私
生まれてきて15年、親と家で暮らしたのは5歳の頃まで。
私の家族はどこにでもいる普通の家族でパパとママと私、そして私が10歳の頃に生まれた妹の4人家族。
私は5歳の頃、病気になってからずっと病院にいる。
病気は、一定の時間間隔で薬を投与しなければ、重い病気のリスクが一気に高まり死んでしまうというもの。
その話を聞いてパパとママはすごく泣いてた。ママなんかずっと私を抱きしめて泣いていた。
そんなのはもう昔の話で、もう今は病院には来なくなった。
5年前、妹が生まれてからママは私のことを忘れてしまった。
”ママは疲れてしまったんだ。”
パパは電話口で私にそう言って、
”ごめんな、香夜子。お見舞いにもほとんどいけなくなっちゃうんだ。”
辛そうに告げたパパに対して嫌だなんて言えなくて
”だいじょぶだよパパ。かやこ、はやくびょうきなおすね”
なんて強がっていいこぶって、その晩は一晩中布団の中で泣いたのを覚えている。
病気は一向によくなる気配がない。
普通に健康な子で生まれて来れたらよかったのに、なんてちょっとでも贅沢なことを願ったのがいけなかったのだろうか。
私の人生は15歳の誕生日を迎えたその日に大きく揺すぶられていったのだ。