表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大宮伸一は桜カレンにフラグされた。  作者: 海堂ユンイッヒ
130/212

【e5m33】ミーガン&のぞみ

仕事がきついので、帰っても中々書く気になれません。

 さて、無事に当局の追跡もまいて、天下の国道を飛ばしに飛ばしまくる私たち。ゴールはキャナルタワー前で、まい先輩より先に到着するのが私たちの勝利条件です。う〜どうしても説明的になっちゃうな。私には、このイベントのダイナミックな展開を、豊かに伝えられそうにないのが残念です……。

「なん難しか顔しとーと?」

「語り部だよ――てか運転中は前を向こうね?」

「宮どのの目代は、難儀よの」

「そー? 単に話せばよかろーもん。そげん難しく考えんでよか〜」

「だから、前を向いてね?」

 その時メグちゃんの表情は固まり、その視線は私の更に後ろに向けられていました。バックミラーには、黒塗りの高級車が写っています。それが私たちを追い越すと――

「WATCH OUT!」

 2人がシート下に隠れた途端、フロントガラスが粉々に! あの車から乱射されました!

「ARRRGH!」

「こはいかにッ⁉︎」

「No! My car is trashed!」

 色恋沙汰で公共の秩序を乱しても、当局まで手を出さなかったのは、私たちeスポーツ同好会の良心と言えるでしょう。しかし相手が明確な敵である場合、もう遠慮は無用というわけです。

 のぞみちゃんが、即座に応射。サイレンサー付ステンガンの餌食となった高級車は、爆破炎上してスピン、そのまま後方にフェードアウトしていきました。レースイベントの後は、アクションイベントですか……。今回も一山ありそうですね。

「なんぞあは⁉︎」

先輩(しぇんぱい)ん社用車やん!」

「残念、たくさん来てる……」

 このハッチバックよりパワーがあるので、黒のセダンは次々と追い抜いていきます。そして、ウィンドやサンルーフから人が身を乗り出して、攻撃を仕掛けてきます。

 しかし彼女らとて凄腕ヒロイン。投げられた手榴弾や火炎瓶は撃ち落とし、ロケット弾は急ハンドルで回避します。のぞみちゃんが人を狙い撃つと、かわいそうに路肩まで転がり落ちていきます。横付けする敵車には、メグちゃんが吸着地雷を投げつけ、派手な火の玉にしてしまいます。

「しからしかぁ!」

木末(こぬれ)はお手隙(てすき)でございますなぁ⁉︎」

「良心的拒否します」

「D'oh!」

 ごめんね。私のエイムは相当残念だから、戦力にならないよ。それに語り部役がありますからね。2人は次々と敵車を蹴散らしているものの、やはり多勢に無勢。

「カーッ、こんままやとレースどころじゃなか! 先輩(しぇんぱい)に負けっばい!」

方違(かたたが)えなんどして――」

10-4(テンフォー)!」

 サイドブレーキでクイックターン ! 対向してくる黒車を左右ギリギリ避けながら、適当な小道へタイトに捻じ込んで行きます。それでも敵はしつこく追っかけて来てますね。しばらくすると、バリケードを突き破って、そのままアーケード街に乱入しました。

 イベントの真っ最中だったのでしょうか。キャーという絶叫があちこちに響き、親子連れやら店員さんやらピンクの着ぐるみやらが逃げ惑います。残響するエンジン音を轟かせる私たちは、ゴミ箱や屋台をなぎ倒しながら、猛進していきます。

「残念……もうニュースになりそう」

「“もうニュースになりそう”は、ウチんミドルネームたい♪ うまかー!」

 屋台から飛来したアイスクリームを、ペロペロなめながら片手運転するメグちゃん。両手が必要になった時、のぞみちゃんに押し付けます。のぞみちゃんも、戦いながらそれをかじりつきます。

「ウチんとやけんね?」

「ほ。そちとて代わりを立てておらぬであろ?」

 と一気にパクリ。アイスクリーム頭痛で顔が歪みます。

「しからしか〜!」

 とドライブバイでダブルバレルショットガンをぶっ放すメグちゃん。かわいそうな車は、操舵を失い、横に流れてお店に突っ込みました。もうね、運転、銃撃戦、メグちゃんたちの行動、その会話が同時に展開して、私には手に負えません……。

 アーケード街を突っ切って、大通りに出ると、左右からバイカーがたくさん飛び出してきます。その手には、マシンピストル。残念、ヒロイン2人によって秒でフラグされていきます。出落ち……。

「HOO!」

 口を突き出して喜ぶのも一転、物理演算で跳ねまくっているバイクが目一杯に大きくなって――

「わ〜避けて避けてっ!」


⚠️ DAMAGE ⚠️


 ボンネットにバイクがのしかかると、大きな衝撃と共に大ダメージをもらいました。前の2人は鼻血と涙を流しているじゃないですか!  あ、ここでやっとメディックの役割ですね。

「はいはい、ちゃんと避けようね?」

「ドクんおってよかった〜」

 と、ヘルスパックを受けとる2人。しかしですね、敵の猛追はますます激しくなるばかりです。このままでは先輩に先を越されそうで、メグちゃんものぞみちゃんも、焦りの色が隠せません。

「策でも構え給も。微妙(いみじ)く面倒よ此はッ!」

「急に言われたって思いつかん。レディットに【急募】大量の敵車に襲われながら、マッスルカーとのレースに勝つ方法ば投稿せんねっ」

「ほ」

「方角もでたらめだね。キャナルタワーに向かってないよ」

 また踏切に差し掛かりました。ただし、閉じてません。メグちゃんは大胆にも侵入して、列車よろしくレール上を駆け進むと、怪獣やペンギンのローポリ軌道工さんらが、蜘蛛の子を散らすように逃げていきます。

「こっでよか! 確かキャナルタワー前駅に続いとるやろ」

 流石に敵車は、レール内までは追っかけてきません。一安心、と言いたいところですが――

「残念、今度は列車に追いかけられてる」

 ピンク色の貨物列車が猛スピードで襲ってきます。これは――私たちに追突するつもりですね。

「こはいかにッ⁉︎ もっと飛ばせ!」

「“もっと飛ばせ”も、ウチんミドルネームたい!」

 左右に避けようにも、線路が土手を走っているので不可能です。更に悪いことに、河川に渡る長い橋に至りました。こっちもフルスロットルですが、バックミラーに映る牽引車が徐々に大きくなっていきます。アレにぶつけられたら、車ごと水没して全員フラグですね。のぞみちゃんは後ろを向いて、凍りついた顔色です。

 対岸に到達した時、後ろからドンッと小突かれました。メグちゃんはグリップを失った車体を立て直しながらが、なんとか対向線路に逃れました。そのまま貨物列車は私たちを追い抜きます。安心するのも束の間、プァーンと警笛がっ!

「前、前ぇ!」

「GOSH!」

 前方の彼方から、別の列車が猛スピードで迫っています。身体が前につんのめるほどの急ブレーキ! 先の線路に戻ろうにも、ポップな色のタンク車やらコンテナ車やらが延々と邪魔しているのです。

「HOLD ON!」

 咄嗟につり革にすがると、車は転倒覚悟で土手の下に強制着地!

「一難去ってまた一難よ!」

「It’s FUN! 映画んごた〜!」

 ものは言いようですね。私には、ネタを全部消化しているとしか考えられません。

「The police, enemy cars, trains, aaaand what’s next?」

 その台詞に呼応したのでしょうか? 上空からローター音が……。報道機関のヘリじゃなさそうですね。ピンク色のラインが入ってるから、先輩の会社のなんでしょう。そして、道路に戻れば、黒車も迫ってきます。

 地面すれすれまで降下したヘリから、ダイナマイトが投下され始めました。メグちゃんは左右に蛇行して、華麗に避けます。後ろで爆発の巻き添えになった黒車が、かわいそう……。

 更に、ヘリから人が身を乗り出して、ロケット弾を撃ってきました。フラフラと安定しない弾道なので、予測できません。

 真横に着弾っ! 爆風で車体が持ち上がりますが、なんとかひっくり返らずに済みました。

「いでいで。小賢しき奴哉」

 メグちゃんからグレネードランチャーを受け取ったのぞみちゃんは、ヘリとすれ違った直後に発射。爆発でテールをもぎ取ってしまいました。残念なヘリは、コマのように回転し、後はお察しの通り。

「HOOO! MAYDAY MAYDAY, we are goin’ down!」

「まこと『へりこぷた』は『墜つる』の枕詞よの」

 敵のヘリが墜落するシーンでは、なぜ笑顔が溢れるのでしょうか? ご覧ください、のぞみちゃんまで、目を大きく開いて、微笑んでいます。メグちゃんに至っては、頭を振り乱して喜んでいます。

 そのまま車はトンネル中に入って行きます。昔のレースゲームなんかでは、背景が変わるんですよね。

「トンネルやん、ちょうどよか。セクションの間やけん1回ここで切らせてもらうけん!」

「残念、メグちゃんに台詞を取られてしまいました……」

「此度もつまらぬ物語ご覧いただき、誠にありがたく存じまする。あなかしこ」

「あの、私の役割がなくなるからやめてね?」

次回で乗り物ミッションは終わりになりますが、まだほとんど手付かずなので時間を下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ