【e5m28】マジ天使
先週は落としました。申し訳ないです。
他愛のない話の後、俺らは先輩の部屋にいた。彼女の根城とあって、甘香が強く漂っている。もう四六時中一緒にいるので、俺の鼻は馴染んだと思ったんだが。
「(・᷄ὢ・᷅) あれれー? どこいったかな〜?」
大きなクローゼットに突っ込んで、アルバムを探す先輩。これから写真を見ながら愛を紡ぐってヤツですか? もうエピソード分岐点間近だな。
「それにしても……」
この部屋……調度品から小物に至るまで、全て暖色系で占められている。さすがにピンク尽とまではいかないが、俺にはこそばゆいよ。以前、ファンシーショップに連れて行かれて、俺があまりにも恥ずかしいから、先輩にぴったり寄り添っていると、それに味を占めた彼女は、何度も行こうと持ちかけられた。それと同じ気分である。
「?」
ふと、壁掛けの絵を見つけた。マーカーで稚拙に描かれているそれは、先輩が描いたものだった。さっきのリビングにはクリスマスの装飾が施され、テーブルには数々の料理とキャンドルが並んでいた。大きなクリスマスツリーの下に、羨むほどのたくさんのプレゼントが置いてある。
「けど泣いてる……」
明らかに嬉し泣きではない。その理由? 他に誰もいなかったからだ。でもなんでこんな悲しい絵を掲げているのか……?
「(*´°`*) あ、あったあった。フ〜(埃を払う)」
やましい事をしているわけではないが、過去の悲しい一幕を探っていたのを悟られないよう、視線を戻す。
「(๑′ᴗ‵๑) この時おみこしにはさまって、なきながらかついだの」
写真の1枚1枚をしっかり覚えており、饒舌に語ってくる先輩。きっと、誰かに話したくてたまらなかったのだろう。先日行った、児童養護施設での写真が多かった。あの相談員さんも写っていた。きっと長年お世話になっているのだろう。
「スッゲー可愛いですね。マジ天使」
「❥❥(((*≧∇≦)))❥❥」
思ったことをうっかり口にした途端、先輩は文字にできない喜びを上げた。しまった……こういうのは、つけ上がるだけなんで、自重しなきゃ。けどマジで天使だぞ。それ以外の言葉が思いつかん。
「けど、ヤンチャだったんですね。これクレヨン食べてるでしょ?」
「;:(˃̵͈᷄⌓˂̵͈᷅):; リリリリップだよ」
誰が大口開けて塗るってんだ。他には、泥を被って笑っているのもある。お、この恰幅の良い人が今のお父さんか。
「(´•ω•) この時はまだ、おとー様の会社は小さくて」
なるほど、大きく成長したわけだ。さっきのマーカー画が頭をよぎった。
「(人´∀`) ねぇねぇ。おーみやくんのアルバム見たい」
「あーうちは写真撮ることなかったから」
「(´•ω•`) そーなんだ」
「けど辻さん家にはあるかな? 俺、小さい時お世話になっていたから」
「(*⁰▿⁰*) 見たい! 今度おねがいするっ!」
「あいつが素直に差し出すか、甚だ怪しいですけど」
閑静な地域、且つ大きな家のせいか、周りからの騒音はほとんど聞こえなかった。先輩が言うには、この家に彼女1人で住んでいる。先ほどの運転手さんを始め、家政婦やら庭師などの業者が時折入るらしい。
しかし今、微かではあるが、楽しげな歓声が耳に入ってきた。静寂の中、返って違和感を覚えずにはいられず、思わず尋ねた。
「ねえ先輩、子どもの声しません?」
「Σ( °o°) あ、いけない!」
彼女は急に立ち上がった。
「(人´∀`) おーみやくんも手つだって」
労働環境が変わっており、日付が変わる時間に疲労困憊で帰ってきているので、休日ぐらいしか書けません。このサイクルに慣れるしかないので、ご了承ください。