【e1m13】カウンターストライク
すいません、古典の問題集を終わらせるためにこっちをおろそかにしていました。もう全て終わったので、創作の方に時間を割くことができるでしょう。
❀R0cketeeR✿〔体育館 〕:気持ち切り替えていこ! 7点はギフトよギフト!
RoadMaster123〔体育倉庫 〕:ROG
「New round in 5, 4, 3, 2, 1……」
めでぃまる〔駐輪場2階 〕:あれ? ここどこ?
Wolfplayer〔体育館南 〕:ゴールが決まると、全員に強制リスポーンが入る。
❀R0cketeeR✿〔体育館 〕:センターに集合!
くそ、自陣後方に出たか。運が悪い。カレンの言う通り、センター付近で集まって、俺がボールを取り、全員で攻めた方がいいだろう。後ろの鹿島を待たずに前進する。
前方にヘルスバイアルを発見した。試験管に入ったヘルス(小)で、数本まとまって置いてある。ダッシュしながら全部かき集め、うち1本を口に流し込む。回復量は少ないが、最大ヘルス値を上げるので重宝するのだ。
Wolfplayer〔体育館西 〕:……。
あまりの不味さに、立ち止まってしまった。ちょっとこれ甘すぎる。ブルーハワイシロップの着色で、しかも炭酸が強すぎ……。1本でヘルスが5増えたが、もう飲みたくねぇ。
しかし先にも言ったが、スポーツ系は武器・アイテムを揃えて突っ込むのが定石だ。唐揚げパンウォーフェア同様、俺は攻撃するつもりはない。だから、スーパーウェポンである巡行ミサイルランチャーを、ゴミ倉庫の上に見つけても無用なのだ。その代わり、ヘルスとシールドは可能な限り上げておきたい。無理に飲み干したかいあって、ヘルスは125まで増えた、ゲップ……。
しばらく走って、ボールスポーンポイントに到着。他には誰もいない。さてどうすべきか。フラグされない限り、先のラウンドから武器は引き継げるので、カレンたちが、“落ち武拾い”をしているなら、相手が早く到着するぞ。
顔の横を凄まじい熱線と暴風が通過! 青チームが団子になって武道館から出て来た!
Wolfplayer〔センター 〕:インカミーン!
このままボールを取って突っ込んでも、蜂の巣にされるだけだろう。しかし、譲ってしまうと、先の二の舞になること請け合いだ。だからボールを取るものの、撤退することにした。
You have the ball take it to enemy goal!
❀R0cketeeR✿〔体育館 〕:っしゃ! いけいけ!
Wolfplayer〔センター 〕:るわけねーだろ! 援護ォ!
RoadMaster123〔体育倉庫 〕:Hold on!
めでぃまる〔駐輪場2階 〕:どこから降りるの?
鹿島さん、あのなぁ……って、人の心配をしている暇はねぇ。目下ビームライフルやロケランに狙われているのだ!
誰の言葉か忘れたが、“素人はやたらめったら撃ち、ベテランは適度に撃つ”と、よく言ったものだ。モブキャラは単発のライフルを、それこそひっきりなしに撃ちまくっている。しかも、2人ほぼ同じタイミングで。それがわかってしまえば、それに合わせて左右に回避すればいい。
通常FPSは、相手の攻撃を避けながら、自分の攻撃を当てるスキルがいる。だがボールキャリアなら、意識の全てを回避に注ぐことができる。時折ロケット弾も飛んでくるが、弾速は遅いので、近距離発射じゃなければ目視回避可能だ。相手に無駄弾を強いて、攻撃力を削いでいる。ただ、あの小早川氏は沈黙を守っていた。
というか、俺は回避行動の真っ最中なのだが、よくこんな説明的な語りができるな。ドッジングも併用しているので、普通なら三半規管が狂って、ぶっ倒れてもおかしくない。スポーツ系イベントだけあって、スタミナの概念もない。
ギュンと何かが風を切った。3発のロケット弾が螺旋状にダンスをしながらすっ飛んで行く。モブ男子に直撃! そいつは、もんどりを打って地面に叩きつけられた。
❀R0cketeeR✿〔センター 〕:ブンダバー!
自動あざけりを発するのを忘れない。連中はボールキャリアを優先的に狙っているから、カレン達には格好の的だ。別のモブ男子も、メグが射落とした!
RoadMaster123〔センター 〕:Burn baby!
最後のモブにも、カレンのロケット弾が襲いかかろうとしていた。それに気づいて回避行動をとったが、ロケット弾もその軌道を大きく修正してヒット!
❀R0cketeeR✿〔センター 〕:ささみぃぃぃ!
残るは小早川氏だけだった。今彼女には“やたらめったら”ロケットが飛んで行き、彼女のいた場所にビームが当たっている。彼女は2人の攻撃を、華麗に避け続けている。相手ながらやるな! 2つ以上の異なる武器から狙われると、回避が難しいのだ。
❀R0cketeeR✿〔センター 〕:フハハハ! 踊れ踊れー!
高笑いしながら、翻弄していると信じ込むカレン。踊らされているのお前だぞバカ……。
RoadMaster123〔センター 〕:何ばポヤーンとしとっとシン⁉︎ サミーに見とれとらんで、はよ行かんねっ!
そうでした。我に返ったように武道館に向かって駆け出す。
❀R0cketeeR✿〔センター 〕:あ゙〜! 弾っ!
その隙を小早川氏は逃さなかった。彼女はスコープを覗き、ライトニングボルターから稲妻を発射! パァンと大電流が空気中に放たれた。
❀R0cketeeR✿ rode Q.E.D.’s lightning.
視野の外にいたのでその様子はわからんが、カレンはフラグされた! 小早川氏ナイスでーす!
めでぃまる〔駐輪場2階 〕:階段見っけ。
RoadMaster123〔センター 〕:Men down! DOC! どこおっと? こっこっこ!
後ろでメグが叫びながらついて来る。周りには稲妻が次々と落ちてきた。ジグザグの動きでなんとか避けているが、時折足元に落ちては、眩い光とちょっとした感電が襲ってくる。
メグの応射でなんとか小早川氏のエイムを撹乱しているが、彼女がやられたら俺もフラグ確定だ。背を向けているからな。
RoadMaster123〔武道館南 〕:せからしか。なんであげん動けっかね! いっちょん当たらん!
Wolfplayer〔武道館南 〕:カレンなんばしよっと⁉︎
RoadMaster123〔武道館南 〕:ばりウケる、シンの言葉ん変わっとるやん!
❀R0cketeeR✿〔体育倉庫 〕:ざざみ゙い゙!!!
濁った声で雄叫びをあげるアサルト。これはもう小早川氏を倒すことしか頭にないだろ。
武道館の目の前に来た。正面から突っ込むと、モブ男子が近距離戦に優位な武器で待ち構えて、後ろの小早川氏と挟み撃ちにされてしまう。
Wolfplayer〔武道館正面入り口 〕:ちょいと仕掛けてやるか。
RoadMaster123〔武道館正面入り口 〕:?
Wolfplayer〔武道館正面入り口 〕:ショットガンは?
RoadMaster123〔武道館正面入り口 〕:Huh? あるよ?
入り口には行かず、側面から裏に行き、追従する小早川氏から見えない角に身を潜めた。そして、そのまま壁沿いにメグを引き寄せた。氏は、きっと裏口から突入していると勘違いして、ここを通り過ぎるだろう。
Wolfplayer〔武道館裏 〕:奴が飛び出てきたら、スラグ弾をギフトしてやれ。外すなよ?
RoadMaster123〔武道館裏 〕:ROG
意を汲んだメグは、カレンを彷彿させるような笑みを浮かべた。メカメカしいショットガンを取り出して、フォアエンドを縦に持ち上下に振る。角からチラ見すると、小早川氏はダブルジャンプを多用しながら突っ込んできている。
Wolfplayer〔武道館裏 〕:ステンバーイ……さんのーがー。
RoadMaster123〔武道館裏 〕:はいっ!
目の前に飛び出してきた小早川氏は、スキール音こそ鳴らすことはなかったが、急停止して振り向いた。『貴方たち、なんでそこにいるの?』という顔だ。
RoadMaster123〔武道館裏 〕:See ya
Q.E.D. was blown by RoadMaster123’s slag.
清々しいほどのクリーンヒット! 小早川氏は花弁を散らして倒れた……。
RoadMaster123〔武道館裏 〕:Yee-haw! うれしかー! ハイファイブ!
仰々しいジェスチャーと共に喜びを爆発させるメグ。そしてハイタッチを求めてきたので、それに応じた。ノリは向こうの人なのな。よし、今がチャンスだ。一番厄介な小早川氏がリスポーンして来る前に、ラッシュをかけてやる。
Wolfplayer〔武道館裏 〕:ゴールに駆け込むから、モブと遊んでくれ!
RoadMaster123〔武道館裏 〕:God it Red Leader
室内弓道場に2人して踊りこんだ。ゴールは矢を撃つ土手の前に鎮座している。俺を認識したモブ男子は、ショットガンやミニガンを撃ってきた! これはまずい!
Wolfplayer〔弓道場 〕:I'm hit!
3人分の弾が解き放たれ、俺に向かって一直線に飛んでくる。ヘルスは、スリップダメージかと思うぐらい減っている。ボールによる回復も追いつかない。メグがビームライフルで1人射抜く! と、ほぼ同時に後方で爆発! 彼女が足元を燃やしながら、俺の前に飛び出してきた。別のモブがメグにターゲット変更し、ロケランで吹き飛ばしたのだ。
RoadMaster123〔弓道場 〕:シンはよ――ああぁぁぁ!
RoadMaster123 rode Mobman’s rocket into oblivion.
さらなる一撃を食らった。悲痛な叫びと花吹雪散る中、メグは吹き飛んでしまった……残るは俺だけ! ヘルスは風前の灯火である。ジグザグにジャンプしているが、際どく弾薬が行き交う。とてもじゃないけど、ゴールまで突っ込めない! かくなる上はボールを――……!
Q.E.D. nailed her grenade to Wolfplayer.
❀R0cketeeR✿〔センター 〕:やられてんじゃん、あのバカ!
「Red team scores!」
Wolfplayer scored the goal! 【Red:3 - 7:Blue】
今回も読んでいただきありがとうございました。