ナイトパレード、そしてお食事
鉄平君には申し訳なかったんだけど、私は「心ここにあらず」といった心境のまま、遊園地デートは進んでいった。
そして、いつの間にか、ナイトパレードの時間となっていたようだ。
私たちは園内歩道の片隅に陣取って、パレードの開始を待つことに。
辺りはすっかり暗くなっている。
私たちの周りには、たくさんの人が集まってきていた。
もちろん、みんな、パレード目的だろう。
「いよいよだね!」
明るく言う鉄平君に、私は「うん」と返す。
うう……こんな心理状態のままデートを続けるなんて、鉄平君になんて酷いことをしているんだろう……。
こうなるなら、そもそも、デートのお誘いの時点で、断っておくべきだと思った。
それにまた、奏と瑠璃が両思いならば、どうして二人を応援してあげる気持ちになれないの……。
私はすっかり自己嫌悪に陥った。
そうこうしているうちに、パレードが始まったようで、私たちの目の前に、電飾で飾られた美しい車たちが姿を現す。
周りから口々に、「綺麗~」などと声があがった。
私も同じく、「うわぁ」と思わず声をあげる。
それほどに、幻想的な光景だった。
「綺麗だなぁ」
しみじみと言う鉄平君。
「うん……」
ほんとに、言葉を失くしてしまいそうなほどに。
「パレードもだけど……麗もね……」
「えっ?!」
びっくりして思わず、鉄平君の顔を見てしまう私。
その顔は、電飾の光に照らされていた。
「好きだよ、麗。俺と付き合ってほしい」
「ええっ?!」
これって……告白……?
学校であれだけ人気者なのに、どうして私なんかに……?
頭が混乱して、私は何も言えなかった。
すでにパレードは、私の眼中になく……。
「いきなりすぎて、びっくりするよね、ごめん。でも、前々から好きだったんだ。一緒に来られてよかったよ」
いつも以上の優しい表情で言う鉄平君。
「で、すぐに返事とか無理だよね。分かってるよ。考えといて」
「う、うん」
「せっかくのパレードなのに、気をそらせてしまってごめんね。うっとりと見つめる麗があまりにも可愛くて、つい……。ほら、まだまだパレードが続くから」
鉄平君の言う通り、まだまだパレードは始まったばかりだ。
でも……私は全然、パレードに集中できなかった。
鉄平君のようなかっこいい男子から、「可愛い」と言われるなんて……たとえ、お世辞であっても、嬉しくないはずがない。
だけど、それでもやはり、私は奏のことを思い出す。
奏と瑠璃も、今どこかでパレードを見ているはず。
私……やっぱり、奏のことが……。
私には、奏しかいなくて。
鉄平君には本当に申し訳ないんだけど……近いうちに、お断りしなきゃ……。
せっかくのパレードだったのに、すっかり上の空だった。
その後、鉄平君のバイト先だというレストラン「グラン・オルロジェ」にて、食事をした。
告白の後も、変わらず明るく優しい態度の鉄平君。
その優しさに触れるたび、いずれお断りしなければならないということが、私の胸に重くのしかかってきて、辛かった。
そして、帰りは、鉄平君が家まで送ってくれることとなった。
どこまでも優しい。
やがて、家に到着すると、鉄平君が言った。
「今日は本当にありがとう」
「いえいえ、こちらこそ」
「その……さっきのことだけど、考えといてくれたら嬉しいよ」
告白のことだろう。
私は頷いた。
断るときのことを思うと、胸が痛いけど……。
「それじゃ、な。また明日」
そう言って手を振る鉄平君。
私も「またね」と手を振り返すと、家へと入った。