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朝になって山小屋を出て、近くの小川に沿って森を抜ける


峠を登り切ると眼下に広がる平原とそこにそびえる終わりの見えない長城


そしてその内にある赤いレンガの建物群


「これが、中立都市アルブ……」


知ってる街のはずなのに、なぜか初めて見るような感覚に襲われる


マナは馬の手綱を引きながら私の横に立つ


「ここからじゃ見えないけどアルブの最南端の海岸には大きな港があるのよ」


私は少し背伸びをして赤レンガの先に目を向ける


その様子をみてマナは笑い出す


「あなた、本当に変わった子ね

ますます気に入っちゃった」


そんなにおかしい事してるのかな


普通に街の方を見ているだけなのに…


質問しようと横を見るとマナはいつの間にか馬に乗っていた


マナは私に手を差し出す


「ここから先は馬で走るね」


「は、はい!」


手を握ると女性とは思えない力で引き上げられる


「しっかり捕まっといてね

落馬したら怪我するよ」


マナの腰に思いっきりしがみつくと彼女は馬を急発進させた


峠を駆け下り、平原を走り抜ける


風を切って駆ける感覚が気持ちいい


丘の上からは遠く見えた城壁も馬で駆ければ案外速かった


長城の一角にある城門にマナは馬をとめる


マナは私を降ろして手綱を任し門兵と話し始めた


しばらくして戻ってきたマナと一緒に門をくぐった


あらゆる露店が至る所に並んで道という道が賑わっている


町人も商人も、子供も、冒険者も…


色々な風体をした人がそれぞれの目的のために動いている


丘の上から見たこの街はすごく広かった


文字通り果てが見えないくらいに


そんな大きな街の端のこの場所でさえこんなにも多くの人で賑わっている


中央に行けば一体どれほどの賑わいをみせているのだろうか


そんな事を考えている時だった


「あんたさ、どうせ行く当て無いんでしょ

だったら冒険者にならない?」


唐突に言われた言葉は意外なものだった


「確かに私、行く当ては無いです

でも私なんかが冒険者になれるんでしょうか」


戦った事はもちろん、武器さえ持ったことの無い私に冒険者なんて……


「本人の意思さえあれば大丈夫

あんたにだって冒険者としてできる仕事はあるはずだよ」


「私に、できる仕事…?」


思わずオウム返しに聞くとマナは頷く


「非戦闘職って手もあるしね

…もしかして冒険者制度知らない?」


私が小声で返事をするとマナは説明してくれる


「このアルブは中立を土台に成り立っている都市


戦争をしない平和を望む人が集まる都市


だからアルブ中立軍って実際の所、このアルブ内の治安維持部隊なの


軍が発足した時、このアルブには浮浪者が多くてね


浮浪者がアルブの治安を崩す大きな原因になってたの


軍の上層部はその浮浪者を冒険者として軍に招き入れてアルブ内外の警備とか危険区域内ての仕事に派遣することにした


冒険者には今までの経験に基づいたノルマが課せられるからそのノルマさえ達成していれば、冒険者として軍から認められるしある程度の収入は得られる


それ以上の収入や経験を積むために自分から仕事を受注する人もいるけどね


まぁ、数人でパーティ組んでおけば少なくとも路頭に迷うことは無い


でもって冒険者証貰えるから身分を証明する事もできる


命懸けの場面もあるし、下手すると怪我したり、それこそ命を落とすこともあるけど


それに、そんなリスクを背負ってでもやりたいくらい冒険者って楽しいのよ」


マナは私に微笑みかけた


「あなたが嫌じゃなければ、私とパーティ組んでみない?」


……


色々と記憶が混乱している今の状況で


親切に私に手を差し伸べてくれる人がいる


私にとって今取るべき最善の策は


きっと、マナの申し出を受け入れる事…


私は顔を上げてマナをみる


「ぜひ、よろしくお願いします」


そして深く頭を下げる


すると肩を軽く叩かれた


「よろしくね、アイサ

じゃあ早速 冒険者本部に行こうか」


「は、はい!」


少し早足になってマナに置いて行かれない様に私も足を早めた


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