【e5m20】唐揚げシミュレーター(2)
分量は少ないですが、どうぞ。
第3選手は、スナイパーの小早川ささみだ。メグがコスプレで点を稼いだのなら、自分もと言わんばかりに赤のスーツと白衣に変身。うむ、天才女性遺伝子工学者シン・クレア博士を想起させて良きかな。つか、おっぱい意外とでかい(高得点)。
どういうわけか、彼女はキッチンへは向かわず、テーブルの上に実験器具を用意した。なるほど、調理を実験に見立てるのか。大きなビーカーに食用油を滾らせ、調味料は天秤やスポイドなどで正確に測っていく。
「U4とか入ってねーだろうな?」
「そんなものは使わない」
ジト目で言われた。なんでだろう、俺、馬鹿にされているけどうれしいぞ? その後も黙々と作業が続いて、完成した。いくつかのペトリ皿に、1個ずつ唐揚げが乗っている無機質さだ。つか、舌や顎が溶けたりしないよな? ミュータントになったりしないよな?
「……なぜそんな顔を? 何度も言うけど、きちんと食べられるし、少量で健康被害は発生しない」
「い、いただきます」
1つめのペトリ皿から唐揚げを食べると、しっかりした塩味がしてとても美味しかった。だが、美味しいのはその1個だけだった。
「うっ……」
思わず苦い面になったのを許してほしい。2個目は先と同じ塩味もするが、金属っぽい苦味がしたからだ。
「最初に食べたのは、塩化ナトリウム。今のは塩化カリウム。安心して、減塩食用だから問題ない」
なるほど、調味料で勝負に来ましたか。となると、次も躊躇するが、食べてやらないと申し訳ない。
「それは塩化セシウム。より塩味が薄く、金属の味が強い。それは塩化リチウム。舌が焼ける感じで、油っぽい金属の味が残る」
「俺は一体何を食ってるのかな?」
他のヒロインは哀れみの目つきで俺を見ていた。うん、どう考えても罰ゲームです。
「どう?」
冷静な顔付きの中に、わずかに期待している声色が滲ませた。彼女には申し訳ねーが……。
「5点」
「なぜ……?」
「単純に不味い。点のほとんどはパフォーマンスで稼いだとでも思ってくれ……」
「スピード!!! ファイアー!!!」
気合いを入れているつもりか、天を仰いで、時を上げてやがる。さあて、4番手はデンジャラスアサルト類人猿サブヒロインとなり申した。いよいよ俺の命もここまでか……。
「なんで火災保険の証書と銀行通帳と土地の権利書持ってんのよ……?」
そら、家が爆破するかもしれないからな。キッチンからホラーゲームの怪物ブッチャーよろしく、凄まじい音で肉をぶった切っている彼女を見て、どんなモンが呈されるかな、と予想立てた。
エピソード2でお察しの通り、一応彼女は調理できる。ただ、大雑把で2度と同じ味を出せないし、繊細な味付けもできない。要するに原始的である。
「ウギャー! 油がー!」
こんなトラブルで喚き散らすのも想定内。ただ作ってもヒロイン面白ポイントは稼げないので、何かしら仕掛けてくるのは間違いない。スコビル値が死ぬほど高い香辛料を、大量にねじ込んでくるとか?
「ブンダバー!!!」
やけに早かったな、もう出てきたわ……。うげぇ、皿がベトベトになってんじゃん。コイツ、さっき揚げ物はやらんと抜かしていたが、まさに失敗作という感じ。
鹿島をチラ見する。彼女も、俺が言わんとすることを理解して、真剣な顔でコクリとした。手には蘇生用注射器。
「いただきます……うげ、全然ジューシーじゃない、これ火が通ってないと言うか、スッゲー生臭い……。お前揚げるの早すぎだろ。てか、ちゃんと油の温度確認したのか? 衣もベチャベチャしてるし、油切ってねーだろ?」
「ずいぶんとまあ厳しい評価じゃん⁉︎ 褒める点はないのかっ!」
「辛味の下味は良い。これは意外」
「他に?」
「ない」
ふと目をこぼせば、他のヒロインが、殊に辻のぞみが、はらわたが千切れるほど笑っていた。
「こやつが夷心、えならずおわしますな」
「で? キャレンは何点なん?」
「まあ――」
「あーまだ得点言うなバカァ! こーすりゃいんでしょ⁉︎」
俺を遮って、カレンがホース付きのノズルを取り出し、唐揚げに向けたのまでは覚えている。
Shinichi was cooked by Karen's flamethrower.
!実績解除!召ませフルコース
:解除条件:あらゆるフラグタイプを経験した。
次はまいとのぞみの分です。多分明日には出せます。