11.猫又さんと十二月三十一日
最近では、冬でも昔よりは雪は降らないわね。
十二月なんて言ったら、もう歩けないくらいに一面真っ白になるのが普通だったのに。
舞い上がる周りには興味がないように、十三月さんは息が白くなるような寒い庭で、また「やぁ猫又さん。」と声をかけたの。
「こんばんは。今夜は冷えるね。」
「十三月さんは、年末の番組とかは見ないの?けっこう面白いのに。」
「僕はそれを願ってはいないからねぇ。」
「そう、じゃあ十三月さんの願いは何?」
「話術が巧みだね。でも教えてあげないよっ、じゃん。」
「…ひょっとして、バカにしてる?」
「ははは、君を馬や鹿と間違えるほどバカじゃないさ。」
除夜の鐘が鳴り響き、周りの家々からは楽しげな声が聞こえてきます。
「十三月さんは、年の瀬とかも興味はないの?」
「ないよー。だって年が終わったらみんな死ぬ、ってノストラダムスじゃあるまいし。」
「やり残したこととかはない?」
「そんなの考えてたら、いくら時間があっても足りないさ。人間の手のひらに対して、この世というのは多すぎる。生きていればそれだけ、取りこぼすものも多いんだ。」
「そうなの。じゃあ私はもっとこぼしちゃってそうね。手が小さいから。」
「ふふ、それはどうかな?」
『今年もあと少しだー!』
『カウントダウンいくぞー!5!』
「そういえば猫又さん。」
『4!』
「なあに、十三月さん?」
『3!』
「僕は明日から、十三月に行くことになったよ。」
『2!』
「え?」
『1!』
『『『ハッピーニューイヤー!!!』』』
私の眼の前にいたはずの十三月さんは、もうそこにはいませんでした。
ー猫又さんと十二月三十一日、続く




