表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大宮伸一は桜カレンにフラグされた。  作者: 海堂ユンイッヒ
138/212

【e5m41】聞き分けが良い

短いですが書けました。

「;:(˃̵͈᷄⌓˂̵͈᷅):; もうお仕事行きたくないよー」

 出勤前そして帰宅後に、必ず常田先輩はこう嘆く。今日はマジで凹んでいた。以前パソコン入力した金額の桁にミスがあって、会社と取引先を混乱させたらしい。相当絞られたのか、目元を薄ら潤わせながら帰ってきた。

「( •̥ˍ•̥ ) 上司と研しゅうの人に、いっぱいおこられた」

「それはそれは……」

 そりゃミスした先輩が悪い。けど俺に言わせれば、そんな仕事をさせる会社の方が悪い。先輩贔屓(びいき)? それでも構わんよ。

「てか、そんな事も任されているんですか?」

「(´•̥ ̫•̥`) 毎日色んな所回っているから」

「けどお金を扱うってあんまりじゃないです?」

「(´д⊂) お友だちに聞いたけど、ふつうみたい」

 なるほど。やっぱりそこは相当シビアだな。銀行や郵便局でも、帳尻が合うまで原因追及するらしいし。

「あの、先輩いつまで働くんです? 職場体験って普通は数日でしょう? もう1週間近くやってません?」

「( •̆·̭•̆) わかんない」

「は?」

「( •̆·̭•̆) 聞いてないの。申しこみ用紙の体けん期間は、空らんで出しなさいって言われたから」

 あの忌々しい進路指導主事が浮かんだ。あの野郎、何か企んでいるのか? けど先輩の勤め先は、他ならぬ父親の支社。主事の企みなんで通じないだろうし。

「ε-(´д`o) はぁ〜」

 テーブルに肘をついて、悩ましげにため息一つ。黒いセミロングヘアとスーツ相待って、色っぽいと言えなくもないが、本人は深刻だ。今までテーブルの縁に鎮座していた巨乳も、ブラウスから控えめにふくらみを見せるのみ。

「(ᴗ ̫ᴗ) ナイトデートだけが、生きるきぼうだよ。それまでには終わってるといいけど」

 そう、俺と先輩の重大イベントと思しきデートが迫っている。チケット有効期限には幅があるので、流石に行けないことはないだろう。

「(´•֊•`) じゃあ、宿題があるからお部屋もどるね、がんばらなきゃ」

 イスから立ち上がると、スタスタと自室に戻ろうとする。戸口のところで思い出したように振り返り―― 

「(´•֊•`) あ、もうまいを気にせず夕ごはん食べて。ゲームもしていいよ?」

「え?」

「(´•֊•`) だって、まいに合わせてガマンするのはヘンだよ。おーみやくんだって、学校の後はおなか空いているし、遊びたいでしょ?」

 無意識に立ち上がり、先輩を抱きしめた。2つのクッションは小型化したとはいえ、豊満な身体は適度に柔らかい。先輩の顔に指先を流す。先輩の素肌って、きめ細やかで瑞々しく、絹のような滑らかさだ。既にメイクを落としていたが、俺は先輩のスッピンが好きなんだよ。


Press F to interact


「( ˘ ³˘) ん……」

「そんな悲しいこと言わないでください。この前決めたじゃないですか。俺は先輩の家族でしょ? 先輩がしんどい時は俺も一緒です」

「(´•֊•`)و ありがとう。けど、やっぱ悪いから。たまにはさくらちゃんと遊んであげて。じゃおやすみ」

 薄悲しげな微笑だけ残して、暗い廊下に行ってしまった。何ですか、その聞き分けの良さは……。複雑微妙な違和感がマーブリングのように渦巻いた。そして今更ながら気づいた。先輩の甘い残香が、ろくでもない香水になっていたことに……。

今回も読んでくれてありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ