【e5m39】黒染め
とりあえず仕上げました。
今日も夜8時を過ぎた。寂寞としたリビングで、俺は常田先輩の帰宅を待っている。従姉妹は、先輩を抱きしめて愛していると囁けと言った。1人になってよく考えると、果たして上手くいくのか甚だ怪しい。
壁時計の秒針、冷蔵庫のモーター、電灯のハム音などが耳に入ってくる。それらの定位も良好。これだと玄関ドアの音もすぐにわかるだろう。出迎え損ねて、顰蹙を買うこともなかろう。
「けど、無視を決め込まれたらお手上げだぞ。話のきっかけすらできないんだから」
それは杞憂だった。
「えっ……その髪……」
「(◞ᾥ◟) うん……」
クタクタで帰宅した先輩の髪色は、ピンクから黒になっていた。昨日、リクルートスーツとの対比がすごいと思ったが、やっぱ会社の人にも違和感あったか……。
「研しゅうの人が、目立ってしょうがないから、黒にしなさいって」
「はぁ? 染めてるならともかく、ピンクは元々地毛ですよね? 生まれ持った物を変えるなんて、理不尽じゃないですか?」
「(◞ᾥ◟) そう思うけど、しょうがないよ」
そう倒れ込むようにイスに座って、テーブルに頭を置く。
「(◞ ̫◟) はぁ〜つかれたよ〜」
ここでガバッと頭をもたげ――
「Σ( ºΔº ) って! まいたち、夫ふゲンカ中だった――おーみやくん、今のはなしっ!」
「もう手遅れっす」
「:;(˃̵͈᷄⌓˂̵͈᷅);: 今のなし〜!」
「手遅でーす」
「(`ε´๑) 知らな〜い」
風船のように頬を膨らませ、プイと顔を背ける。あーよかった、昨日みたいにマジで怒っているわけではない。こんな先輩は愛くるしいよな。
「あの――」
「(`ε´๑) 知らないも〜ん」
あーあ、俺の言葉を遮ってきたぞ。らちがあかなくなってきた。もう状況悪化になる前に、辻さんの助言を実行するしかねぇな。俺は先輩の隣に座って抱きついた。
「Σ(´⊙ω⊙`)」
「ごめん先輩。まじでごめんです。昨日しんどかったのに、俺って奴は他人事みたいに……先輩、愛してますっ!」
「(๑¯Δ¯๑) ……のんたんの入れ知えかな?」
「うはっwww」
「(๑¯Δ¯๑) だって不自ぜんだよ。急に“愛してる”だなんて、はずかしがりやのおーみやくんらしくもない」
ゆるふわとはいえ、流石コマンダークラス。俺や辻さんの策とすぐに見破っていた。仲直りは失敗。どうなる? アクションゲームだと、交渉失敗はドンパチ開始だぞ? 先輩からビンタの1つでも貰うか? ハグを解き、ガックリと意気消沈し頭をうな垂れた。ふと目をあげると、先輩はほのかに笑った。
「(´•֊•`) まいもごめんね。よく考えたら、おなか空かせて待つ必要なかったのに、おーみやくん先1人で食べたって聞いて、ついムッとなっちゃって。それに、まい1人にして、おーみやくんゲームにもどったのが、とっても悲しくて」
先輩はその生い立ちから、”食事は必ず2人揃ってから”という希望があった。俺も似た人生だが、取り立て形式にこだわりはなく、孤食でも全く構わない。けど俺が構わないならといって、先輩もそうだろうと考えたのが不味かった。
「あのですね、これからこうしましょう。先輩が一報しない限り、俺は待ちます。こう決めておけばすれ違うことはないはず」
「(´•֊•`) うん」
「じゃあ、これで仲直りですね」
ここで今一度先輩を抱きしめ、その瑞々しい唇にインタラクト。
「( ´艸`) えへへ。チューしちゃった」
「じゃ、今からのり弁DXを買いに行きましょうか? 先輩の好きな、ホイップたっぷりのプリンもデザートにしましょう」
「٩(*´꒳`*)۶ うんっ!」
ここで、ふとある事を思い出した。この機会に試さない手はないと仕組んで、先輩を手招きする。
「(੭ ᐕ)੭ ???」
手短に耳打ちした後、俺らは十分距離をとって座り直す。
「あっ❤︎ おーみやくんダメだよ❤︎ おべんとう買いに行かなきゃ❤︎」
「いーじゃないっすか。この際なんだし、このままポンポンやっちゃいましょう。辻さんもさ、俺らの仲を認めてたんでオッケーでしょ。このままエンディングに直k――」
Shinichi was fragged by Nozomi’s ONIKIRI.
「あんまりでございまする〜!(号泣)」
「(¯꒳¯) なるほど。とう聞きあるんだ……」
ちょっと色々立て込んでいて、書くのはもちろん、構想を練る時間すらないです。次回も時間をもらいます。