【e5m37】亀裂
小ネタは詰めましたが、おバカなイベントではないので、なかなか書くのに苦労します。
「……⁉︎」
夕飯後のゲームに夢中になっていると、ふとヘッドセットの外から物音がした。
「悪りぃ、ちと落ちるわ」
『ハァ? なんで?』
「先輩が帰ってる」
『だから何? 別にいーじゃん』
「いや、よくないんだわ。後で戻る」
『あ、ちょっ――』
通話品質はいかがでしたか?
詳しく教えてください。
(¯⌓¯) (•_•)⁺(⁰ᗜ⁰)✧
□ 今後表示しない。
ヘッドセットを外し、画面右下を見ると、既に20時を示していた。
早足で階段を駆け下り、リビングに行くと、リクルートスーツのままの常田先輩は、テーブルにぐったりしていた。いつも俺と目が合うと、愛嬌たっぷりの顔を見せるのだが――
「(◞ᾥ◟) ハァ―――つかれたよ〜」
「お疲れさまっす」
これである。社会人の洗礼を受けたって感じだ。しっかしピンクの髪と黒のスーツの対比がすごいな。
「(◞ᾥ◟) 会社がいようのこうぎから始まって、とうろんえん習、あとはたっっっくさん研しゅうだったよ〜」
「え……そんな本格的? てっきり、職業“体験”程度かと」
「(◞ᾥ◟) まいもそう思ってたんだけど、田中さんとし部長さんと一しょに、あちこち回って顔合わせしたの。『社長の娘さんだから、しっかり頼む』って」
「なんすかそれ……?」
「:;(˃̵͈᷄⌓˂̵͈᷅);: 研修たん当の人もきびしいし、宿題も出たよ〜」
顔を上げ、ひどく嘆く。社長令嬢だから、楽させてくれると見込んでいたのが甘かった。予想外の展開だな。俺にはかける言葉もない。
「(•̆·̭•̆) おなかすいたよー」
「え……食べてないんです? こんな時間だし、てっきり外食してきたかと」
「(-᷅_-᷄๑) そうならメールしてるよ」
あまりの疲労にふてくされ始めた。今の今まで同棲は順風満帆、スムーズに進んでいたが、こんな状況は初めてだった。
「す、すいません。今から弁当でも買ってきます。何がいいです?」
「(๑¯Δ¯๑) のり弁とげん米茶」
「わかりました」
相変わらず庶民の味が大好きなんだな。いつもはおままごと感覚で、奇妙で下手くそな料理を作ってしまうけど、今日からはそんなおふざけもできなさそう。当分は、俺が何か買っておく必要がありそうだ。
先輩のサイドミッションを完了して帰って来ると、彼女はいまだに着替えもせずテーブルにぐったりしていた。
「ただいま」
「(๑¯Δ¯๑) おかえりー」
「ご要望通りのアイテムです」
「(๑¯Δ¯๑) ん〜」
「……じゃ俺、戻りますね」
そう、後で戻ると言いながら、ずっとカレンを放置しているからな。きっと奴はお冠だ。『アンタが抜けたから負けたじゃん』とか、言いがかりつけられそう。
「(・᷅-・᷄)」
「ファ〜そろそろ落ちるか――あ……」
今は先輩に占拠されている、父さんの部屋のドアから、光が微かに漏れていた。まだ起きているのか? いつもなら、とっくに寝てる時間なのにな。
「う〜全ぜんわかんないよ〜。なんなの上ざって〜。だれがどこにすわってもいいじゃない」
そっと近づくと、こんな声も漏れてきた。ピンクパジャマの後ろ姿で、ピンクのセミロングヘアを掻き毟っており、その苦痛の顔は容易に想像できる。
「そろそろ寝たらどうです?」
「(・᷅-・᷄) ⁉︎ おーみやくんもゲームがんばってるね。まいもがんばるよ」
「あの……その言い方はなんです? 仕事の不満を、俺にぶつけられても……」
「(๑`^`๑) 八つ当たりじゃないよ」
「じゃあなんなんです……」
「(・᷅-・᷄)」
先輩は物言わず、弁当を渡して去った間際に見せた、あの不満げな目で俺を射すくめるだけ。
「(`ェ´) わかんないなら、いいよべつに」
「それが困るんです」
「(-᷅_-᷄๑) 知らない。おやすみなさい」
「はいはい、わかりました。先輩も無理せずに!」
わざとドアを強く閉める。なんだよ、わけわかんねー。仕事を協力して欲しいのか? そんなの無理だろ……。辛いのはわかるが、俺に当たるのはお門違いだろうに。
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モヤモヤを残しつつ、ベッドに潜ったのだが、どうしても先輩が気になって寝付けなかった。何度も寝返りを打ち、トイレに行ったついで、ステルスで再度先輩の部屋をピークすると――
「(っ*˘﹏˘) ZZZzzz……」
先輩は主人公ではなく、眠気によってテイクダウンされていた。あーあー風邪ひいちゃうぞ? インタラクトキー長押しし、彼女を抱える。そして自分のベッドに運んで寝かす。俺もその隣に寝そべる。いろんな表情を見せる先輩は、可愛いの一言以外ありえないのだが、この寝顔は天使だよな。俺以外で、この寝姿を見る人っているのかな?
「(っ*˘^˘) ムニャムニャ……おーみやくんいぢわる〜」
と文句の寝言を放ちつつも、いつものように手足ガッシリと俺をグラップリングする先輩。抱き枕扱いだよな。はぁ〜致命的ではないけど、この人と少なからず不和が走った。明日からどう言葉かければいいのか、わからなくなったぞ。
次回は既に書き始めています。辻のんが登場するミッションでは、ネタ帳見ながら書くので時間がかかります。今回も読んでくれてありがとうございます。