復讐の決意をしたそうです
ニック退場。ちょっと区切りにくいところなので短いです。
俺はソフィアを抱いて石像のように固まっていた。何も考えられない。何もわからない。ソフィアは息をしていない。涙が止まらない。声も出ない。
リディアナさんが来た。息を切らしている。顔が真っ青だ。ケガはしていないようだ。血まみれの俺たちを見つける。口もとを押さえ驚愕と悲哀の表情を浮かべる。俺のもとへ駆け寄る。ソフィアの死を嘆いている。悲しんでいる。
リディアナさんはハッとした顔をし、「リリィは!?」と聞いてくる。が、束の間「お母さん!」という声とともに玄関からリリィが出てくる。リディアナさんに抱きつく。リディアナさんは抱きとめる。リリィはこちらに気づく。リリィは泣き出す。
「リディアナさん」
リディアナさんは涙を浮かべながらこちらを向く。俺を慰めようとしてくれている。
「ニックは…ニックは知りませんか」
リディアナさんの顔が歪む。言葉に詰まっている。
「教えてください。ニックは」
リディアナさんは嗚咽をしながら答えてくれた。
ニックも殺された。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その夜、リディアナさんが全てを話してくれた。村のあちこちで村の人間が殺されたらしい。襲われたのは加工所と我が家を含めた民家10軒で、加工所からは大量の家具や工芸品が、民家からは陳列された全ての錬成品が略奪された。襲撃者は三人の男で、二人は長い刃物のような物を持っていて、一人は何も無い所から火の玉を飛ばしてきたらしい。また三人とも黒いバンダナのようなもを付けていて、全員が赤い髪をしていたと言う。明らかにアクシアでない人間だ。
父であるニックは加工所で作業をしており、男たちが家具を大量に持っていく所を止めようとしたころ、刃物で首を切られたらしい。
リディアナさんの夫も加工所で作業をしていたらしく、ニックの叫び声を聞き、男を引き止めたところ、火の玉をぶつけられ燃やされたらしい。リリィの父も死んだのだ。
襲撃にあった他の人たちは、みんな同じように殺されたらしい。これまで外部の者に村を襲撃されたことは、ただの一度も無かったらしい。
村は深い悲しみに包まれていた。
咽び泣く声と嘆きの慟哭で溢れていた。
初めて目の当たりにした殺生に震え上がっていた。
しかし
憤怒の激情を
復讐の決意を
怨嗟の殺意を
その心に宿す者などいなかった
俺は違う
略奪者は必ずまた来る
高品質な錬成品を抵抗されることなく、大量に得ることができたのだ
味を占めるに決まっている
二度目などアクシアが認めても
俺は決して認めない
俺が必ず、殺す
ニック「(作者を)許さない。絶対にだ」
すまんなニック…お前の出番は出産の立会いだけや…