12.猫又さんと一月一日
元旦のお昼。
今年は珍しく天気がいいわね。庭の草木がきれいだこと。
私は、十三月って、きっと天国のことなんじゃないかと思うの。
十二個の暦から解放されることを望んだ人たちが行ける場所。
「死んだらせめて幸せになりたい」っていう淡い願いを持った人が行ける場所。
生きている間に願ったことが死んだ後にやっとかなうなんて、ちょっと意地悪な話かもね。
ああ、もうこの庭に、名前も知らないあの人が帰ってくることはないのでしょう。
だって向こうに行ってしまった人が帰ってくることは、どれだけの時が経ってもありえないのだから。
せめてあの人の願いが、天国でかなっていますように。
「…と、なんとか感傷的に〆ようとしたんだけど。」
「本人が目の前にいるから、どうしようもないよねぇ。」
そう、昨日十三月さんが目の前から消えたのだけれど、ちょっと目を離したすきに戻ってきてたの。
なんだったのかしらあれは本当に!一瞬本当に「もう会えないのね」って思って、ああこの庭で、どれだけのことを話したかしらとか考えてたら「やぁ猫又さん」っているんだもの。しんみりして損しちゃったわ。
「それで十三月さん。」
「なんだい?猫又さん。」
「十三月さんの願いってなに?」
「猫又さんも好きだねぇ。だから前も言ったけど、願いっていうのは」
「あなたがどう、とかではないの。あなたの願いを聞くことが、今の私の願いなのよ。」
「…」
「ははは!なんとも理不尽なことだ!」
「世界っていつだって理不尽なものでしょ?」
「それもそうだね、クククッ。じゃあ教えてあげようか。特別出血大サービスで。」
「願い続ける、ってことさ。僕の願いはね。」
「…それはかなうものなの?」
「さあね。ただ、少なくとも長い長い時間のなかで、この願いだけは変わらず僕とともにあるってことさ。」
―猫又さんと一月一日、続く




