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聖夜は恋の雪に埋もれて  作者: 桜坂ゆかり
第1章 12月22日まで
7/15

ナイトパレード、そしてお食事

 鉄平君には申し訳なかったんだけど、私は「心ここにあらず」といった心境のまま、遊園地デートは進んでいった。

 そして、いつの間にか、ナイトパレードの時間となっていたようだ。

 私たちは園内歩道の片隅に陣取って、パレードの開始を待つことに。

 辺りはすっかり暗くなっている。

 私たちの周りには、たくさんの人が集まってきていた。

 もちろん、みんな、パレード目的だろう。


「いよいよだね!」

 明るく言う鉄平君に、私は「うん」と返す。

 うう……こんな心理状態のままデートを続けるなんて、鉄平君になんて酷いことをしているんだろう……。

 こうなるなら、そもそも、デートのお誘いの時点で、断っておくべきだと思った。

 それにまた、奏と瑠璃が両思いならば、どうして二人を応援してあげる気持ちになれないの……。

 私はすっかり自己嫌悪に陥った。




 そうこうしているうちに、パレードが始まったようで、私たちの目の前に、電飾で飾られた美しい車たちが姿を現す。

 周りから口々に、「綺麗~」などと声があがった。

 私も同じく、「うわぁ」と思わず声をあげる。

 それほどに、幻想的な光景だった。

「綺麗だなぁ」

 しみじみと言う鉄平君。

「うん……」

 ほんとに、言葉を失くしてしまいそうなほどに。

「パレードもだけど……麗もね……」

「えっ?!」

 びっくりして思わず、鉄平君の顔を見てしまう私。

 その顔は、電飾の光に照らされていた。

「好きだよ、麗。俺と付き合ってほしい」

「ええっ?!」

 これって……告白……?

 学校であれだけ人気者なのに、どうして私なんかに……?

 頭が混乱して、私は何も言えなかった。

 すでにパレードは、私の眼中になく……。


「いきなりすぎて、びっくりするよね、ごめん。でも、前々から好きだったんだ。一緒に来られてよかったよ」

 いつも以上の優しい表情で言う鉄平君。

「で、すぐに返事とか無理だよね。分かってるよ。考えといて」

「う、うん」

「せっかくのパレードなのに、気をそらせてしまってごめんね。うっとりと見つめる麗があまりにも可愛くて、つい……。ほら、まだまだパレードが続くから」

 鉄平君の言う通り、まだまだパレードは始まったばかりだ。

 でも……私は全然、パレードに集中できなかった。


 鉄平君のようなかっこいい男子から、「可愛い」と言われるなんて……たとえ、お世辞であっても、嬉しくないはずがない。

 だけど、それでもやはり、私は奏のことを思い出す。

 奏と瑠璃も、今どこかでパレードを見ているはず。

 私……やっぱり、奏のことが……。

 私には、奏しかいなくて。

 鉄平君には本当に申し訳ないんだけど……近いうちに、お断りしなきゃ……。


 せっかくのパレードだったのに、すっかり上の空だった。




 その後、鉄平君のバイト先だというレストラン「グラン・オルロジェ」にて、食事をした。

 告白の後も、変わらず明るく優しい態度の鉄平君。

 その優しさに触れるたび、いずれお断りしなければならないということが、私の胸に重くのしかかってきて、辛かった。


 そして、帰りは、鉄平君が家まで送ってくれることとなった。

 どこまでも優しい。


 やがて、家に到着すると、鉄平君が言った。

「今日は本当にありがとう」

「いえいえ、こちらこそ」

「その……さっきのことだけど、考えといてくれたら嬉しいよ」

 告白のことだろう。

 私は頷いた。

 断るときのことを思うと、胸が痛いけど……。

「それじゃ、な。また明日」

 そう言って手を振る鉄平君。

 私も「またね」と手を振り返すと、家へと入った。


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