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才色兼備、元カレを作る

17時。

全ての授業を終え、綾音達の通う学校は放課後を迎えていた。

優人は昼休みの終わり間際、綾音に昇降口で待つように言われ、昇降口で綾音のことを待っていた。

(腹減ったなぁ。付き添いありじゃ途中で買い食いも難しそうだしお店についたらなんかつまませてもらおう。)

優人は昼休みを生徒会で潰してしまったため昼食を取れずにいた。

「あれぇ〜?優人君じゃん!何しての〜?帰んないの?」

「あぁ、優人じゃん。誰か待ち伏せてんの?」

昇降口で壁に寄りかかりながら誰かを待っている優人を珍しそうに同じクラスメートの双葉ふたば 涼子りょうこ目黒めぐろ 直樹なおきが話しかけてきた。

2人は幼なじみで仲が良く、家も近所のため小さい頃からずっと一緒でそのため2人で帰ることもよくあった。

そんな2人を見て周りは付き合っているのではないかと噂された時もあったが2人は慣れているためか全く気にせず、ただ淡々と否定するためその噂はスグに消え去った。

「珍しいな、優人が放課後待ち合わせなんて。いつも忙しそうに早く帰ってるじゃん。」

「あぁ、ちょっとな。直樹と双葉はもう帰んの?」

「帰るよ〜。直樹のアホが塾なんか通い始めるから私も親に入れられちゃってさぁ〜。」

双葉は落ち込みながらそういった。

「涼子も今年受験なんだからいい機会じゃん。俺だけが勉強に苦しむなんて癪だからおばさんにチクッといた。」

「あ!テメェ!!なんてことしてくれてんだ!」

そう言いながら涼子は直樹の脇腹をこずいた。

「相変わらず仲いいなお前ら。」

二人のそんな様子を面白く思いながらそういった。

「腐れ縁ですよ〜。私は切りたいんですけどこれまたなかなか切れてくれないんですよね〜。」

涼子はヤレヤレといった感じでそういった。

「お前か俺が引っ越すかしないと切れねぇだろうな。」

直樹はポツっと呟いた。

「すいません!優人さん!遅れてしまいました。」

3人は会話を止め優人を呼ぶ女性の声が聞こえた方に振り返った。

そこには走ってきたのであろう綾音が息を少しきらせながらいた。

「え!?生徒会長?え?どゆこと?なんで会長が?しかも名前呼び?」

綾音の姿をみてあの生徒会長が優人に話しかけてきたこととさらに優人の名前を呼んだことからあの忙しそうにして女の子なんてまるで相手にしない優人が綾音を待っていたことと両方に驚いた。

直樹も口には出さなかったが驚いていた。

「どうゆうことだ?優人。」

「まぁ、話せば長いからあんま話したくねぇんだけど訳あって一緒に帰ることになった。」

その優人のテキトーな返しを聞いて涼子は思いついた。

「もしかして!!2人は付き合って…」

「違います。」

「ちげーよ。」

涼子の言葉を遮り、優人と綾音は否定した。

「息もピッタリだな。」

「直樹…。お前までからかうなよ。」

優人は勘弁してくれと言わんばかりにそういった。

「えーと、金城かねしろ 優人ゆうとさんと同じクラスの双葉ふたば 涼子りょうこさんと目黒めぐろ 直樹なおきさんですよね?一守いちもり 綾音あやねです。よろしくお願いします。」

綾音はまず面識はあったが話した事がなかった2人に挨拶をし、お辞儀をした。

「どうして会長さんが優人なんかと一緒に帰ろうとしているんですか?」

涼子はあの全校生徒から尊敬と憧れの的となっている一守 綾音が優人なんかと一緒に待ち合わせをして帰ろうとしているのか不思議におもった。

「えっと、前々から駅の風俗街の方へのウチの男子生徒が出入りしているとゆう噂がありまして、その調査に向かうにあたってのボディガードを優人さんが申し出てくれまして。」

「え?そなの?優人が?」

涼子は優人がそんな面倒なことをするようなタイプじゃないのを知っていたので驚いた。

「涼子。優人の事だからどうせいつもの素行の悪さから内申点が芳しくなくて今必死に悪あがきしてるってところだろ。」

「あぁ!なるほど〜!納得。」

「お前ら俺をなんだと思ってんだよ。そこまで教員に目つけられてねぇよ。」

「でも、優人!役得じゃん!内申点も上がってしかも放課後に生徒会の仕事といえどあの生徒会長と2人っきりになれるなんて!やったね!変な気起こすなよ〜、会長さんはファンが多いから刺されるぞぉー。」

涼子はニコニコしながら優人をからかった。

「んな事しねぇよ。つか、そんな事したら姉貴に殺される…。」

「なぜ姉!?」

優人はもし自分が綾音に手を出したら真っ先に我が姉が殺しにかかってくるだろうなと想像した。

「涼子。そろそろ。」

「そだね〜、それじゃあ!お二人さん!頑張ってね!私達も風俗街に出入りしてる男子生徒がいたらスグ知らせるから〜。」

「ありがとうございます!涼子さん直樹さん!」

綾音のお礼を聞き涼子は綾音に手を振りながら直樹と一緒に帰っていった。

「それじゃあ、私達もいきますか。」

「あぁ。」

綾音と優人はそう言葉を交わすと校門へ向かって歩きだした。


2人は学校を出て駅に向かって歩いていた。

「改めてまして、よろしくね!優人さん!」

綾音は微笑みながら優人のほうを向いて挨拶をした。

優人はその姿を見てこの笑顔がたくさんのファンを作ってるんだろうなと考えながら挨拶を返した。

「こちらこそ。まさか初日から会長だとは思なかった。あの副会長がいるし…。」

「あぁ、川上君ね。今日、川上君は塾があるから私が無理やり帰したの。本人は行く気満々だったけどね。」

綾音はその時の川上の必死さを思い出し笑いながら言った。

「愛されてるよな…周りから…。」

優人は少し寂しそうにそう呟いた。

「え?」

「あぁ、なんでも無い。ただ、その、副会長に殺されないためにも俺は手を出さないように気をつけないとって思っただけ。」

優人は笑いかけながらそういった。

「あなたでもそんな顔するんですね。私の前ではいつもなにかを勘ぐるような表情しかしないのでなんか新鮮です。」

「友達とか知り合いの前ではこんな感じだよ。特に健人とかいうアホが近くにいると笑いが耐えん。」

「確かにあの方が近くいると楽しいかもしれませんね。」

優人は微笑みながらそういう綾音を見てここに健人本人がいたらきっとアイツはどうにかなってしまうなと想像していた。

その時、綾音のケータイにメールが入った。

綾音はケータイのバイブレーションに気づきケータイを開いた。

そのメールの差し出し人は綾音の親友である宮越 実咲(みやこし

みさき)からだった。

(綾音。今電話でれる?)

メールの文面にはそう書いてあった。

「優人さん、ごめんなさい。ちょっと電話していいかしら?」

綾音は実咲のメールを見るなり、優人に頼んだ。

「どうぞ。」

優人の返事を聞き綾音は実咲に電話をかけた。

着信音を聞いているとすぐさま実咲に繋がった。

「ごめん。綾音。忙しい中電話なんて。」

実咲はいつもより声のボリュームが低く話していた。

「いやいや、いいよ〜別に。友人の呼びかけに答えられないほど忙しいわけじゃないしね。今日はもうほとんど生徒会の仕事は終わったみたいなものだし。」

綾音はいつものような硬い喋り方ではなく友人と話す時に使う砕けた喋り方をした。

優人はそんな綾音を見たことがなかったため新鮮におもった。

「それで、どうしたの?メールでいきなり電話できない?なんて。」

「それがさ、今週末のあの件、アタシ行けなくなったかもしれない。」

「え?どして?」

綾音は驚きそういった。

「弟のれんがさぁ、インフルエンザになっちゃって今親いなくて看病しないといけなくなっちゃったんだ。ほんとごめん!とゆうか、アタシ行かないとヤバイよね…?」

「うん…だいぶヤバイ…。でも、蓮くんの看病なら仕方ないよ。週末の元彼役の件はこっちでなんとかするから。実咲も気をつけてね?移されないように。」

「マジでごめんね!この埋め合わせはいつかするから!」

「うん。楽しみにしてる!それじゃあ!お大事にね。」

綾音は実咲に罪悪感を感じさせないよう明るく振る舞い電話を切った。

電話が切れたことを確認すると綾音の表情はみるみる暗いものに変わっていった。

その様子をみていた優人は何がおきたのか気になっていた。

(マズイ…。最後の頼みの綱が切れた…。)

「大丈夫?顔色悪いけど。」

優人は綾音を心配しながらそう聞いた。

「大丈夫。問題ない。」

綾音はいつもの礼儀正しい口調ではなくなっていた。

「いや、まぁ、大丈夫ならいいんだけど。」

明らかに先程の電話から様子がおかしくなっているが本人が大丈夫と言っているため優人はそれ以上詮索はしなかった。

「あぁ〜、えっと。会長さんとかって彼氏とかっていたりするの?」

優人はその雰囲気が気まずくテキトーに話題を振って雰囲気を変えようとした。

「は?」

「え?」

優人は綾音の威圧したような返事に驚いた。

自分が良かれと思って話を変えたつもりが何故か綾音を苛立たせる結果に繋がったってしまったのだった。

「えっと、ごめん。聞いちゃマズかったか?」

「あぁ、いやいや、なんでも無いです。ちょっとビックリしただけで。」

優人は地雷を踏まないようこの話はやめ違う話をしようと考えた。

「あぁ!そういや!ウチのクラスの三条さんじょうって女子が今週、会長となんか遊びに行くんだとかすごく楽しみにしてそうに話してたぞ?相変わらず…人……脈…広いよ…な?」

優人は綾音の顔色を伺いながら話した。

しかし、優人の話を聞くにつれてどんどん綾音の表情が暗くなっていった。

「そうですか…楽しみにしちゃってましたか…。」

(これもダメなやつだったか…。ヤバイな、完全に地雷を踏んでる。)

綾音の返答を聞き優人はこの話も切り上げ、話題を変えるのを諦め、これ以上何かを言うのをやめた。

優人にとってその2人きりで何も話さず沈黙でただただ歩くだけなのは居心地が悪かったが幸いにも目的地まであと少しだったためスグにその沈黙から解放された。

「すいません、ありがとうございます。ここまで来ればもう大丈夫そうなんで俺は行きますね。」

優人は逃げるように綾音からお店に入っていこうとした。

「はい…もうおそらく目撃されることもないでしょう。お仕事頑張ってください…。」

綾音も優人に明様に元気のない声で別れの挨拶をした。

その時中から丁度、優人の姉でいるじゅんが出てきた。

「あ!!綾音ちゃん!!来てくれたんだぁ!」

「ゲッ!姉貴。こんな時に…。」

優人は何故か元気の無くなった綾音と明らかに空気を読めてないテンションの高い姉が出くわしたら面倒なことになると思い、早くここから逃げようとした。

「あ、潤さん…。ご無沙汰です。」

「うん!昨日ぶり〜!!ん?綾音ちゃんの元気が…。」

綾音の表情とあきらかに元気の無い声を聞き潤は綾音の異変に気づいた。

その綾音から逃げようとしている優人を見て潤は優人の首根っこを掴み逃がさまいと引っ張った。

「これはどうゆうことかなぁ〜?優人く〜ん?私の大切な綾音の元気がなくてそこから逃げようとする我が愚弟、もしかしてアンタなんかしたんじゃないでしょうね?」

潤は睨みをきかせながら優人にそういった。

「待て!姉貴!誤解だから!俺はなんもしてねぇし、俺もどうして会長が元気無くなったのかわかんねぇんだって。」

「そんなテキトーな事言って!男っていつもそうやって言い訳ばっか、昨日の今日で手を出すなんてありえない!」

そのやり取りをぼぉっとしながら綾音は見ていたが、潤を見ていて何かを閃いたように顔を明るくさせ潤の方へ駆け足で近寄ってきた。

「ちょ、どしたの?綾音ちゃん?」

急に表情が明るくなったのに潤はビビりながらもそう聞いた。

「いける…。潤さんなら…。」

綾音は小声でそう呟いた。

「え?なに?」

潤はまるで状況が掴めずアタフタしていた。

「お願いがあります!潤さん!私の元彼役をしてください!!」

「・・・。え?」

「は?」

潤と優人は綾音のお願いを聞いて変な声をだした。


お店の外での1件からとりあえず、お店の中で話すこととなった。

「はい、麦茶。お店出るまでまだ時間あるから時間は心配しないでいいからね〜。」

「ありがとうございます。」

綾音はすっかり落ち着きを取り戻し普段の冷静で礼儀正しい綾音に戻っていた。

「それじゃあ、さっそくだけど話して貰えるかな?さっきの件…。あ!ごめん!ちょっと待って!」

そう言って潤は近くにいて一緒に話を聞こうとしている優人の方を向いた。

「優人は出ていきなさい。さっきの話からしてたぶんアンタには聞かれたくない話だと思うし。」

「あぁ、悪い。確かにそうだよな終ったら言って。」

そう言って優人は部屋から出ていこうとした。

「待ってください。いいですよ。ここにいても。さっきのやり取り聞かけれてましたしね。変な想像されても困りますし。」

綾音は部屋を出ていこうとする優人を引き止めた。

「会長さんがいいなら残るけど…俺もさっきの話は気になるし。」

「ただ、他言無用でお願いします。」

綾音は2人を真っ直ぐ見つめ真面目な顔をして言った。

そんな綾音を見て2人は頷いた。

綾音は今週末に三条と会うことと、綾音は自分のイメージを守るため彼氏がいたと三条に言ってしまいその元カレを連れてこなければならなくなったこと、そしてその元彼役を友達に頼んだが用事で来れなくなってしまったことを話した。

「なるほどね〜。てゆうか、綾音ちゃんほどの美人が今まで彼氏いなかったことが1番驚きだわ!」

潤は綾音の顔をじっくりと見つめ、首を傾げながらそう言った。

「それで、なんで姉貴なんだ?」

優人は疑問を綾音に投げかけた。

「私が元々お願いしていた実咲という友人もとっても美人なんですけどどちらかというとクール系で男装とかも全然いけちゃう感じの子でして、潤もお顔はとっても整ってるしキレイだったので男装できるかと思いまして。」

綾音は自信なさげに俯きながらそういった。

「ウ〜ン、やったことないけど多分出来るかもしれない。でも、私演技とかくそ下手くそだから騙せるかどうかはわからないよ?」

「それに姉貴は髪長いぞ?その辺はどうすんの?」

2人は立て続けに問題を提示していった。

しかし、伊達に生徒会長を任されていないため綾音はあたふくこともなく冷静に答えていった。

「大丈夫です。髪はウィッグで隠して後は服装だけ男物を着ていただければおそらく外見は騙せます。演技の方は私が全力でフォローしますので大丈夫です。」

「ほんとかなぁ〜。騙す自信がない。優人〜付いてきて〜。」

「はぁ!?なんで俺が行かなきゃなんねーんだよ。いってどうすんだよ。」

「だってさぁ、不安なんだもん。優人がいればその女の子達、私じゃなくアンタに興味示すだろうし。」

意外にと正論を言いながら潤は優人も巻き添いにしようとしていた。

「それでも構いません!むしろいいかもしれませんね。優人さんをブラフに使いましょ。」

綾音も優人を連れていく気になっていた。

「ちょっと待て!無理だ!バイトがある。」

「大丈夫!私が勝村さんに言っとくから!」

「それでは、決まりですね!今週末。どうかお願いします!」

(どうしてこうなった…。)

優人はとても嫌そうにしながら借りがあるため嫌とは言えず綾音に付き合うことになった。

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