【e5m8】おーみやくん時限独占(7)
今週も仕上がりました。
「(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ モー! キッチンに来ちゃダメーッ! テーブルで待ってて!」
「俺の家なんスけど……?」
先輩を暖かく見守るつもりだったが、それすら気になるらしい。
「(。ì_í。) いざいざっ!」
辻さんの勇ましい声色を真似して、再度気合いを入れる。けどさ、とても武者声にはならず、ただかわいいだけである。しばしシンとした空気が、キッチンから感じられるが――。
「Σ( ꒪⌓꒪) あっ……おーみやくん、さい近カルシウム足り――」
「殻は取り除いてくださいね?」
「( ˙◊︎˙◞︎)◞︎ バレてる⁉︎ けど、どーしよう? 全身転いのガンみたいにちらばってるよ」
卵割るだけで、なぜこんな気疲れするんだろうな? カチャカチャとボールをかき混ぜる音からして、卵焼きか……。てか、卵焼き“だけ”か⁉︎ 先輩、炊飯とかしてないよな? 絶対に卵焼き以外の献立、今の頭から欠落してるよな?
「⸂⸂⸜(രᴗര๑) うふふ。ここからまいちゃんオリジナル、やっちゃうよ?」
カウンターからひょっこり顔を覗かせ、無邪気にニッコリと微笑みかける先輩。マジで愛らしい。全ての失敗を帳消しできるレベルだ。だが、基本に忠実にしてくれ。
「(◍︎˃̶ᗜ˂̶◍︎) ジャーン! LATOURの1938年ものだよ? ウルフェンシュタインじょうから、サザビーに出品されたの。これでフランベにしちゃう。すっごく、かおり高いたまごやきになるんだよー」
それ卵の何万倍も高そう……。
「(˶‾᷄⁻̫‾᷅˵) うふふ。このかおりで、2人ドキドキな気分になっちゃうかも……」
なりません。さて、問題はそのコルクだ。
「( ;ᯅ; `) ふぇえぇぇ。おーみやくん、手伝ってぇ」
1人奮闘していた先輩はついに根をあげ、ヘルプを求めてきた。2人して力一杯回すが、相当な年代物だけあって、コルクはコンクリートみたいに硬く、錆びついたボルトのように噛み付いてやがる。栓抜きを穿つだけで相当な労力だ。
「( °ㅁ° ) あ、そのタオルを、そこにあつくくまきつけて。そして、かべにドンドンするの」
壁に向けて、ボトルの底を打ち付ける。あんまり家を傷つけないでほしいなぁ。タオルで保護しているとはいえ、明らかに凹んでるよ。しかし――
「お……おっ⁉︎ ちょっと飛び出してきましたよ?」
「Σ(*⁰▿⁰*) ホント⁉︎ あ、すごい! めずらしいな、まいのアイデアが上手くいくなんて!」
調子に乗って、さらに打ち付ける。しかしな、ボトルという砲身が、ちょうど俺の顔を狙っているのに気づかなかった。百年近くエネルギーをチャージしていたコルクはどうなったかというと――
Shinichi was fragged by Mai's LATOUR 1938!
「::(˃̵͈᷄⌓˂̵͈᷅);; キャー! 今のはわざとじゃないから〜」
明日も出せると思います。