【e5m27】Pearl Castle
とりあえず新しいイベントの導入部だけ。
車が向かう先は、県内の高級住宅地。緩やかな坂を登って、やがて立派な門前に停車した。
左右には背丈を越す岩壁が伸び、その奥に樹木が植え付けられている。更にその奥には、邸宅の屋根が、かろうじて見えた。
「すっげ、電動開きか」
「ここで降ります」
エアコンの効いた車から降りると、ムッと暑さが襲ってくる。カリブ地域を思わせる太陽が、濃い青空と入道雲の中で煌々と照っている。セスナ機の音も、どこからともなく聞こえてくる。今頃、同好会室はサウナだろうな。最近は誰も使ってない。
先輩と白レンガの歩道を歩いて行く。左右には樹木とガーデンライトが整然と並び、芝生は刈り込まれ青々としている。岩壁には壁掛けプランターが立てかけて、そこには色とりどりの花が咲いていた。歩道のそばに、トレーラーに積まれた船がシートを被っている。
「クルーザーあるんだ……」
「(´•ω•`) 乗る人いないけどね」
先行していった車は、4台分のガレージに止めてあった。そのシャッターが開いており――
「あれ? 全部アメ車なの?」
「(• ̀∀•́ ) うん。メグちゃん家から買ったの。おとー様の会社の車が、そう入れかえって聞いたから、しょうかいしたんだ。じょうけんつきで、20台ぐらい買ったの。いくつかは、まいのお家にあるんだよ?」
先輩の会社は、一瞬で筆頭顧客になったわけだ。メイヤー家はもう先輩に足を向けて寝れんな。ダッドは涙流して喜んでいるだろう。
「しっかし、こんな高そうなアメ車を、社用車にってありえねぇ……」
レンガの歩道を左に折れて、ちょっとした階段を上がっていくと、隠れていた邸宅が顕になった。今見えている限りでも、俺の家3軒分のデカさだ。建材も安っぽいものじゃない。ベージュ色の石英岩が、照りつける太陽に反射して、一層シックに映える。
先輩がキーレスで開錠すると、今まで見たことがない広々とした玄関だった。彼女から、スリッパを用意される。
「(๑˃̵ᴗ˂̵) どうぞ」
「お、おじゃましまっす」
「(๑’ᵕ’๑)σ リビングそっちだよ。おやつ持ってくるから」
ここで先輩と別れ、彼女は奥に歩いて行った。言われた通り、リビングに入ると……これまた驚かないわけがない。
2階まで吹き抜けの天井には天窓とシーリングファン。南には巨大なアーチ窓が3つ並んで、太陽の光を部屋いっぱいに取り入れている。その窓際には、20人は座れるであろうソファーとテーブルが並んであった。
対面には業務用テレビと、背丈ほどのスピーカー(アヴェマリアが流れている)。床は美しい寄木張りが走っている。
「あれスタイングェイかよ、マジすげぇな」
先輩、ピアノ弾けたっけ? そんな話聞いたことがない。奥の壁には、立派な額縁に入った油絵がいくつか飾ってある。
「この裸婦絵は、等身大――いや横のドアよりデカイぞ……遠近感おかしくなりそう」
「(๑’ᵕ’๑) お待たせ」
トレーに菓子と飲み物を載せた先輩がやってきた。俺が絵の前にいると知った彼女は、ポッとほおを朱に染めて――
「(⸝⸝•௰•⸝⸝) えへへ。恥ずかしいな」
はにかんだ。なんで? このお尻が丸見えの、うら若き後姿の裸婦に恥ずかしがる必要があるの?
「(⸝⸝•௰•⸝⸝) それ、まいなの」
「エッッッ⁉︎」
先輩と裸婦画を交互に見る。憂いを秘めた目見でこちらを振り向き、腰からお尻にかけて、なだらかで豊艶な曲線の美しさを晒していたのは、間違いなく先輩だった。背後からだと、あのデカイ乳房はほとんど見えないが、逆に鑑賞者の想像を膨らませる。
「す、すいません……」
「(๑′ᴗ‵๑) え? いいの。かざってあるから」
「とにかくすいません」
「(∩ˊᵕˋ∩) おーみやくんには、いっぱい見てほしいな。あ、そうだ。これ、おーみやくん家にかざろうよ?」
「いりません」
「(๑′ᴗ‵๑) お部屋にかざれば、いつでもエッチなまいを、いっぱい見れるよ?」
「いりません」
「(ー̀֊ー́)✧ スーパーコンセントレーションモードに、使ってもいいんだよ?」
「いりません」
「(⸝⸝•௰•⸝⸝) それとも、本物のおしりがいい?」
「先輩、人の話聞いてます?」
「(*ˊᗜˋ*) じゃあ後で、美じゅつせん門の運送業者に、お電話するね?」
「聞いてて無視してるでしょ?」
今回も読んでくださってありがとうございました。