【e5m36】働きたくない
短いですが、出せました。
ある日の休み時間。進路指導室から絞られて、イライラしているサブヒロインが帰ってきた。
「くっそ、マジムカつくわ〜」
「志望欄にプロゲーマーとか書くからだろ」
「マジなのにアタシ……」
「俺もゲーマーだから悪く言わん。けど先生はどうかな?」
「せめてeスポーツ専門学校って書くべきだっ――あ、そう言えばピンクもいたんだけど?」
「えっ?」
「主事と担任と……あと家の人(?)もいた。よーわからんけど、深刻そーだった。てか、あのアホは卒業後どうするん? まじアンタの嫁なん?」
まさか先輩、本当に進路調査書に“おーみやくんのおよめさん”とか書いたんじゃ……? けど本当だとすれば、旦那も呼び出されるだろうし。
『まいは、進学も就職もしないよ?』
以前そう言っていた。まあ、彼女の家は裕福だから、働かなくても暮らしていけるだろうし、むしろ俺の家に入った方が、いろいろ大変な気がする。
「後で聞いてみよう……」
「( •᷄ὤ•᷅)℥ まい、はたらくことになったの」
放課後の帰宅途中、こう切り出した。
「え? 職場体験に行くんですか?」
「えっと、まいのお家に行った時、運転手さんおぼえてる? 田中さんって言うんだけど、まいのそつ業後を心配してくれて、話を持ってきてくれたんだ」
話をよく聞くと、あの人は父親の旧友であり、且つその会社の総務でもあって、先輩の様子を時々見てくれるそうだ。そんな人が、先輩を総務課秘書として働かせようと、朱入れた推薦状を持って来校したというわけだ。これがカレンの言ってた進路指導室での出来事だ。
「(-᷅_-᷄๑) まいはけっこうですって言ってたのに……ありがためいわくだよ」
田中さんの心配もわかる。小学生みたいな言動だけど、先輩は立派なお嬢様なんだ。本人の意思とは言え、勢いとノリで結婚させたくなかろうし、いつか嫁がせるにしたって、社会経験無しじゃな。
「てことは、しばらく公欠ですね?」
「(-᷅_-᷄๑) うん。おとーさまのし社で。期間は決まってないけど、短くはないと思う」
「……」
「ε-(˃̵͈᷄⌓˂̵͈᷅) は〜ヤだな。まわりにおされてウンって言っちゃったけど、すごくイヤ」
「じゃ今から心変わりしたって言えば……」
先輩が首を横に振れば、流石に強制できないだろう。やる気がないなら、働く側も雇う側もお互い不利益しか被らない。けど先輩の話には続きがあって――
「(´•ω•) 実はね、あれからも、ママから面会きぼうされてるの。けどまいはもう十分だから。お仕事すれば、いい口実になるかなって」
なるほどね、しつこい提案から避けるためか。
「( •̆·̭•̆)℥ おーみやくんとラブラブタイムもへっちゃうな」
それは願ったり叶ったり。最近ず〜〜〜っと先輩とべったりで、1人の時間が少なすぎた。いわんやゲームの時間をや。カレンから『最近オンラインじゃない』と苦情申し立てられる程だ。
「けどいつか終わるから、ちょっとの辛抱ですよ。それに、いい社会勉強になるんじゃないですか?」
「(´•ω•) うん、わかってる」
俺個人としても、先輩の職場体験は賛成だ。上記の個人的な理由はともかく、先輩のやりたい放題――綺麗に言えば度し難い天衣無縫が落ち着いて、一般的な社会常識を学んでくれればと思っている。
「(• ̀∀•́ ) けど、おーみやくんのお家から出きんするからね」
「あ、やっぱり?」
「(*´꒳`*) 帰ってきたら、いっぱいだきしめてね❤︎ チューもして❤︎」
「はいはい。それくらいなら」
ちょっと前までは、考えもつかない破廉恥な行為も、先輩との交流で日常となってしまったな。この職場体験で先輩が成長してくれればいいなと、後ろから暖かく見守るつもりだ。
次はまだ手付かずなので、しばらく時間を要するかもしれません。ご了承をば。