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6

剣と刀とレイピアと


3本の刃物が宙を舞う


飛んでくる剣を避けて刀をレイピアで弾く


後ろに跳んで間合いを取る


ほんの一瞬だけ全員が静止し、相手の隙を伺う


一番最初に地面を蹴ったマナは突き技を放つ


突きは剣で軽く受け流される


マナはそれを見越してたかの様に男に蹴りを入れた


その衝動でナイフは近くの茂みに埋もれたけれど、蹴りを入れた隙をつかれて剣が振り下ろされる


鋭い金属音が森に響く


2つの刃が噛み合い動かない


レイピアと刀だと細身のレイピアの方がどうしても押し合いには弱い


そのこともあってかマナは押し負けている気がした


せめて少しでも間合いが取れれば、と思うけれど、それすら難しいみたいで


「……?」


視界の隅にキラリと光るものがこっちに向かって飛んでくるのが目に入った


私は咄嗟に身を低くする


その瞬間、風を切る音が耳の横を勢い良く通過し、すぐ後ろの幹から鈍い音がした


慌てて後ろを向くと、深々と刺さったナイフが


どこから……


恐る恐る地面に視線を向けるとそこには嫌な笑みを浮かべた男がいた


見つかった、ってことだよね


周りをみて逃げられそうな所を探す


でもどの枝にも動けそうにない


弓矢で攻撃する……のには無理がある


私には枝から落ちない様に矢を放つ事なんてできない


もし仮に出来たとしても、引き込んでいる間を狙われる


せめて何か魔法が使えたら…


下にいる男はナイフを構え投げる


ナイフは男の手を離れ真っ直ぐ飛んでくる


もうだめだ…と思い目を閉じた瞬間


自分の意思とは無関係に両手を広げて腕を前に突き出していた


体の外から内へ、何かが流れ込んで手のひらに集まる


その何かは一気に外へと弾け出た


ガラスが割れる様な音に目を開ける


目の前にはキラキラと光る透明な壁に刺さる一本のナイフ


「……え、何…?」


何が起きたか分からずに呆然としていた私の耳に鋭い金属の音が飛び込んできた


慌ててマナのいる方に視線を向ける


真っ直ぐに振り下ろされた刀を何とかレイピアで受け止めているマナ


明らかにマナの方が劣勢だった


刀がレイピアを削っていく


このままだとレイピアが折れてしまう……


マナの顔に焦りの色が浮かぶ


焦りのせいなのかほんの一瞬レイピアを握る手から力がわずかに緩んだ


レイピアで受け止めていた刃がマナ腕に向かって落ちる


「……くっ…」


血の滴る腕に眉をひそめ、後ろに数歩ふらつく


その隙をついて男がアヤネに突進する


「マナっ…!」


男のナイフが深々とアヤネの腹部に刺さった


刃が肉を裂く不快な音がやけに大きく耳に入ってきた


思わず伸ばした私の手はマナに届くはずもなく、ただ宙を掴む


かなりの量の血が地面を紅く染めた


力が入らないのかレイピアを握る手が震えている


とてもじゃないけど戦う事なんて出来ないはずなのに、立っている事すら辛そうなのに


マナは決して2人から目を逸らさず私の隠れる木に手を付きながもレイピアを構える


男はそんなマナを見て哀れむ様な表情を浮かべ、唇を歪めてマナにナイフを向けた


このままだと確実にマナが……


そっと背中に掛けた弓矢に手を伸ばす


……、……


耳元で何かを囁かれた気がした


後ろを振り返っても人はいない


ーここから、逃げて


今度ははっきりと聞こえてきたけれど


ここから逃げるって


私があの人達から逃げるなんて、到底……


ーあなたなら、大丈夫


すっと背後から気配が消える


その瞬間、私の意識が薄れていって、代わりに何かな身体に入って来るような感覚に襲われた


そんな感覚がして、ふわっと身体が浮き地面に足が着く


そして前に進み、迷う事無くマナの前に立ちふさがる


「……邪魔するなら、お前も斬る…」


腰を落とし構えの姿勢に入った男に私は手を向けた


男が地を蹴ったその時、ものすごく強い光が辺りを支配する


咄嗟に目を閉じたけど光が強過ぎて何も見えない


勝手に動く身体に抗う事もできずに足を動かしていて


気がつけば私とマナは海にほど近い森の端に来ていた

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