【e5m41】聞き分けが良い
短いですが書けました。
「;:(˃̵͈᷄⌓˂̵͈᷅):; もうお仕事行きたくないよー」
出勤前そして帰宅後に、必ず常田先輩はこう嘆く。今日はマジで凹んでいた。以前パソコン入力した金額の桁にミスがあって、会社と取引先を混乱させたらしい。相当絞られたのか、目元を薄ら潤わせながら帰ってきた。
「( •̥ˍ•̥ ) 上司と研しゅうの人に、いっぱいおこられた」
「それはそれは……」
そりゃミスした先輩が悪い。けど俺に言わせれば、そんな仕事をさせる会社の方が悪い。先輩贔屓? それでも構わんよ。
「てか、そんな事も任されているんですか?」
「(´•̥ ̫•̥`) 毎日色んな所回っているから」
「けどお金を扱うってあんまりじゃないです?」
「(´д⊂) お友だちに聞いたけど、ふつうみたい」
なるほど。やっぱりそこは相当シビアだな。銀行や郵便局でも、帳尻が合うまで原因追及するらしいし。
「あの、先輩いつまで働くんです? 職場体験って普通は数日でしょう? もう1週間近くやってません?」
「( •̆·̭•̆) わかんない」
「は?」
「( •̆·̭•̆) 聞いてないの。申しこみ用紙の体けん期間は、空らんで出しなさいって言われたから」
あの忌々しい進路指導主事が浮かんだ。あの野郎、何か企んでいるのか? けど先輩の勤め先は、他ならぬ父親の支社。主事の企みなんで通じないだろうし。
「ε-(´д`o) はぁ〜」
テーブルに肘をついて、悩ましげにため息一つ。黒いセミロングヘアとスーツ相待って、色っぽいと言えなくもないが、本人は深刻だ。今までテーブルの縁に鎮座していた巨乳も、ブラウスから控えめにふくらみを見せるのみ。
「(ᴗ ̫ᴗ) ナイトデートだけが、生きるきぼうだよ。それまでには終わってるといいけど」
そう、俺と先輩の重大イベントと思しきデートが迫っている。チケット有効期限には幅があるので、流石に行けないことはないだろう。
「(´•֊•`) じゃあ、宿題があるからお部屋もどるね、がんばらなきゃ」
イスから立ち上がると、スタスタと自室に戻ろうとする。戸口のところで思い出したように振り返り――
「(´•֊•`) あ、もうまいを気にせず夕ごはん食べて。ゲームもしていいよ?」
「え?」
「(´•֊•`) だって、まいに合わせてガマンするのはヘンだよ。おーみやくんだって、学校の後はおなか空いているし、遊びたいでしょ?」
無意識に立ち上がり、先輩を抱きしめた。2つのクッションは小型化したとはいえ、豊満な身体は適度に柔らかい。先輩の顔に指先を流す。先輩の素肌って、きめ細やかで瑞々しく、絹のような滑らかさだ。既にメイクを落としていたが、俺は先輩のスッピンが好きなんだよ。
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「( ˘ ³˘) ん……」
「そんな悲しいこと言わないでください。この前決めたじゃないですか。俺は先輩の家族でしょ? 先輩がしんどい時は俺も一緒です」
「(´•֊•`)و ありがとう。けど、やっぱ悪いから。たまにはさくらちゃんと遊んであげて。じゃおやすみ」
薄悲しげな微笑だけ残して、暗い廊下に行ってしまった。何ですか、その聞き分けの良さは……。複雑微妙な違和感がマーブリングのように渦巻いた。そして今更ながら気づいた。先輩の甘い残香が、ろくでもない香水になっていたことに……。
今回も読んでくれてありがとうございました。