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ホラー短編作品集

深夜2時に吠える犬

作者: 候岐禎簾

我が家には家族同然の犬がいる。

名前は「ポチ」だ。

この名前をつけた時、家族のみんなはありきたりな名前だといって反対した。

でも私はどうしてもこの名前にしたかったので家族のみんなを説得して、この名前にしたという経緯がある。

ポチはこの名前を気に入ってくれたようでとても私になついてくれた。

ポチはとても賢い犬だ。

賢い犬だからこそ私は最近、困っている…。



「ワンワン!!」


「ワンワン!!」


深夜の静寂な世界に犬が吠える声が鳴り響く。


「まただ。またポチが吠えている」

ぐっすり寝ていた所を不意に起こされた私は少し不機嫌になりながら、そんな独り言をつぶやいた。

時計を見てみる。

時刻はちょうど深夜2時だ。


「お~い、ポチうるさいぞ~もう夜中の2時だぞ~!」

そう言いながら玄関の扉を開ける。


私の声を聴いてもなおポチは外に向かって激しく吠えていた。


「外に誰か…。いるのか…!?」

そんな言葉が脳裏をよぎる。

玄関からでは外の様子がわからない。

なぜなら、いつも停めている車によって遮られているからだ。

見えない状況だからこそ、私は無性に怖くなってきた。

誰かがいる…。いや、そんなはずはない。だって今は深夜2時だ。こんな時間に誰が訪ねてくるというのか。


そう自分に言い聞かして家の中に引き返そうとする。


ダメだ。


外が気になる。


依然としてポチは吠え続けている。


意を決して私は外まで出てみた。



いない。誰もいない。

外には誰もいなかった。

でもポチは吠え続けている。

「何に対して吠えているんだ…!?」

結局、その日私がいだいた疑問は解けることがなかった。



次の日、私は疲れていたのかとてもぐっすりと眠りについていた。


「ワンワン!!」


「ワンワン!!」


またポチが吠えている…。

私はポチが吠える声でまたもや夢からさめた。

ふと時刻を確認する。


今の時刻は深夜2時だ。


「まただ。いったいなんでポチはこの時間になると吠えるんだ!?」


私はポチの様子を見に行こうとした。

玄関の扉を開けようとした時、あることを思いついた。


「今日はすぐ外に出ずに2階から外の様子を見てみよう……と」

私は2階に上がった。


2階の窓ガラスから外を確認する。

相変わらずポチはワンワンと吠えている。


「えっ…!?誰かいる…」

私はついそうつぶやいてしまった。

外に「誰か」がいるのだ。

暗くてよく見えないが、黒い着物を着た小柄な老人が直立不動の姿勢でポチを見ているのだ。


エサをやるわけでもない。ただジーとポチを見ている。

そして、老人はゆっくりとポチに覆い被さっていく…。

その時、私は自分の目を疑った。

覆い被さったと思った老人がポチと一体化したのだ。

老人はいなくなった。

ポチは吠えるのをやめた。




あれから一週間がたつ。

ポチは夜中に吠えなくなった。

ただ、妙に老けたような気がする。

まるで、突然、老犬になったように…。

あと、顔も人間の顔に似てきたような…。


私の気のせいだろうか?


そんなことを考えると、なんだかポチが人間に見えてきた。


私はなんだか怖くなった。


あの真夜中の出来事は何かの見間違いなのだろうか。

ただ、確かなのはあの日以来、ポチの様子がおかしいことだ。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 怖いです。動物は敏感といいますよね。 ポチはどうなってしまうのか想像が膨らみます。
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