【e5m18】後が怖い実行完了
とりあえず書けました。
キッチンでケトルが沸くのを待っている。
「しっかし、序盤から愁嘆場とは、考えもしなかった……」
テーブルの上には、ココアパウダー入りのマグカップが、2つ仲良く寄り添っていた。先輩がお揃いで買ってくれたのだ。彼女って、一見何ら不自由のない生活をしているようで、結構辛い思いをしてきたのだろう。似たような境遇なので、そこはかとなくわかる気がする。
ちらりとリビングを見る。先輩はひとまず落ち着きを取り戻したようだった。けど、あんまり軽率な発言はしないほうがいいよな。
「はぁ……こんなシリアスは苦手だね。早くいつものコメディ調に戻って――」
パァンと玄関の方から破裂音。すぐに火薬特有の臭いが襲ってきた。
「えっ⁉︎」
!実績解除!オールイン
:解除条件:全てのヒロインを家に呼んだ。
うわぁ……実績解除で状況がわかった。
「GO GOOOOOOO!!!」
桜“ロケッティア”カレンの響もす声と同時に、足音がドタドタ鳴り、家中が騒がしくなった。
「Σ(ºΔº〣) キャー!」
「あからめすな人々ッ! 宮どのも絡め捉え申せッ!」
「さあて、どう調理してやろうか?」
サランラップで簀巻にされた先輩の前に、舌舐めずりする悪党面のカレン。こりゃ、放課後の空爆で相当な御冠だな。
「:;(˃̵͈᷄⌓˂̵͈᷅);: ひどいよ〜! まいが何したっていうの〜」
「Ready」
こちらも頗る機嫌を損ねているメグが、車のバッテリーに繋いだケーブルを2本カレンに渡した。カレンは、断線したそれらをバチバチと合わせて、先輩に凄む。
「その可愛らしい顔を真っ黒コゲにして、アフロヘアにしてやる。梢ちん、こいつのレントゲン写真が拝めるぜッ!」
「やったね(オートミールおじさんの笑顔)」
うわうわうわ〜鹿島大明神も、目が据わっておられる。
「けど電流はやめて、これにしよう」
「……なるほど、単に苦しませるんじゃなくて、息絶え絶えに笑わせるってわけね。これはキツいわ」
鹿島はカレンのケーブルを取り上げ、鳥の羽を渡す。彼女の中に、一抹の良心が残っていたのに感謝した。
「自分、大宮独占中に、何をやらかしたか知りたい。尋問して」
「そーやん。えらいピンクんモンがあるやんね。もう付き合っとーと? ウチにはノーチャンスなん?」
「違う違う。同棲してるだけで、付き合ってない!」
辻さんに両手を掴まれる俺が猛反発。しかし小早川氏は、考え中の絵文字のような顔をする。
「これが付き合ってないというなら、付き合っているの定義を再考しければならない」
全くもって理屈詰めのヒロインだ。同意するね。付き合ってるから同棲だろうに……。
「‧˚₊*̥₍ ˃́ꇴ˂ ₎‧˚₊*̥ キャハハハハハハ!!! まいたちまだポンポンしてないってアハハハ!!!」
カレンとメグが、鳥の羽であちこちを刺激している。簀巻きにされた先輩が、身を捩り悶えている。
さっきの愁嘆の涙は、コメディの涙ですっかり洗い流された。ああ、こいつらが突撃してくれて助かった。くさくさした場の空気も、一気に吹き飛ばしてくれた。
「さて、宮どのは妾と問答せむ。いで難しきことな聞こえられそ。何をかまゐどのと侍りつるか?」
切れ長の目見を細め、脅すように妖しく咲む俺の従姉妹。
「先輩の言った通りだって。一緒に調理して、水着で風呂入って、添い寝して、登校して、ボードゲームして、テレビ見て、そんな感じだ」
「……あんまりでございまする。妾にはつれなく、思し焦らさせ、内々にあの色香の権化を招き入れて、いと怪しげなる胸乳振り立てるのを賞翫するとは、まことあいなし。わ殿を恋する人は、近比秋の袂、浮き雲の思いで寝ねがてにすとも知らずに……」
その妖艶な顔付きは、あっけなく打ち顰んだ。きっと想像力たくましい彼女の脳内で、俺と先輩のキャッキャウフフが再現されたのだろう。
「勘違いすんなって。なんで先輩を見る目がおっぱいだけなんだよ。今は先輩エピソードなんだから、仲良くなって当然じゃん」
「なんとッ⁉︎ 既に心も交わせておると。あな、憎し……憎し憎しッ! “紅の初花染めの色深く思ひし心われ忘れめや”と歌った妾は、天下の痴れ者にあらずや⁉︎」
俺が先輩のおっぱいという表面上ではなく、心深く交流をしたことに、彼女は雷を打たれたような衝撃が走った。しょぼ降る涙は一瞬で乾き、般若の面が生じてくる。嗚呼、これはもう俺の天命もこれまでだな……。
「もう許さぬッ! 来世は乳に溺れて、乳死ねッ! 天誅ッ!!!」
Shinichi was fragged by Nozomi’s ONIKIRI.
「うぁあ、時代劇のサウンドエフェクトだったぜ。血は一滴も出ねーけど」
「仰々しい倒れ方のアニメーション、笑える」
!実績解除!注目の的
:解除条件:全てのヒロインからフラグされた。
「おめでとう。順調に実績解除しているね……」
「つかオメー、今の今までやったことなかったん?」
「妾は、匙加減をわきまえておりまする。脳無しの某と違うて」
次はちょっとしたイベントになるので、また試験的に1つのイベントを細切りにして毎日投稿したいと考えています。