才色兼備、元カレを作る
第3話 才色兼備、元カレを作る2
すっかり日は暮れてしまい。実咲を送るのと今回の生徒会の案件で出た夜の風俗街をふらつく男子生徒の件の様子を見るため、綾音は駅へ向っていた。綾音と実咲ら買い物を終え、荷物を持ちながら駅まで歩いていた。
「いやぁ、なんかこうゆう買い物したのって結構久しぶりだったりしたんじゃない?」
「かも知れないね…。今お互い3年生で進学やら就職 やらの進路を決めたり勉強をしたりで忙しいし、ほんとに学校ででしか会わなくなって来てるしね。」
綾音達の学校は進学校のため、三年生ともなると受験で忙しくてなかなか遊ぶ時間が取れなかったりした。
「まぁ、あんたは特に忙しそうよね。生徒会はいるし、てゆうかあんた進路どうするんだけっけ?」
「え~と、あんまり考えてはないんだけどたぶん進学かな?今すぐ何かをやりたいって言うわけじゃないし。実咲は?」
「うーん、進学は進学なんだけど、もしかしたら専門学校に行くかもしれないかな…。実は私、教員志望だったりするんだ。」
「え?ほんと?似合わなッ!!」
「うるせー。」
笑いながら実咲は綾音の頭を揺さぶった。
「でも、凄い人気のある先生になりそうだよ実咲は。」
「ありがと、やれるとこまでやってみるよ。駄目で元々だからね!」
実咲はどこか清々しい表情でそう答えた。
「そんなこと言って諦めるつもりないくせに〜。」
「えへへ。」
少し照れながら実咲は微笑んだ。
(先生かぁ〜。初めて聞いたな〜。見た目がちょっとクールだから冷たそうに見えるけど、実咲は優しいし頭もいいからいい先生になりそうだな)
「私も、やりたいこと早く見つけたいな〜。最近、クラスの子達も自分の夢に向かって勉強してるとことか頑張ってるところ見ると凄く輝いて見えて自分が虚しくなる時があるんだよね。」
綾音は、最近学校でも周りの人が自分の進路を決めて頑張っている姿を見て今の自分の状況に不満があった。
「結局さぁ、成績とか学校の評価とか良かったり周りから尊敬とかされてもなんかこれだけは譲れないみたいなもの持って頑張ってる人の方が何倍も尊敬できるしそんなふうになりたいなってすごく思う。」
実咲は少し考え、答えた。
「まぁ、確かにそうかもしれないけど、あんただっていつかは見つかると思うよ?まだ全然焦る時期じゃないし逆に何にでもなれるってことだから、プラスに考えれば?」
「うーん。なんかこのまま夢も無くなあなあに生きていきそうで少し怖いな。」
そう、未来の自分を想像しながら、綾音は遠くを見つめた。
実咲も綾音から視線をそらし駅の方面を見つめた。そしてそこに、綾音達の学校の制服を来た男子生徒が風俗街の方へ入って行くのが見えた。
「ん?綾音、あれってウチの生徒じゃない?あっちって風俗街だよね?結構マズくない?」
実咲にそう聞かれてすぐさま、視線を実咲と同じ方向にもっていった。
「もしかして…。実咲、ちょっとごめん先帰ってて私注意してくるから。」
綾音は今日の生徒会の議題に出た内容を思い出し、男子生徒の後をつけることにした。
「綾音!流石にこの時間に女子高校生が1人はそれもそれでマズイって。」
実咲はすぐさま綾音を止めようとした。
「大丈夫。私強いの知ってるでしょ?心配ないって。1時間後にメールするから!」
綾音は、まるで心配の必要がないよと実咲に伝えるように優しい表情で答え、走って行ってしまった。
「綾音!!1時間後にメールこなかったらどうすんだよ…。警察に連絡しろってかぁ…。たく…。」
実咲は愚痴をいいながらも、約束通りメールがこなかったら警察にすぐさま連絡をいれる覚悟をし、とりあえず綾音との約束を守ることにした。
(確か、こっちだったよな…。あれだ!ってキャバクラ入ろうとしてるし!未成年の学生がマズイだろ。)
綾音は、風俗街に入っていった男子生徒を無事つけていってどこに行こうとしているかも突き止めることに成功した。
「ちょっと…。君!」
そう、男子生徒に呼びかけたつもりが近くにいたチャラ男二人組が呼び止められたのかと勘違いし綾音に近づいてきた。
「え?ナニナニ?これって逆ナンってヤツじゃね?モテ期きてるんじゃね?」
「いや、お前じゃねぇだろ俺を呼び止めたんだよ!つか、めっちゃ美人じゃん?なに、モデルかなんか?」
耳にピアスなどをし髪もロンゲの茶髪でいかにもチャラ男のような風貌でチャラ男のような口調をした人と黒のショートカットで、体格もよくスポーツをやっていそうなちょっと強面の人が話しかけてきた。
「すいません、人違いです。お兄さん方ではなく、あちらにいた同じ高校の生徒を呼び止めたつもりで…。すいません、失礼させていただきます。」
綾音はすぐさま切り上げ、男子生徒を追おうとしたが、チャラ男達に行く手を阻まれてしまう。
「チョ、チョ、待ってよ!これも何かの運命でしょ?ちょっと遊んでこーよ!」
「ごめんなさい。急がないといけないので…。」
再度切り上げ行こうとしたが、ピアスの彼はほんとにお近づきになりたいらしくしつこく迫る。
「いや、ほんと遊ぼ?つか、連絡先交換しよーよ。絶対楽しいからさ!」
(ちッ。なんだこいつらしつこいな〜。出来るだけ丁寧に応対してやったのに。こっちが下手に出てりゃ言いたい放題しやがって。)
「ほんとすいません。マジでタイプじゃないし、通してくれませんそこ。」
そんな、綾音の少しキツイ言い方に引っかかったショートカットの黒髪の男がついに口を開いた。
「はぁ?ちょっと、そんなこと言われて引き下がれないし。君知ってる?俺らここいらじゃちょっと有名なダイバーって言うチームなんだけど。結構怒らすと怖いよ?」
「そうそう、マジ超怖ぇから。逆らわない方が身のためつぅか、ほんと悪いようにはしないから遊ぶだけだから。ね?」
黒髪のショートカットの方はキレていたが、ピアスの彼は冗談ぽくあくまで綾音の気を引こうとして話しかけていた。
(駄目だ、こいつらしつこ過ぎる。ちょっと小細工で逃げるか。)
「わかった、そんなに自信あるなら今度遊ぼ?付き合ったげる。これ、連絡先。後、本気で落とそうとしてるからとりあえず、ダイバーだっけ?そんなチーマー抜けてね?それじゃ。」
そう言ってメモ帳を取り出し、メールアドレスを書いて渡し、先ほどの男子生徒が向かったキャバクラへ歩き出した。
「うわ!マジ?ヤッター、約束ね?絶対!こりゃ、超自慢だわ!ダイバーの連中めちゃ悔しがるゼ?」
ピアスのチャラ男は飛び上がるように喜んだ。
(それ、私のお気に入りの購買のパンの製造会社のメールアドレスだけどね。さてと、さっさと、退散。アホで良かった。)
綾音は上手く騙せたことに安堵して本来の目的を果たそうと考えた。
「ちょっと待て!こいつはバカだが、俺は騙されねぇぞ?ちょとケータイ出してみろ。」
黒髪の男はこの場から離れようとしている綾音を呼びかけ足を止めさした。
「え?なんでよ。アドレス教え…。」
「いいから出せよ。」
黒髪の男は引かず綾音を追及した。
(やばいなー、どうしよ。いっそのこと思い切り走って逃げちゃおうかな。てゆうか、周りにこんなに人がいるのに助ける人が誰もいないってどゆことよ。)
男達はかなり大きな声でやり取りしていたので、綾音がナンパされていることに気づいている人達は確実にいたのだが、こちらをチラっと見るだけで助けようとする人は1人もいなかった。
「やっぱり、お前、俺たちを騙したろ?」
「ちょ、え?え?オネーさんマジ?うわー、そりゃねぇわマジですげぇショックだわ〜。」
黒髪の男の疑念は確信に変わり、チャラ男は本気で残念そうにしていた。
「ごめんね、ほんとに急いでるんだ。行かせてくれない?」
マズイと思った綾音は謝りながらも、先に行こうとした。
「いやいや、ここまでコケにしてくれたヤツ初めてだわ。ちょっと付き合って貰うから。」
黒髪の男は綾音を絶対に逃がそうとしない気だった。どうやら自分がダイバーの一員だってことに絶対の自信を持っていてそのプライドを傷つけられたのが気に食わないようすだった。
(仕方ないな。逃げよう。合気道には自信あるけど、男2人を相手に出来るほど過信はしてないし、お店に逃げ込めばたぶんこっちのもんでしょ、あっちも店の中でまで入って問題を起こそうとはしないだろうし。)
「あれぇ〜?みくちゃん?みくちゃんじゃん!」
綾音が全力ダッシュでお店に逃げ込むことを決めた時、そこを通りかかった男女の二人組の女性の方が話しかけてきた。
「え?」
綾音は自分のことを言われているのかわからず戸惑ってしまった。
「こんなとこで何してんのよ〜。早く行くよ!お店今、凄く忙しくて女の子足りてないのよ!早く早く!」
女性は綾音のことを助けようとしてその場から早く離れようと促した。
「え?ちょっと、私、みくじゃ…。」
新たな騒動に巻き込まれたと思い自分がみくじゃないと伝えようとした。
「いいから、ここは合わせて。」
綾音だけに聞こえる小声で、女性は伝えた。
「はい、わかりました。行きましょ。」
やっと、彼女の意図を理解し任せることに綾音はした。
「ちょっと、待てよ。俺たちその女に用があるんだけど。」
「サジ!」
「ウィ」
そう女性が言って、返事をしながら、スーツ姿のサングラスにスキンヘッドの大男がチャラ男達と綾音達の間に立ちふさがった。
「なんだよ…。お前。」
あまりの風貌に少し怯えながら黒髪の男は言った。
「お嬢様方は今から出勤です。邪魔をしないでいただきたい。」
「ちっ、もういいわ。行くぞ。」
大男にそう言われ諦めて黒髪の男は引くことにした。
「じゃね〜。オネーさんまた会えたら今度は遊び行こーぜー」
チャラ男は懲りずにまた綾音を誘いながら黒髪の男についていった。
「ふぅ、ありがとうございます。助かりました。あんなしつこい人達初めてです。」
綾音はやっと引いてくれた2人にを見て安堵しながらそう言った。
「いえいえ、最近多いのよね。ダイバーとか言うチーマーが出来てから我がもの顔でこの街をうろつく奴が多くなったのよ。そのおかげで、私もガードマン役付けることになったし。」
ため息をつきながら、自分のボディガードを指差し答えた。
女性は派手なドレスのような服をきて、明らかに夜の仕事をしていそうな風貌だったが、メイクは濃くなく元がおそらく良いのか、メイクなしでも大人な美人のオネーさんのような感じだった。
「てゆうか、凄い美人じゃん!まだ、この時間はあいつらうろついてるからウチのお店に避難しなよ。なんならお店手伝ってもらっちゃおうかな!私、金城 潤!お店では、ハナって名前で働いてまーす!」
綾音の姿を見て興奮しながら女性は自己紹介をした。
「あ、私は一守 綾音です。」
「ハナ、見たところ彼女は学生だ、間違いなく問題になる。」
サジと呼ばれている大男は、可愛かったり美人だったりする女性をすぐ自分の店に誘う悪い癖を持った潤に釘をさした。
「いやいや、18の子も普通に働いてるし大丈夫でしょ?てゆうか、サジはいちいち細すぎよ!そんなデカイ図体して。」
「図体は関係ない。」
「さて、行きましょ!スグそこだから。」
「え?そこって、てゆうかこのお店ってキャバクラ?」
さっき男子生徒が入っていったキャバクラを潤は指さした。
「はい。到着!ここだよ。」
既に見えていたため少し歩いてすぐ到着した。
「それなりにいい値段しちゃうよ〜。この街で中の上くらいの。」
「まぁ、なんとなくそっち系のお仕事をされているとは思いましたけど。私、お手伝いは出来ないですよ?」
「あぁ、いいよいいよ!冗談で言っただけだし!」
「ささッ!入ろ入ろ!」
潤はニコニコしながら、綾音を案内した。
「なんか、凄く賑やかですね。」
「でしょ?で、あれがオーナーの勝村さん。勝村さ〜ん!裏にこの子ちょっと入れちゃうね〜。」
そういって、テーブルに注文を届け終わりキッチンへ戻ろうとしていた男の人に言って綾音を裏のスタッフルームに連れこんだ。
「はいはい〜。ん?え?誰!?ハナちゃん誰それ!学生だよね?ハナちゃ〜ん!?」
慌てた口調で呼んでいたオーナーを無視し潤は先へ進んでいった。そんな状況を不安に思った綾音は潤に訪ねた。
「あの〜、大丈夫だったんでしょうか、先ほどのオーナーさんかなり焦っていた雰囲気でしたけど…。」
「大丈夫!大丈夫!」
「ここで、ゆっくりしてってね!私もすぐ出ちゃうから1人になっちゃうけど。」
「姉貴〜、カツさん呼んでっぞ。さっきの女の子誰だって。」
そう、潤を呼びながら1人のボーイと思わしき若い男性がスタッフルームに入ってきた。
「優人?あぁ、すぐ行くからちょっと待って。じゃあね!1時間ぐらいすればさっきのヤツらはいなくなるから。親とかに遅くなるの連絡したかったらあそこの電話使っていいからね?」
「おい、姉貴なにして…。あ、ヤベ。」
制服姿の綾音を見て、潤の弟と思われるボーイの子は逃げるようにその場から退散した。
「どうしたの優人?」
何かを言いかけ途中で切り上げ逃げるようにその場からいなくなった弟を見て不思議に潤は思った。
「いや、なんでもねーよ。早く下降りてこいよ。」
「なに、照れてんだ?あいつ。あいつね!私の弟なんだ〜、クールぶってるけど女の子に話しかけられないだけなの。」
「じゃあ呼ばれてるみたいだから行くね?困ったことあったらここにいる人みんな優しいから誰かに聞いてね!」
「はい。ありがとうございます。」
潤は、そう頭を下げた綾音を見て最後にもう1度微笑んでその場から立ち去った。
(成り行きとはいえキャバクラに入ってしまった…。まぁ、ほとぼりが冷めるまではここにいた方がいいよね。それよりさっきのボーイの子どっかで見たことあるような…。あれ?ハナさんケータイ忘れてる。)
綾音は潤のだと思われるケータイを拾い、潤の後を追った。
「優人。降りてきたよ。勝村さんどこ?」
下で待っていた優人を見つけ、潤は話しかけた。
「今、キッチンが忙しいから手伝ってるよ。それよりなに無関係な女連れ込んでんだよ!」
「え~、だってダイバーの連中に絡まれて困ってそうだったからさぁ〜」
「はぁ、なんでよりによってウチの学校のやつ拾って来ちゃうんだよ…。」
優人はため息をつきながら、我が姉のした事の重大性を説明した。
「え?」
「あの、制服、俺がいってる高校の制服だろ?」
「あ、マジ?ヤベーじゃん」
「ヤベーよ!バレたら停学はおろか退学だよ!しかも、あれウチの生徒会長だぜ?ほんとバレたら終わる。」
本気で焦りながら、綾音がいるであろう方向を見て優人は言った。
「いや、流石に先生に言ったりするような子には見えなかったけど…。」
「今、高3だぞ?みんな内申点上げるためにやっけになってる。確実に俺を売ってくるぞ。」
「いやいや、そこまでする子にはほんと見えないんだけど。」
「とにかくバレるのはマズイ。」
「後、1時間もしたら帰ると思うよ?私も、1時間ぐらい経てばダイバーの連中いなくなるって言ったし」
そんな話をしていたら後ろから誰かが潤の方を指でつついた。
「あの〜。ハナさん?」
潤はそれに気づきつつかれた方を振り返った。
「あ、綾音ちゃん!?どうしたの?」
振り返った先には少し不安そうにしている綾音がケータイを持ちながら立っていた。
「これ、机の上に置いていったので大丈夫かなぁって思って持って来ちゃいました。」
「ありがとう!助かるよ!」
潤は営業目的でそのケータイのアドレスを教えたりして使うためないと仕事にならないぐらいの代物だった。
「後、それと後ろの方は?」
本当に助かったと言うような感じで安堵する潤さんの後ろになにか人影が見えた事が綾音は気になり、潤に訪ねた。
「え?後ろ?あぁ、優人って言う別に紹介するほどのものでもないよ〜。」
潤はふと優人の存在を思い出し、綾音になるべく見えないように優人を隠し答えた。
(なに、名前さらっとバラしてんだよ!誤魔化せてねぇよ!)
(しょうがないでしょ!いきなり過ぎてなにも考えて無かったんだから!)
金城兄弟は綾音に聞こえないような小声でやり取りをした。
「そうですか…。」
綾音は、そんな2人が少し怪しく見えたもののあまり気にすることでもないのかなと思った。
「あ!ハナちゃん?やっと来た!早くヘルプ入ってくれるかな?」
そんな時、この店のオーナーらしきスーツ姿の男の人が潤のことを呼びながらこちらへ近づいてきた。
オーナーさんはとても優しそうな人で、歳も30くらいで目は細く声も落ち着いた感じの声でとても安心感のあるような感じの人だった。
「はーい。じゃね、綾音ちゃん!」
潤はオーナーらしき人に呼ばれ、綾音に手を振り別れを告げお店に出ていった。
オーナーさんは潤がお店に出ていったのを見送って、視線を再びその場に残った綾音と優人に合わせた。
「ん?君、ハナちゃんが連れてきた子?制服来てるから学生だよね?料理とかできる?今、ほんと人いなくて大変なんだ!手伝って貰えないかい?給料とかも払うからさ!」
お店が今1番混んでいる時間でしかも、今日は人が少なかったため従業員があまり足りず猫の手も借りたい状態だったためオーナーは綾音にお店を手伝って貰おうと説得した。
「え?えーと。私1時間したら帰っちゃうんですけど。」
「勝村さん!綾音ちゃんに無理言っちゃダメだよ!優人を無理やり働かせなさい!」
「おい。」
潤は綾音がオーナーである勝村にお店に出て欲しいと頼まれているのを見て急いで戻ってきた。
「ハナちゃんお店出て…。」
勝村はお店にでたはずの潤に泣き言をこぼした。
そして、すぐさま綾音の方を向き説得を続けた。
「1時間でも構わない!今の1時間が1番混むから。ダメかね?」
「いいですよ。助けてもらった恩もありますし。」
本当に困っていた勝村を見て、助けてもらった恩もあるため綾音は手伝うことを決めた。
「え?」
手伝うと言った綾音があまりにも意外で優人は少し固まってしまった。
「ありがとう!綾音ちゃん!優しぃ〜。」
「ありがとう。では早速だか、この服に着替えてキッチンまで来てくれるかい?」
勝村はすぐに仕事の段取りを始めた。
「はい。」
勝村に、案内され綾音は再びスタッフルームに向かった。
「あんたんとこの生徒会長、融通利くじゃん!」
優人から真面目で固いと聞かされていたため潤も綾音の行動を意外だと思っていた。
「すげぇ、意外。学校では真面目で優秀な人で通ってるからこんなこと絶対しないと思ったのに。」
「ふーん。なんか、あの子ならバレても大丈夫そうだね。」
「いや、それはマズイだろ。」
綾音はスタッフルームでお店の制服に着替え、お店に出てキッチンに入り一通り勝村に仕事の内容を教わっていた。
「じゃあ、とりあえず一守さんがする仕事はこれぐらい。雑用が多いけどお願いします。」
「はい、わかりました。」
皿洗いや注文された飲み物を作ったり雑用が多かったが仕事はたくさんあった。
(さて、1時間もなにもしないでいるのも暇だったしやりますか。)
(それと、さっきのボーイの子。確実にどこかで見たことあるしハナさんも18の子が働いているって言ってたしウチの生徒が紛れてるかもしれないからついでに調査して時間がきたら帰ろ。)
綾音は実は、先ほどの潤の弟である優人をどこかで見たことがありそれにハナが出会った時に言ったことが気になりその事も調べられたらなと思っていた。
優人もイケメンで髪も少し茶色に染まっていて目立つ感じの人のタイプであったため、記憶に残りやすい人ではあった。
ある程度仕事もこなしていたころ綾音に勝村は頼み事をした。
「ごめんなさい!一守さん、フロアあんまり出したくないんだけどこれ注文届けて貰えるかな?嫌なら無理しなくてもいいよ〜。」
フロアには、酔ったお客がたくさんおり綾音が絡まれたりしたら厄介なためあまり綾音をフロアに出さないような仕事をさせていたのだがついに注文を届けるために手が空いている人がいなくなってしまい、渋々綾音に勝村は頼んだ。
「大丈夫ですよ!お客さんの接客とかが無理なだけなんで。」
「執拗に絡んでくるようなら強く言って逃げてきていいから!君もウチのお客様に変わりないんだし。」
「ありがとうございます!それじゃ、行ってきますね。お盆の上に乗っているレシートに書かれたテーブルで大丈夫ですよね?」
「そうだよ〜。それじゃごめんなさい、お願いします!ほんと絡み酒には気をつけてね!」
「はい。」
綾音はレシートに書かれたテーブルの番号を確認しフロアへ向かった。
幸いにもテーブルはお店の奥ではなくキッチンから出てすぐの場所にあったため迷うこともなく届けることができた。
「お待たせしました。こちら、カルーアミルクになります。」
綾音はコースターをひき頼まれた飲み物を置いた。
「はい。ありがとう。それでね!ハナちゃん聞いてよ!!」
お客は軽くお礼をいいすぐに自分についた女の子と話をしようとした。
「あれ!?綾音ちゃん!」
潤は綾音がフロアに出ることをはないと思っていたためとても驚き心配で綾音に話しかけた。
「あ、注文を届けるだけなんで大丈夫ですよ〜。」
綾音はそんな潤の気持ちを察しなだめるように返事をした。
「そう。ありがとね!ほんと。」
「なになにぃ、新人?え?超美人じゃん。こっち来て話そうよ!」
潤が驚きのあまり綾音に話しかけてしまったためお客も綾音のことを見て興味が湧き話をかけてきた。
それに気づき、潤は間に入って綾音を守るような体勢を取った。
「はいはーい。この子はダメー。私が相手するからこの子には指1本触らないでね〜。」
「えぇ〜、話したーい。」
しつこく迫るお客から綾音を守るため潤は近くにいたボーイの優人に手で合図を送った。
それにすぐに気づきすぐさま、そのテーブルに行き綾音に小声で優人は話した。
「おい、早く裏に逃げろ。」
「あ、はい。」
優人がそのテーブルに入りお客に事情説明をしているのを尻目に綾音はキッチンへと向かっていった。
「大丈夫だった?絡まれなかった?」
急いで帰ってきた綾音を見て勝村は心配そうにそう訪ねた。
「大丈夫でしたよ。少し絡まれてしまいましたけど、ハナさんと弟さんが助けてくれましたし。」
「あぁ、やっぱり絡まれたか…。ごめんね、もう出さないように心がけるから!」
「いえいえ。お役に立てれば何度でも行きますよ〜。」
「ダメだよ!ダメ。酔ったお客さんはほんとウザイから。」
自分の出した指示に少し後悔しながら勝村は、そう言った。
「わかりました。じゃあ、やれることを頑張りますね。」
そして、綾音はまた先ほどの雑務に戻った。
淡々と雑務をこなして行くなかで約束の時間を回っていた。
「さて、そろそろ時間だよね?一守さん。」
「あ、そうですね。」
「じゃあ、もう上がっていいよ〜。今日はほんとにありがとう!これ、少ないけど気持ちだから!」
そう言って、勝村はお金の入った封筒を手渡した。
「すいません…。避難させてもらったうえにお金まで。」
勝村から手渡された封筒を貰いお礼を言いながら綾音は感謝した。
「助かったからいいんだよ。また、困ったらいつでも逃げ込んでいいからね?」
「はい。ありがとうございました!」
「忘れ物とか気をつけてね!」
綾音は勝村にお辞儀をし、スタッフルームへと向かっていった。
スタッフルームにつくと休憩中だと思われる潤がケータイをいじりながらイスに座っていた。
「あ!綾音ちゃん!お疲れ〜。今日はありがとね!」
潤はスタッフルームに入ってきた綾音に気づき、ケータイをしまいながら話しかけた。
「いえいえ、こちらこそありがとうございます。」
「気が向いたらいつでも来てね!なんなら働いちゃってもいいよ〜。」
「卒業したら考えますね。」
「え〜、絶対こなさそうな答え方。綾音ちゃんなら絶対1位取れそうなのに。」
とても残念そうに潤はそう言った。
「ほんとに困ったらきますね。」
「うん。そうしな。」
「それじゃ、帰る前に一つお話があります。」
綾音は潤に真面目な話をするため潤の方を向きそう言った。
「ん?私に?なになに、なんでも言うし聞くよ!ちょうど、休憩時間だし。」
そんな綾音を見て少し緊張をほぐすようにそう答えた。
「それじゃあ、弟さんの優人さんも呼んできて貰えますか?」
潤はまるで予想していなかったとゆうか、忘れていた案件を思い出し固まったまますぐに言葉を発することができなかった。