才色兼備、元カレを作る
「それじゃあ、弟さんの優人さんも呼んできてもらえますか?」
その言葉を聞き潤はこれから綾音が話そうとしていることがなんとなくわかってしまった、そしてそれが優人にとってとても良くない話だということも。
「え~と、綾音ちゃん。ごめんね?それはちょっとできないかな〜。」
「いえ、これからお話するのはおもに優人さんに関係がある話なので呼んできて貰えると助かるのですが…。」
潤の断りにも引き下がらず綾音は話した。
「わかった。もう覚悟を決める。呼んでくるから少し待ってて。」
潤は綾音が引き下がらないのを察し、覚悟を決め優人を呼ぶことにした。
そして、潤はお店に出ている優人を呼ぶためスタッフルームをあとにした。
数分待つと潤は優人をつれスタッフルームに帰ってきた。
優人の顔つきも少し険しいものになっていて、おそらく潤から事情を聞きある程度覚悟を決めてきたんだと綾音は察した。
「綾音ちゃん、連れてきたよ。」
「はい、ありがとうございます。それでは早速ですが、優人さん、金城 優人さんはウチの学生で間違いありませんよね?」
潤と優人は思っていた通りの話が出てきて緊張感が更に増した。
「えぇ、間違いありません。だけどね!!綺音ちゃん!私が人手が足りないからってイヤイヤな優人を無理やり誘ったんだ。」
潤はなんとか優人の罪が軽くなるよう弁護した。
その必死さを綾音は変に思い、2人がなにか勘違いをしているのでは無いのかと察した。
「潤さん?私は別に学校に報告するわけじゃありませんよ?」
この言葉に潤と優人は驚き、2人ともとぼけたような声を出した。
「え?どゆこと?」
「いや、わからん。会長がなにを考えているかまったく。」
2人は見合わせながらクエスチョンをお互いに出していた。
そんなはてなマークだからけの2人を見て綾音はいった。
「別に、先生方に報告するようなことはしません。そんなことしたら間違いなく優人さんは停学、あるいは退学になってしまいます。」
「それに、私が先生方に報告する意味がありません。ウチの学校の生徒が減るばかりか、しかも卒業まじかの三年の生徒が退学になるのは避けたいですし。」
「でも、知ってて隠してたなんてことになったら会長もマズイんじゃないんですか?」
優人は自分の想像する生徒会長のイメージと違いすぎてまるで初めてあった人に接するように話した。
「マズイです。だから今日のことは無かったことにします。それと私が生徒会長をしているのにも関わらず退学者が出るなんてことはさせません。なのであなたに協力します。」
「え?」
優人は思わぬ協力に驚き思わず声が漏れた。
「協力はしますけど、なるべく私の指示に従ってください。」
「まず、今優人さんが置かれている状況ですが、非常にマズイ状況です。同じ学校の生徒達の目撃情報が噂になって教員の耳にまで入ってしまい、教員でパトロールをおこなうところまで決まってきています。」
「綾音ちゃん、それホント!?凄いヤバイじゃん!てか、墓穴は掘るなってあれだけ言ったじゃん!思いっきり目撃されてんじゃんしかも複数人!!」
潤は優人が上手くやっているもんだと思っていたため今置かれた状況の危険さにかなり焦っていた。
「いや、上手くやってるつもりだったよ?実際やれてたと思うけど流石に3年間続けてたら目撃もされるよね。」
「優人君。3年間もやっててその程度の誤魔化しですか?正直、酷すぎです。まずなんで制服姿でここら辺をうろついてるんですか?バレバレです。」
「はぁ!?あんた制服で通ってたの!?バカなの?」
潤はあまりの酷さに驚きが止まらなかった。
「いや、最近だよ?制服で通ってたのは、バレる気配がないから着替えるのも面倒だし制服でいいかなって。」
そんな危機感がない優人を見て、ため息混じりに綾音は答えた。
「とにかく、気を抜かないでください。それと制服でうろつくのはやめてください。後、パトロールは続いてもせいぜい二週間だとみています。この二週間は休むことは可能ですか?」
「うーん、難しいじゃないかな。今、ボーイの子あまりいないし、勝村も大変そうだから休むことはできないかもしれない。」
「なら、私達生徒会もパトロールを少し任されているので夕方頃、私達に協力してパトロールを一緒にしているフリをしてここまでくるようにしましょう。」
「生徒会の連中まで協力してくれるのか?」
「えぇ、そのかわり事情はみんなに話して貰います。バイトならいくらでもある中この仕事選んだには理由かなにかでもあるんでしょ?3年間も隠し続けてたんだからどうせ辞める気もないんだろうしなら協力して乗り切った方がいいでしょ。」
綾音はそう言いながらケータイを取り出し誰かに連絡を入れているようだった。
「すごい、どんどん話が進んで事が決まっていく…。」
潤は綾音のあまりの手際の良さに感心していた。
「でも、生徒会のみんなや私が一緒について行くことができるのは夕方だけですよ?今日みたいな日が暮れて暗くなっているような時はパトロールを任されていないのでこの作戦は使えません。それとここへくる日は必ず生徒会に連絡を入れてください、今までのように1人で行ってヘマをされるようなことはしないでください。」
「協力してくれるのはありがたいけど、ここへ来るのに生徒会の人達と一緒にくるのはちょっと面倒だな…。」
「ダメです。従ってもらいます。」
綾音は威圧するように優人にいった。伊達に生徒会を任されていないため迫力のある発言だった。
「それに、これは潤さんへの恩返しも兼ねてます。助けてくださりありがとうございます。」
そう笑顔で優しく綾音は潤にお礼を言った。
その姿は女の潤から見てもキュン死しそうな美しさだった。
「綾音ちゃん…。ありがと。ほんとに。」
「こちらこそありがとうございます。それにこうゆうお店に少し私は偏見を持ってたのですがここは優しい人ばかりで男の優人さんには悪影響を及ぼすとも思えませんし、問題無いでしょう。」
「すいません、会長。高校だけは出ておきたかったので凄く助かります。」
「はぁ、卒業したいならこんなグレーなことしないでください。」
少し呆れたようにでも笑顔で優しく綾音は答えた。
「それでは、私は帰りますね!詳しい話はまた学校でするので呼びだしには応じてください。」
「綾音ちゃん。こいつをよろしくね!言うこと聞かなかったら私に言ってね!綾音ちゃん困らすようならスグぶっ飛ばすから!!」
「はい、スグに潤さんに相談しますね。」
本気でぶっ飛ばしそうな潤さんを見て綾音は笑いながら答えた。
「この数時間で姉貴をここまで心酔させるとは…。」
優人は生徒会長の人望を恐ろしくも思いながらそうつぶいた。
そして、綾音は潤と優人に手を振りお店から出ていった。
「いい生徒会長さんだね!アンタの話と違い過ぎててビックリよ。人を見る目無さすぎよアンタ。」
潤は綾音の後ろ姿を見ながらそういった。
「いや、俺もあそこまで話の通じる相手とは思わなかった。校則は規則に反する者は即刻処罰をするような人だと…。」
「いやぁ、綾音ちゃんホントいいわ。美人だけど時折見せる笑顔なんかはやっぱり年相応の可愛さがあるし、ありゃモテモテだね。あたしが男だったらまずほっとかないし女だったとしても変な虫(男)が寄らないように守るね。」
「姉貴もそんなこと思うんだ。姉貴の言うとおりモテモテだしそんな男がよりつかないようにしてる女子も何人かいるよ。」
優人は学校でたまに見かける綾音を思い出しながらそう答えた。
「アンタも寄るなよ!綾音ちゃんは善意であたし達に協力してんだからね!手出したら殺す。」
言葉にならないほどの殺気を放ちながら優人に潤は釘を指した。
「わかってるよ。手なんか出さねぇし、恋愛とかそうゆうのにも興味ねぇよ。糞親共が熱心になってたものなんか…、虫唾が走る。」
「はぁ、まだそんなこと…。早くお父さん達がしたことなんか吹っ切って大人になりなさい。」
そんな恋愛に嫌悪感を出している優人を見てため息混じりにも戒めるように潤は言った。
「なんだよ。そっちこそ男を取っかえひっかえしてる癖に。結婚式したいなら早くいい男見つけねぇと消費期限切れるぞ〜。賞味期限はとっくの昔に切れてんだから〜。」
そう言い残し優人はお店に戻っていった。
「あぁあ!!言ったなぁ!別に取っかえひっかえしてません〜。大内さんも九条君もクリスもいい男でした〜。つか、消費期限切れるってなんだコラァ!!消費期限もまだ切れてねぇよ!」
潤は失礼な弟を後ろから怒りつけながらお店の中へと消えていった。
(はぁ、駄目だ。昨日、会長が来たせいで気を張りすぎて疲れてる。)
昨日の騒動から夜が開け時間は午前10時を周り学校の授業も2時間目と3時間目の間の休みに入っていた。
(眠くてまるで授業の内容が頭に入ってこなかった。)
金城 優人はだるそうに机に突っ伏しながら早く家に帰ることだけを考えならがら眠りにつこうとしていた。
「おーい!優人!また寝てんのか?せっかくの高校生なのにお前、そんなでいいのかよ。」
「その声は健人か?うるさいからどっかいけ〜。」
優人は話しかけてきたクラスメイトの顔を見ることもせず顔を机に伏せたまま健人を厄介者のように手であっちへいけと合図しながら言った。
優人のクラスメイトで友人でもある足立 健人は中学の時に優人と知り合いそれから腐れ縁のように仲良くしていた。
健人は女好きでどうしても高校生活で彼女を作りたいと思い続けてきたがついに出来ずに3年生にまでなってしまった。
別にかっこ悪いとか顔が悪いわけでは無いのだが女の子にガッツキ過ぎてそれが相手にも伝わりなかなか彼女が出来ないでいた。
「そりゃ、ないでしょ。最近お前、バイトで忙しいしなかなか遊んでくんないじゃん。学校でしか会えないんだからさぁ、冷たくしないでよ〜。合コンしようよ〜。」
「お前がそんなウザイキャラじゃなけりゃ冷たくしないし、今日はほんと疲れてるんだよ。まじで寝かせて次、数学の小沢先生だろ?せっかくの寝れる授業なんだから。それと合コンはしねぇよ。」
「じゃあ、わかった!寝かせてやるから合コンいこ!お前来るってなったら女の子参加してくれんだよ〜。お願いします!!」
健人は前から優人を合コンに誘っていたが優人はまるで興味を示さなかった。
「じゃあ、寝ないから合コンなしな?」
優人は顔を起こし数学のノートと教科書を取り出した。
「おい!待て!寝ろよ!!寝れるよ!!頑張れよ!」
健人は焦りながら優人に寝るよう言った。
「うるせーな。そんな騒がれたら寝れねぇし合コンなんか絶対行かないからな?」
「もう目が覚めた。無理。」
優人はこんなやり取りは嫌いではなかった。そのため少し楽しくなって眠気はほんとに覚めてしまった。
「なんでそんな嫌がるかな〜。絶対モテモテだぞ?悪い気しねぇだろ。」
「嫌だよ。恋愛なんてホントくだらねぇ。マジで少し意地張って大人振ろうとしてる小学生男子の方がお前よかよっぽど利口だぞ?」
「いや、俺からしたらお前は高校生にもなって大人振ろうとしてる小学生男子みたいな事言ってんなよって思うけどな。」
「いいよ、それでも。大人になるにつれてお前みたいな彼女作ること以外は頭に無くなっていくなら小学生男子上等。」
健人は小学生呼ばわりされる方が合コンをするよりマシだと思ってる優人を見てため息をついた。
「お前なぁ。まぁ、そう簡単にお前が来てくれるとも思ってないよ。でもな!今回は上玉が来るかもしれねぇだそ!?」
「いや、誰が来ようと行かねーよ。」
健人が優人の興味のない話をするので優人は冷めはじめ、数学のノートと教科書を枕代わりにし寝る体勢に入った。
「待て待て、まず聞けって!」
「聞いてる聞いてる。続けて〜。」
「お前なぁ、まぁいいや。上玉というのはな!一守 綾音様だ!!」
健人は興奮のあまりクラス全員が振り向くほどの大声で叫んでしまった。
クラスメイトは大声のした方向を見たが健人だとわかるといつものことかというようにまたそれぞれの会話に戻ったり勉強を再開したりしていた。
「こほん、興奮をして過ぎてしまった。失礼。」
健人は偉そうに一つ咳払いをしていつもの声のボリュームまで落とした。
「お前馬鹿だろ。」
そんなアホな健人を見て顔を起こし優人は笑いながら言った。
「男はいつだって馬鹿さ!そんなことよりお前、一守 綾音だよ!」
「誰だよ一守 綾音って。ん?待て、綾音?生徒会長?」
「お?なんだなんだ!女に興味のない優人が名前覚えてるなんて珍しいじゃん!!そ!一守会長よ!やる気出てきたっしょ!?」
「いや、やる気はねぇけど生徒会長ってそんなことするの?合コンとか。」
優人は昨日あった綾音を思い浮かべた。
(会長が合コンかぁ。もう昨日の一件でまるでわかんなくなったからなぁ、今までのイメージじゃあしないと思うけど意外と話通じるし付き合い程度で参加しそうだよな。意外と社交的だし。でも俺たち姉弟に協力してくるし恩返しなんか言って面倒まで見てくれるぐらい真面目だからなぁ。)
健人は綾音の名前を聞いてウンウン唸りながら考え事をする優人を変に思ったがあまり気にも止めなかった。
「生徒会長もたまにはハメ外したかったりするだろ。つってもまぁ、まだ来ることが確定した訳じゃないからな!生徒会の2年の書記の子をが生徒会長も連れて来るって言ってるだけだったからな。成功したかどうかはわからんけど。」
「ふ〜ん。」
優人はそう返事をしながら健人の話をいつの間にか聞き入っていた。が、スグにいつもの調子に戻り机に突っ伏した。
「まぁ、俺には関係ない話だから。頑張れよ〜。」
「いや、頑張るもくそもお前次第なんだよ。お前が来るってなった方が会長も来てくれる可能性上がるしよ!」
「ハイハイ、頑張って〜。」
ついに、優人は健人の話を聞かず眠りに入った。
その時に学校の校内放送の予鈴のチャイムが流れた。
「やべ、始まる!考えとけよ!優人!」
そういいながら自分の席へと健人は戻っていった。
(はぁ、やっと寝れる。)
健人から解放され優人は瞼を閉じ眠りにつこうとした。
しかし、またもや校内放送が流れた。今度はチャイムではなく教員などが生徒を呼び出ししたりなんかをするための放送が流れた
「えぇ〜、3年D組の金城 優人君!お話があるのでお昼休みに生徒会室までくるように!」
放送から流れてくるのは女性の声だった。
優人は最初は聞いていなかったが、自分の名前が出された瞬間驚き最初は聞く気がなかったため最後の方は何を言ってるか聞き取れていなかった。
「恐らく聞き取れていないと思うので繰り返します。3年D組の金城 優人君は四時間目終わりしだい、生徒会室まで来てください。」
放送の声の主はまるで優人が聞き逃すのをわかっていたかのようにもう一度要件を繰り返し、放送を終わらせた。
(超能力者かよ…。)
優人は声の主が誰か気づき、その人なら聞き逃したのを読みそうだなっと思いながら、またあの人の前に行かなければならないのも少し憂鬱に思った。
(また、体力使いそうだな。本気でこれは数学寝ないとヤバイわ。)
そういって、優人はやっと眠りについた。