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才色兼備、元カレを作る

第2話 才色兼備、元カレを作る。


一守いちもり 綾音あやねは焦っていた。

三条に意地を張った手前なんとしても元カレを作らなくてはならなってしまい、頼んでも害の無さそうな、見返りを求めなさそうな人を1週間の間で探さなくてはならなかったのだ。

(ヤバイ、ほんとどうしよう。いないなんてバレたら今まで作り上げてきた完璧な会長イメージに傷が付きかねない。)

綾音は1年の頃から真面目で優等生、しかしながら風貌が大人っぽいので色々知っていそうというイメージがついていた。と言うよりも、彼女はあまり仲良くない人には素を出さないことが多く、彼女の趣味(少女漫画を舐めるように読むこと)を知っているのも母親と幼い頃からの親友である実咲みさきしか知らないのであった。そして今更素など出せず、この定着してしまった優等性キャラを守ろうとしていた。

「会長、こないだから問題視されてる駅近くの風俗街を出入りする我が校の生徒だと思われる制服を着た人の件についての会議を今からおこないたいのですがよろしいですか?」

そう、生徒会長である綾音に問いかけたのは2年生である川上かわかみ あつしであった。

彼は、2年生にして生徒会の副会長として任命され綾音をサポートし、彼もまた頭も良く顔も整ってキリッとしていて周りからモテていたりした。とても真面目で校則を守りそして守らせていて綾音も頼りにしている部分もあった。。しかし、少し頭が硬い部分があり厳しいとの意見もあり、その硬さゆえ生徒会の仲間からからかわれることもあった。

そんな、川上の問いかけに気づかず綾音は昼間の件で思考を巡らせていた。

(とりあえず、実咲には申し訳ないけど生徒会終わるまで待っててもらって今日の事情を説明して彼氏役をなんとしても頼まないといけないでしょ〜。それから今週の休日に男物の服をふたりで…いやまてまて、間に合わない。平日に行くしかないか……)

なんとしても彼氏が無いなかったなどという不名誉なことがバレないよう今週の日程を頭の中で綾音は立てていった。

会議に集中していない綾音を珍しいなと思いながら川上はもう一度、綾音を呼んだ。

「会長?どうか致しましたか?珍しく集中せず、考え事をしているようですが。」

もう一度、問いかけてやっと綾音は会議中だったことを思い出し、周りが綾音に注目していることに気づき会議に集中した。

「いやいや、なんでもないの。ごめんねみんな。川上君、もう1度会議の議題を言ってくれないかな?」

「珍しいですね〜。会長が会議に集中していないなんて。何かお悩みですか?」

そう、川上と同じ2年生の田代たしろ 芽衣めいが言った。

彼女は生徒会の書記を担当していて、真面目だが川上より硬くなく芽衣の方が取っ付きやすかった。会長である綾音に憧れ生徒会に入ったが、会長が好き過ぎて男を会長に近づけないようにしたり親衛隊を作ったり会長のいない影ではお姉様と親衛隊の人達と呼んでいたりしていた。綾音も彼氏などを作ることに興味が無かったり、男子からのお誘いなども面倒だったため親衛隊には特に口を出さずにいた。

「そうね、少し考え事があって、ごめんね?」

そう、言いながら綾音は芽衣に優しく微笑みかけた。

そんな笑顔で言われたらなんでも許しちゃうよ〜と芽衣は悶えていた、綾音はいつものことなので無視して、川上に先ほどの議題について聞いた。

「なるほどね〜、前々から噂では聞いたことがあったけどもしこの学校の生徒だったら間違いなく停学かそれが続くようなら退学になるかもしれないわね。」

「わかったわ。私が今日、様子をみてくるからそれで見つけたら事の深刻さを伝えて注意しておくわ。生徒会にまで話がまわってくるってことは先生の元に情報が入ってくるのも時間の問題だしね。」

その答えを聞き、川上は慌てて会長を止めた。

「いや、まずいですよ!あそこはあんまり治安がいいとはいえませんし酔っ払いとかが何してくるかわかりませんよ?」

「大丈夫よ、護身術は習ってたし。なんの問題もないわ。」

「それじゃ、今日はこの辺で会議は終わりで、ちょっと用事があるから帰らせてもらうね?」

会議を締め括らせ、足早に綾音は生徒会室から出ていってしまった。役員の皆は、会議の途中でボーッと呆けたり、さっさと議題を片付け足早に帰ってしまった綾音を見て不思議そうにしていた。

「いつも、最後まで生徒会室に残る会長が珍しい。しかも今日はなんだか集中出来ていないようにも見えたし。何かあったのかな?」

川上はいつもと違う綾音をみて芽衣にそう訪ねた。

「あれは…。男だな!」

芽衣は自信ありげにそう川上に答えた。

「え!?会長に彼氏が?今までのこの3年間そんな噂すらなかったのに?」

「バカ、お前。会長はあの容姿だぞ?それに成績優秀、性格も文句の付けどころがない。引く手あまたの超有能株じゃん。」

「いや、ないですよ。恋愛とか興味無いとか前に言ってましたし、それに今までいなかったのにどうしてこの時期に急に…。ないない。ないです、ない。」

川上は前に何故彼氏を作らないのかと芽衣に聞かれている会長が言っていた言葉を思い出しながら否定した。

「川上。お前焦りすぎだよ。」

芽衣は川上の必死の否定に吹き出しながら言った。

「ごめんごめん。からかっただけだよ。そうだよね、ないよね。たぶん実咲先輩となにか用事があるんでしょ。あれだけ仲良しだととうぶんは2人に男の影はないね。」

何故か実咲までもがディスられていた。

「でも、会長ももう今年で卒業だよ?告白とかしないの?川上。」

芽衣はまたニヤけた表情で川上をいじりだした。

「するか!脈もないですし。いいんですよ。自分は見てるだけで…。」

川上は顔を真っ赤にして、告白しないことを告げた。

「なにそのストーカー宣言。」

芽衣はケラケラ笑い出した。笑いすぎて目から涙が出てきたのを、指で拭いながら芽衣は続けた。

「まぁ、あんたがそれでいいならそれでもいいけど、私はそろそろ会長に彼氏とか作って欲しいな。彼氏のことで悩んだりもじもじする会長とか見てみたいし。」


放課後、校門前。

実咲は綾音から待っていてほしいという連絡を受けて校門前で暇つぶしにケータイをいじりながら綾音を待っていた。

朝は一緒に帰る予定ではなかったのだか、綾音になにか相談事があるということでメールがお昼休み終わりまじかに届いた

「みさき〜!ごめ〜ん!」

遠くから手を振りながら大声で綾音がこちらに走ってきた。他の特に男子生徒がされたら間違いなく喜ぶシチュエーションだが、実咲はもう慣れたので何とも思わなかった。ただ大声で自分の名前を呼ばれたので恥ずかしさはあった。

「待った?ごめん、急いで要件終わらせてきたんだけど。」

綾音は走ったのでまだ息があがっていて、そして乱れた髪を耳にかける仕草をした。

「ほんと、破壊力が凄いわ…。」

あまりの色っぽさに実咲は呆然としていた。

「え?何が? てゆうかさ!お願いがあるんだけど付き合って貰えない?」

「まぁ…いいけど…。なに?お願いって。綾音のお願いってあんまりいい思い出無いんだけど…。」

実は、綾音が実咲に頼み事をしたのは初めてではなく、主に生徒会の仕事を手伝ってもらったりしていた。

学校の近隣の人達との友好関係を築くためにゴミ拾いのボランティアをしたり、生徒会の人手が足りない時などは雑用なんかも手伝ってもらっていた。

「なに、ゴミ拾いでもすればいいの?今週土日は予定ないからいいけど?」

実咲は昔、綾音と遊ぶ約束をしていたのにも関わらずその遊ぶ日が近隣のゴミ拾いボランティアに巻き込まれたことを根に持っていたりした。

「いや、あの時はほんとごめんて。まさか私もおばさま(学校の近隣住民)に会うとは思わかなったんだよ。」

綾音は申し訳なさそうに実咲に謝った。

「いいよいいよ、もう終わったことだし私の評判も良くなったし。それで?今度は何すればいいの?」

綾音はその言葉を聞いて安堵し、そして意を決したように実咲を見つめ答えた。

「あのね、男になって欲しいの!」

あまりの予想していない答えを聞いて実咲は頭が真っ白になった。

「・・・は?え?なに、どゆこと?」

「えっとね、私の元彼役をやって欲しいの。」

「いや、ごめんごめん、訳わかんない。」

実咲は益々混乱した。

そして、綾音は今日の昼間に起きた出来事を実咲に説明した。

「なるほどね…。」

2人は学校の最寄り駅へと歩き出していた。

実咲はアゴに手をあてながら綾音の説明を聞き終えた。

「それで、なに?私に男の格好をして綾音の元カレ役をして欲しいってこと?」

「そうなんだけど〜、やっぱり無理かな?」

「うーん、私は別に構わないんだけど、簡単にボロが出ると思うよ?まず、体なんか触られたら間違いなく1発アウトだし、その他にもちょっとしたことでバレそうだけど…。」

実咲は真剣に考えながら、綾音に答えた。

「そこは、私がなんとかするし今回1回だけで終わらせるから!ここを乗り切ればなんとかなると思う。」

「まぁ、とりあえず、私が男装してみないことには話は始まらないけどね。」

2人は実は、男物の服を買うために最寄り駅へと向かっていた。

最寄り駅はそれなりの賑わいをしていて、今の流行りを取り入れたファッション店なんかも多く出店していた。

「大丈夫!実咲なら!たぶん都会の街とか出ても逆ナンされるぐらいの男になれるよ!!」

綾音は自信満々に答えた。

「あんた、だいぶ失礼だね。まぁ、私も男装とか面白そうだしなにより、週末のあんたのあたふたした姿が見れから引き受けたあげる。」

実咲は、ニヤけながらイジワルにそう答えた。

その後、2人は複数のファッション店を回った。そして、2人で話し合った結果、3件目に行ったお店が安くて最近のトレンドも取り入れているためそこのお店で服を選ぶことになった。

「こ、れは。ヤバイな…。」

綾音と実咲が選んだコーディネートを試着した、実咲の姿を見て綾音は驚愕した。

「どうよ?ウチらの学校でも勝てる男、そうそういないんじゃない?」

実咲は自信ありげに綾音に答えた。試着した実咲の姿をみて店内にいた複数の女性も見とれていて、女性定員すらも接客を忘れ思わず見とれてしまっていた。

「実咲はやっぱり男だったんだね…。」

あまりのカッコ良さに綾音も思わず言葉をこぼしてしまった。

「おい!私は女だ!」

そんな冗談を言い合いながら、2人は楽しく服選びをした。

「ふぅ〜、こんなもんか。」

結局、2人は一番最初に試着した服を買っていた。

後半はコスプレみたいになってまともな服選びにはなっていなく、実咲がコスプレをし試着室を出る度、女性客や女性定員から歓声が出て、おかしなお店になっていた。

「意外と楽しかったな、男装の服選びも。てゆうか、これ私貰っちゃっていいの?」

お店から出た実咲は買った服を手に綾音に問いかけた。

「いいよいいよ、今日のお礼。てか、男物の服じゃお礼にならないか。今度、週末のこととまとめてお礼するから。」

「いや、嬉しいよ。綾音。」

実咲は優しく微笑みながら綾音にお礼を言った。

綾音と買い物をしたり遊んだりをすることがほんとうに好きな実咲は心の底から先ほどの買い物を楽しんでいたため、その時点で彼女は満足していた。

そんな実咲に綾音は抱きついた。

「ほんとに、実咲と同じ高校で良かったよ!」

綾音はそんな優しい表情の実咲を見て少し感動しながら答えた。

「もう、何回も聞いたよそのセリフ。」


そして、今週の週末は実咲が綾音の元カレ役を引き受けることになり、今日買った服を着て三条と約束した場所に現地集合ということになった。

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