表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖夜は恋の雪に埋もれて  作者: 桜坂ゆかり
第1章 12月22日まで
5/15

お誘い

 翌朝、奏と二人でいつも通り登校した。

 奏の様子が全然変わっていなくて、ちょっとだけ安心する私。

 瑠璃との関係に変化があったのかなぁ、とか、私は勝手に心配していたから。


 学校に着いてしばらくすると、瑠璃が教室に入ってきて、挨拶を交わしたけど、瑠璃の様子は少し違うようだ。

 いつもテンション高めではあるけど、なぜか今日はそのテンションがいつも以上に高いみたい。

 理由は分からないけど、「嬉しさを抑えるのに一苦労」といった様子。

 すぐに私は聞いてみた。


「昨日は、ほんとにありがとうね。で、どうしたの? 何かいいことあった?」

「ふっふっふ。あったけど内緒」


 まさか、ほんとに、奏と何かあった?

 心配で心配で、しょうがなくなる。

 でも……奏と私は幼馴染ってだけだから、もし二人が良い関係になったとしても、抗議したり文句を言ったりする権利はない。

 瑠璃も私の大事な親友だから、むしろ祝福するぐらいの気持ちでないといけないって思うから。

 でも……でも…………。


「え~、教えてよ~」

 私が追及すると、瑠璃は「いずれ分かるから。少なくとも、クリスマスイブには教えるよ。今はワケあって話せないだけ」と、笑みを隠し切れない様子で言った。

 何なんだろう……。

 ほんとに気になる……。

 しかしそれ以上は何も聞き出せないまま、お昼休みまで、特に何事もなく過ぎた。




 お昼休み、前の席の松嶋さんが、仲良しのクラスメイトに「モカショコランド行ってきたよ~。ナイトパレード最高!」と言ったとき、私は思い出した。

 そうだ、奏を遊園地に誘わないと。


「ねえ、今週末、遊園地に行かない? 今、期間限定のパレードをやってるみたいだから。予定あいてるかな?」

 奏の席まで行って、私は声をかけた。

 すると……。

 奏はすぐに答えてくれたんだけど、その直前、ほんの一瞬、奏の身体がピクリと動いたのが気になった。

 よくよく見ていないと気づけないほどの、些細なことだけど、私たちはかれこれ13年以上の付き合いだから、すぐ分かる。

「ごめん、今週末はちょっと無理だ。また今度でもいい?」

「そっか、予定が入っているなら仕方ないね。こちらこそ、突然誘ってごめんね」

「気にするなって。今度、行こう。土日で予定あいてる日をまた調べておくから。たしかあのパレードって、今月いっぱいやってるんだったよな?」

 そうだっけ。

 奏が近くにいたクラスメイトに聞いて確認してくれたところ、どうやら奏の言うとおり、12月いっぱいはパレードをやっているみたいだった。

「またこっちから誘うよ。ほんと、ごめんな」

「ううん、気にしないで」

 何度も謝ってくれる奏に、逆にこっちが申し訳なくなってくる。

 今週末に行けないのは残念だけど、今月中には一緒に行けるみたいで、心がうきうきした。

 でも……。

 二人でロマンチックなパレードを見に行くってこと、奏は何も思わないのかな。

 やっぱり、奏にとっての私は、単なる幼馴染で、恋愛対象にはなりっこないかもしれないんだということを、改めて感じさせられた。

 少し……切ない。


 そこへ、お手洗いから帰ってきた瑠璃が、教室に戻ってきたので、私は奏に「じゃあね」と言ったあと、自分の席へ戻った。

 いつも私の席で、瑠璃や他の友達と一緒に、お弁当を食べているから。

 ほんとは奏とも一緒に食べたいんだけど、奏はよく仲良しの男子と一緒に食べていて、誘う勇気がなくて……。




「瑠璃、今週末また一緒にカラオケでもどう?」

 瑠璃とはしょっちゅうカラオケへ行っているので、いつも通りの感じで聞いてみた。

 今週末は奏とも遊べず、バイトもないし、暇だから。

「土曜は無理だけど、日曜はオッケー! またカラオケへ行こう行こう!」

 瑠璃は、嬉々とした様子で答えてくれる。

 日曜、また楽しみ!


 その後、私たちはいつも通りに、一緒にお弁当を食べた。




 お昼休みも残り僅かというところで、鹿里君が私の席までやって来た。

「上園、こないだの約束、覚えてる?」

 あ、もしかして、お食事に連れていってくれるっていう、あれかな。

「お食事のこと?」

「そう、それ。俺のバイト先のお店でね」

 笑顔で鹿里君は続ける。

「でね。ついでって言っちゃ、何だけど、遊園地のパレードを見に行かない? 今、大評判でしょ」

「えっ、私と二人で?」

 びっくり。

 まさか、鹿里君から誘われるなんて、思わなかった。

「俺と二人じゃ、嫌? 一人で見に行くのも寂しいから、一緒にって思ったんだけど……」

 少し切なそうな様子になる鹿里君。

 でも……二人で行くのなら、奏がいい……。

「あ、うん……」

 私は口ごもる。

 すると、鹿里君は見るからにしょげた様子だ。

「迷惑だよね、突然ごめん……。もし、嫌なら、お食事だけでも……」

「えっと、そんな迷惑なんかじゃ……。じゃあ、遊園地も行こっか」

 鹿里君の落胆しきった様子を見ていられなくて、私は言った。

 すると、途端に表情が明るくなる鹿里君。

「いいの? やった! じゃあ、今度の土曜は、どう?」

 土曜は何も予定がないし、大丈夫。

 奏にも断られちゃったし、瑠璃もその日は忙しいって言うし。

「うん、大丈夫」

 私が答える。

「じゃ、決まりだね」

 明るく鹿里君がそう言ったところで、チャイムが鳴った。

 そして、瑠璃たちクラスメイトが続々と教室に戻ってくる。

「詳しい時間は、またあとで連絡するね」

 鹿里君はそう言うと、自分の席へと戻っていった。


 その後、メアドを交換した鹿里君と私。

 土曜のお出かけについて相談し、待ち合わせ時間と場所を決めた。

 まさか、奏以外の男子と二人っきりでデートするなんて……。

 でも、鹿里君だって、私を誘うことにそんなに深い意味はないと思うから、大丈夫かな。

 あんなにクラスの女子から大人気なんだし、私なんかを特別に誘ってくれたわけでもないと思うし。

 実際、瑠璃だって、こないだお食事に誘われていたからね。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ