【e5m31】カーチェイスH.Q.
前日に引き続き投稿です。
大宮くんの中の読者さん、こんにちは。すっかり影が薄くなったメディック、鹿島梢です。今、メグちゃんとのぞみちゃんとで、ドライブに来ています。
「そしてこれは、エピソード3で大宮くんが修理したハッチバックです」
「なに独言しておられるか?」
助手席ののぞみちゃんが訝しげな顔になります。前の人の表情は、バックミラーでわかるのです。
「えっ⁉︎ な、なんでもないよ……」
「しかし恤どのは、いづくにある? 常田どのに1つ泡吹かせると案じて、ひたすら片待ちよ……」
頬杖ついて、色っぽくため息をつきます。退屈しているのは、路肩に止めて延々とまい先輩の車を待っているからです。メグちゃんは、足を伸ばしに外に出ていきました。
「最近シリアスに偏っていたから、バランス調整として、お馬鹿イベントがあるみたい。必ずまい先輩は現れるから、もうちょっとの我慢だよ」
その時、メグちゃんが車内に駆け戻ってきました。
「ナンシーより緊急連絡♪ 指名手配中のシン誘拐犯が、ピンクの2シーターで走行中。緊急逮捕へ。どうぞ♪」
「ほ。あは常田どのにあンなり」
行き交う車の音の中に、際立つエンジン音が聞こえてきました。メグちゃんは、すぐにハンドルをレーシング用に差し替えます。その時、まい先輩の淡いピンクの車が、追い越しました。それを射すくめる眼差しで追うのぞみちゃん。
「いざいざ」
私たちも緩やかに発進。しばらく付かず離れずの距離で追跡します。先の信号が赤になりました。まい先輩の車が停止線に止まったので、メグちゃんはここぞとばかり、隣の車線に停車させました。ギリギリに幅寄せしたせいか――
「OPPSY♪」
「残念、あっちのサイドミラーもげた……」
メグちゃんとまい先輩は、お互い窓を下ろして顔を合わせました。
「Heya」
「(๑’ᵕ’๑) あ、めぐたんだ〜」
「車ん調子はどげん?」
「(*ˊᗜˋ*)σ サイドミラーい外大じょうぶだよ」
「そー? あんさ、ウチからえらい数の車ば買ってくれたとやろ? ありがとねー」
「(*ˊᗜˋ*) どういたしましてー」
「ちょっと聞きたかばってんくさ、書類ん中に念書んあったろ? あれどういうこつ?」
「(๑′ᴗ‵๑) どうもこうも、書面通りだよー」
「へー。“上記の条件で一括購入する代わり、今後ミーガン・R・メイヤーは大宮伸一と私的接触を禁ず”とか、えらいKAWAIKAこつ書いてくれたやん。ウチ認めんとばってん?」
「(•∀•́ ) けいやくはもうせい立だよ? 文くはおとー様に言わないとね」
「調子に乗りすぎとらん? 今すぐシンば引き渡さんね」
「(´艸`) うふふ、めぐたんは面白いね」
「ほーん。痛か目に遭うのがよか? もっと面白くなるばい♪」
一見いつもの楽しげな雰囲気です。けどメグちゃんの頭上から――
FRAG YOU
FRAG YOU
FRAG YOU
FRAG YOU
と赤文字で何度も改行しています。
まい先輩が交差信号をちらと見ると、今まさに黄色に変わりました。その視線を追ったメグちゃんは、すぐに意図を悟ります。
「(•̀.̫•́) キャナルタワーまで」
「Rog’! シン、今助けてやっけん!」
2人が窓を閉め切った時が、グリーンフラッグでした。ギャギャギャとスキール音を奏でた後、ロケットスタートで前に出たのは私たち。
「うわわわわわっ!」
「HAHAHA、ローンチコントロールする暇んなかったごた。2っとも、シートベルトしとるやろね?」
「早よ言うてたもっ!」
次もある程度は進んでいますが、納得がいかないので少々時間を頂きます。