を配送したぁ!

 分厚い空気の壁を裂く轟音がして、頭上すれすれを飛翔体が通過した。彼女が操作する巡航ミサイルは、武道館に誘われるように入っていく。

めでぃまる〔武道館南 〕:うわぁ……。

 室内で爆破するなら問題ない。ゲーム的ご都合で、調度品は一切傷つかないからな。しかし、中にいる人は確実にフラグだ。空気と地面が恐ろしく振動し、鼓膜が破けるほどの爆音と衝撃波が一帯に響いた。遅れて、凄まじい炎が武道館の入り口から出てくる。鹿島は、外に被害が及ぶのではと危惧したが、杞憂だ。道端のパンジーは綺麗に咲いているし、小鳥は楽しげに囀っている。

❀R0cketeeR✿〔ゴミ倉庫 〕:ちょっとぉ!

 ちっ、誰もフラグできなかったか。


めでぃまる was penetrated by Q.E.D.’s beam.


 武道館屋上から熱線が走り、横にいた鹿島が、華やかに散った! 奴に読まれていたか! 悪態をついたメグがミニガンをぶっ放す! 小早川氏はクワッドダメージを見越して撤退した。

 

RoadMaster123〔武道館南 〕:キャレン! Sitrep! Need back up!

❀R0cketeeR✿〔体育館西 〕:今行く!

RoadMaster123〔武道館南 〕:We’re goin’!

 メグは俺を置き去りにして突っ込んだ。クワッドダメージが切れる前に、大暴れするのだろう。中に入ると、モブ3人がゴール周りを固めていた。俺らを認識するや、各種武器を見舞ってきた。恐れを知らぬメグは、張り巡らされる弾幕を裂くが如く突き進む!

RoadMaster123〔弓道場 〕:I’M A CAT ON FIRE! COME ON YOU NASTY PILLOCKS!

 罵声を吐きながら、23ミリ弾を解き放った。相手の銃口は3つだが、こちらは1つ。ただクワッドダメージ付きなので攻撃力としては引けを取らない。モブ男子の1人が花を散らしながらフラグダンス。側から見ても痛そう……。

RoadMaster123〔弓道場 〕:ONE meow! TWO more meow!

 ロケランに持ち替えた(クワッドの効果は継続)メグは、1発でモブキャラを仕留めた。

RoadMaster123〔弓道場 〕:BOOM!

 最後の奴も吹き飛んだ。

RoadMaster123〔弓道場 〕:KABOOOOM!

 ここが、彼女の運の尽きだった。一番厄介な相手を忘れていたからな。耳をつんさぐ破裂音と同時に、高出力エネルギーがメグを貫通した!


RoadMaster123 rode Q.E.D.’s lightning.


 絶叫をあげると、そのままつんのめる形で倒れた。小早川氏はモブを囮にしたのか。

RoadMaster123〔弓道場 〕:シン……I’m out. Good luck.

Wolfplayer〔弓道場 〕:ぐあっ!

 続けて俺も一撃食らう! しかし、ケッグオーヘルスのおかげで、なんとか生き残っている。ゴール前に小早川氏が回り込んできた。相変わらずの能面だが、『絶対に入れさせるか』という意思を放っている。

 ボルターの電極は再びジリジリと放電し始める。彼女がスコープを覗く。俺に1粒の陽子を貼り付けた瞬間、光の速さで高圧電流が襲いかかってくるぞ! 俺には攻撃手段はない。そして、投げ入れの得点では足りないし、時間も足りない。

Wolfplayer〔弓道場 〕:もう負けか……。

❀R0cketeeR✿〔弓道場 〕:シンイチィ!

 カレンが、全身をゴムまりのように伸縮させて駆け込んできた。小早川氏は、ハッとして奴に照準を合わせようとする。

 やらせてたまるかっ! 俺は小早川氏にボールをパス! 強制的にボールキャリアにさせ、ボルターを引っ込ませた。急に武器が切り替わったので、ボールと俺を見交わした。その目はまん丸としていた。初めて彼女の感情を見た気がする。

Wolfplayer〔弓道場 〕:射て!

 

Q.E.D. rode ❀R0cketeeR✿’s rocket into oblivion.


 カレンは、3連ロケット弾でフラグを奪った。世界一周とはいかなかったが、小早川氏はぶっ飛んで壁に激突した。ボールはフラグされた場所に転がっている。

❀R0cketeeR✿〔弓道場 〕:あと7秒!

 転びそうになるもボールを拾い、死に物狂いでリングに向かう。50メートル走でもこんな本気出したことはない。さっきのボルターの一撃が、筋肉に活力を与えていたのかもしれない。足は地につかないほど振り上げて、もう肺と心臓が破けてもいいと思った。


Wolfplayer scored the goal! 【Red:17 - 14:Blue】

Red team is the winner!

今回も読んでくれてありがとうございました。次の話に行く前に、ちょっと注を加えたいなと考えています。

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