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才色兼備、友人の恋に戸惑う。

第3話 「才色兼備、友人の恋に戸惑う。」


三条達との一件が終わり次の日を迎えていた。

時間は12時半。天気は気持ちいいくらいに晴れ渡っていた。

綾音は午前中に洗濯や掃除などの家事を終え、久しぶりにゆっくり休日を過ごすことが出来そうでなにをするか悩んでいた。

「さてと!掃除も洗濯も終わったし何しよっかな〜。」

綾音は部屋を見渡した。

そして、視線は押し入れの扉に止まった。

(あッ!あたしとした事が買い溜めてはあったけど忙しくて全然読めてなかったんだ!!)

綾音は押し入れに向かっていき扉を開けた。

「これこれぇ〜、やっぱ毎日読むぐらいじゃないと体おかしくなるわよね。」

押し入れの中にあったのはぎっしり詰まった少女漫画で、棚がいくつもあり、その一弾一弾に綺麗に巻数を揃えてしまってあった。

昔流行ったものから今現在連載されているものまであり、ジャンルもファンタジー系や学園系、OLが主人公などといったちょっと珍しい大人向けの少女漫画など様々なものがあった。

綾音はニヤケながら心躍るように押し入れのなかにあったものを取り出した。

それは、今絶賛大人気で発行部数をガンガン伸ばしている少女漫画で綾音のハマっている少女漫画の一つであった。

「うおぉぉ、やっと読めるよ!千里せんり君と雪穂ゆきほちゃんのこの後の展開とか気になりすぎてこの3ヶ月死にそうだったぁ〜。」

綾音は本を大切に抱え、大げさに喜んだ。

「では、さっそく!ごかいら〜ん!!」

花のJKが言うようなセリフではないような言葉を発しながら綾音は1ページ、1ページ、噛み締めるように読んでいった。

途中、うおぉぉだのいやぁぁぁだのきやぁぁぁだのいつもの優秀でクールなイメージからは想像出来ないような奇声を発していたが本人は本当に幸せそうに本を読んでいった。

「だめ…。千里せんり!追いかけて!!雪穂は千里のために千里と別れようとしてるの!!千里!!わかってぇぇえ!!」

綾音は読んでいた少女漫画の山場を読んでいて気持ちが高まり思わず大声を出していた。

その時、綾音の部屋をノックする音とその後にお隣さんの綾音と同い年の3年生の高森たかもり 奈緒なおだと思われる声が聞こえてきた。

「綾音ちゃ〜ん、また声漏れてるよ〜。角部屋だからアタシにしか聞こえてないだろうけどこれ以上叫ぶと他の部屋にまで聞こえちゃうよ〜。」

奈緒は別に騒音で怒っているわけではなく、あくまで綾音の声が他の部屋にまで漏れちゃうよと忠告をしにきただけだった。

「あぁ、奈緒!?ごめ〜ん。また盛り上がって取り乱しちゃった。」

「最近、忙しそうだったもんね〜。好きなだけ少女漫画読んで楽しむのはいいけど気をつけてね〜。」

奈緒は綾音のこの以上までの少女漫画好きの趣味を知っていて理解してくれる数少ない人の内の1人で綾音ともかなり仲が良かったりした。

「あぁ、そういえば奈緒と話すことあるんだ…。」

綾音はそう呟くと本をまたスグ読めるように開いたまま置き、急いでドアを開け自分の部屋に戻ろうとしていた奈緒を引き止めた。

「奈緒〜。ちょっと話があるんだけど。」

「ん?珍しいね〜、綾音ちゃんが読んでるマンガ中断してまで追っかけてくるなんて。」

「いやいや、流石のアタシも友達を優先しますよ?」

「うーん。どうだろ…。それでどうしたの?」

「来週さ、新入生っていうか新寮生?の歓迎会をするみたいだから参加か不参加かの名簿取らないといけなくてさ。」

綾音はめんどくさそうにそういった。

「えぇ〜、もう5月だよ?」

今年はもう5月になっており、今年の寮を使う新入生達はもう3月の終わりぐらいにはもう既に引越しを終え部屋に入っていた。

「まぁ、寮長もさ、いろいろ今年は忙しそうだったじゃん?しないとアタシも思ったんだけどまぁ、思い出しちゃったみたいなんだよね〜。」

「そっか〜、歓迎会の名簿集めってやっぱり私と綾音がしないとダメだよね?」

奈緒は3年生になり寮の生徒代表となっていて寮に関するイベントのまとめ役を引き受けたりしていた。

代表といっても女子寮だけの代表だったが、女子寮だけといっても1年生から3年生までをまとめるとなると1人では大変なため、女子寮を利用していて生徒会長でもある綾音も奈緒を手伝う事になっていた。

「今月は綾音ちゃん忙しかったりするの?生徒会とか。」

奈緒は少し不安そうに綾音に訪ねた。

「大丈夫だよ〜、だから奈緒の手伝い出来そうだよ。」

綾音はそんな奈緒を見て微笑みながら不安を取り除くように優しく答えた。

「よかったぁ。出席確認とか取るの結構面倒なんだよね。」

奈緒は肩を下ろし安心したように答えた。

「それじゃあ、アタシは1年生を担当するね?会長として挨拶とかも兼ねたいし。奈緒はもう挨拶とかこなしちゃってるでしょ?」

「そうだね。アタシはもう1年生1人1人と一応挨拶は交わしてるし、それでいいよ〜。」

綾音は生徒会長になったばかりの4月はまだまだ忙しくて新入生の寮に入ってきた子とまだ面識はなかったので挨拶周りをする良い機会だとおもった。

奈緒は3月に入ってきた時点で寮についての諸注意やルールなど寮に関する説明をしに1人1人に回っていたのでその時に挨拶は済ませていた。

「相変わらず仕事早いね〜奈緒は。生徒会入ってよ。」

「え〜やだよ〜。めんどくさい。」

奈緒は笑いながらそう断った。

「それじゃあ、明後日までに確認よろしくね!」

「うん!綾音ちゃんも忙しかったら言ってね!手伝うからさ!」

「ありがとぉ!奈緒!!」

そういって奈緒の愛おしさに綾音は抱きしめた。

その時、寮についているアナウンスが入った。

「えぇ〜。3年生の一守いちもり 綾音あやねさん!お客さんが1階ロビーにてお待ちしているので来てください。」

アナウンスの声は優しい声をした寮長のものだった。

寮長は御年50を迎えた女性で、寮長を務めてもう10年目になっていた。

優しくみんなのお母さんのような存在でいつも女子生徒達を気にかけてくれていた。

「お、寮長だ…。綾音ちゃんにお客さんだって。」

「誰だろ…。たぶん親戚かな。じゃあね、奈緒!」

綾音は奈緒を解放し奈緒に手を振り1階へ向かった。

奈緒は綾音に手を振り返し自分の部屋へと戻っていった。

(誰だろ…わざわざ女子寮まで訪ねてくるなんて、たぶん生徒じゃないよな…。)

綾音は自分に会いに来た相手を考えながら階段を降りていた。

寮にわざわざ迎えにくるのはだいたち親戚など身内の人が多く、学校の生徒なら寮に訪ねなくともケータイなどで連絡を取り合い外であったりするのが大概だった。

そのため、アナウンスでの呼び出しをするのは親御さんか親戚などに限られていた。

(お父さんはついこないだ訪ねてきたし、お母さんはメール毎日してるし電話もたまにしてるから来ないだろうし…。まさか…。)

綾音は最後の階段を降りていきロビーのソファーに腰をかけている人に目を向けた。

「やっぱりか…。」

綾音はガッカリしたようにそう呟いた。

そうする時、綾音の気配を感じたのだろうかその人は綾音の方に振り向いた。

綾音を呼び出した人は男性で高身長でその高さは街中で歩いたら確実に浮いていた。スラッとしていてモデル体型で髪も爽やかな感じで顔も綾音のように美形で本当にモデルをやっていても不思議ではなかった。

「綾音!!久しぶり!!来ちゃったよお兄ちゃん!!」

その男は綾音の兄、一守いちもり 誠一せいいちだった。

綾音を見つけるなり、綾音のようなキリッとした顔を満面の笑みに変え、両手を広げ綾音を抱こうと駆け寄った。

「ちょっと、お兄ちゃん!やめ…。」

そんな綾音の拒絶を無視し、兄である誠一は綾音を抱きしめた。

「会いたかったよ〜!おにいちゃん、会いた過ぎて死にそうだったよ〜!!」

「ちょっと、しつこいって。やめ…やめろぉ!!」

そういって綾音は上手投げで兄である誠一を投げ飛ばした。

綾音は合気道の他にも武術を習っていて、柔道も父親に習わされていた。

父親は「綾音は紗奈恵(綾音の母親でさなえという)似て美人だから絶対にナンパされてしまう!!だから今のうちに武道を習わせておこう!!お父さんも常日頃、綾音を守れるわけではないしかといって綾音を一日中外に出さないわけにもいかないし?いや、本気になれば仕事辞めるよ?外にもださないよ?」とかいっていたが母親に仕事辞めるのと綾音を引きこもりにするのは止められていた、しかし武術は習わされていた。

それには綾音も必要だと思ったしこれから先、役にたつと思ったからだった、まさかその武術を兄に使うハメになるとは思っていなかったが。

「綾音ちゃん…。鍛錬は怠っていないとはなによりだよ…。」

誠一は投げ飛ばされピクピクと痙攣しながらも死にそうな声でそう言った。


「はぁ、それで、お兄ちゃんは何しに来たわけ?」

兄弟の壮絶な再開を終え、誠一も落ち着きを取り戻し、ソファーに腰掛け話をしていた。

「仕事もひと段落ついたし?綾音の顔でも見にこようかなって。寂しいかったし…。綾音も寂しいかなって…。」

「いや、寂しくないし、LINEとかもしてるじゃん。」

「そんなぁ!綾音ちゃん、冷たい!!」

「もう!声大きいって!」

女子寮のロビーで才色兼備で有名な生徒会長である綾音と見慣れない成人男性でイケメンの誠一が話しているのはとても目立ち女子寮生の注目の的になっていた。

「わかった、わかったからぁ。それで会いに来たのはいいけどこれからどうするの?アタシはこれから部屋に戻るわけ…だけ……ど…。」

綾音の言葉を聞きいい歳こいた兄が泣きそうになるのを見て綾音は言葉を詰まらせた。

「もう!そんな顔しないの!!わかったから!私、日用品買いに駅まで行くけどくる!?」

綾音は半分呆れ投げやりになりながらそう言い放った。

綾音のそんな投げやりな言葉にも兄、誠一は泣きそうな顔だったのを一気に晴れさせニコやかに頷くた。

「綾音ぇぇえ!ありがとぉ!!」

(このシスコンぶりは父親譲りだな…。まぁお父さんはシスコンというより親馬鹿?)

妹の誘いに必要以上に喜ぶ兄を見て綾音はめんどくさいと思いながらも少し嬉しく思い微笑みながら兄を見つめた。

そんなこんなで久しぶりにゆっくり出来ると思った綾音の休日は兄の来訪によりいともたやすく崩れ去った。


兄の訪問から綾音は支度を整え女子寮を出て、2人で駅へ来ていた。

街中を歩く2人は目を引き、美男美女のカップルのように見えていた。

誠一も綾音も慣れていたので気にはならず2人で近況を話しながらお店を見てまわっていた。

「お兄ちゃん、仕事終わったってことは締め切り間に合ったの?」

「あぁ、今回もギリギリだった。正直終わったと何度もおもったよ。」

誠一はその時のことを思い出しながら笑いながら綾音にそういった。

誠一の職業は漫画家でいつも締め切り近くなると仕事に終われ、部屋から出てこなかったりしていた。

漫画家といっても少女漫画家でそれも綾音に気に入って貰うため選んでなったようなものだった。元々物書きの才能はあり、小説家として成功していたため物語を書くのは得意分野だった。そのため、絵だけ練習をつんだりアシスタントに助けながらもなんとか完成していた。

もちろん、綾音は兄の作品でもあるしなにより好物の少女漫画なのでもちろん読んでいた。しかし、兄に感想を言ったりすることはしなかった。

「どうせ、小説家の頃からの癖がまた再発しただけでしょ。ギリギリまで伸ばされて紀子のりこさんもホント大変そうだったもん。」

紀子のりこというのは誠一が小説家だったころの担当さんでいつも締め切り近くなると誠一の所へ来ていた。

「あぁ、のりピーね…最近、係長に出世したらしいよ。風の噂だけどね…。」

誠一は紀子の出世を喜びながも少し暗い顔をしていた。

「ふ〜ん。それじゃあ、まずこのデパートから行こうか。」

綾音は暗い顔をした兄を見てこの話を掘り下げることをやめて目的地を指差し、デパートに入ることを提案した。

綾音のさり気ない気遣いを感じ、誠一は優しく微笑み頷いた。


「はぁ、なんで休日なのにお前と生徒会の買い出しいかなくてならないんだ…。」

「ハァァ!?こっちのセリフだよ!なんで休日なのに淳の堅苦しい顔見な見なきゃいけないんだよ。」

川上かわかみ あつし田代たしろ 芽衣めいは生徒会で使う消耗品の買い出しに休日に駅まで来ていた。

買い足しは当番制になっており、今月は芽衣と川上が当番になっていた。

「はぁ…日曜日なのに凄い憂鬱だよ…。なんか面白い事ないかな〜。」

芽衣は川上との買い出しに嫌気をさしながら辺りを見渡した。

「え?あれって会長じゃない?てゆうか…おとこ?」

辺りを見渡していると、生徒会長である一守 綾音の姿を見つけそして、綾音の隣を歩く高身長の男性が目に入った。

「はぁ!?会長が男と!?また、金城か!?」

川上は一つ上の先輩を呼び捨てにしていることなど気づかないくらい驚き芽衣の見ている方向を見た。

「金城じゃないな…。金城はあんなにデカく無かったはず。」

「ねぇねぇ!買い出しも飽きてきたしさ…淳もさぁあ?…気になるでしょ…?」

芽衣はニコニコしながら悪魔の囁きのようにまるで川上の恋心を揺さぶるように川上に言った。

「また、金城が会長にちょっかい出してるかもだしな!!」

「いやいや、金城じゃないってさっき自分で言ってたじゃん…。」

こうして、2人は綾音の尾行をすることに決めた。

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