8話 グラッドと子供たち
グラッド視点のお話です。
「時間かかりそうだな……暇だな。ま、いいか。たまにはこんな日も」
ボーっと上を見上げ空を見る。天気が良い。
路地を見ると、子供3人が楽しそうに魔法を使って水の球体を飛ばしてかけあい遊んでいる。
「おい、お前ら。魔法を使ったら危ないだろ?」
「だいじょーぶだよーだっ。にーちゃんも食らえ!」
バシャァッ! と水をもろにかかる。不意打ちとは卑怯だな。
「うわっ」
「わーい! 当たったー!」
きゃっきゃっ。と喜ぶ子供たちの笑い声。
「やったなー? 俺を本気にさせると酷い目にあうぞー! 捕まえてやる!!」
「わー! にーちゃんがきたー!」
「にげろー!」
鬼ごっこで遊んでいた時だった。店から、おばあさんが出てきた。
「おやおや。元気が良いねぇ。」
「ばーちゃんだー! まほう、できるようになったよ!」
「ほかのまほう、おしえてー!」
「また今度教えてあげるよ。それより、お兄さん?」
「はい?」
「お兄さんの恋人が倒れたから、お家へ送ってあげなさい」
「ミイナ!」
慌てて店の中に入りミイナを抱きかかえる。
「おや。よっぽど大事なんだねぇ。大丈夫。寝ているだけさ。その本が、お嬢さんに知識を与える儀式の為にね」
「儀式って……本が選んだのか?」
本の儀式は、意思がある本でないと出来ない。
意思のある本は、後継者を探し求め見つけた者に、その知識、全てを与えるという。与えられた者は、大いなる魔法使いになると伝えられている。
……ミイナが、本に選ばれた……? 魔法のまの字も知らなかったミイナが……?
「そうだよ。この本の後継者は100年ぶりだねぇ。面白くなるよ。ひっひ」
「……おばあさん、歳いくつなんだ?」
おばあさんは笑顔のまま、人差し指を上にあげる。人差し指から小さな火が灯り答えた。
「ひっひ……。レディに年齢を聞くなんてねぇ。消し炭にされたいのかい?」
「……すみません」
「わかればいいんだよ。ほら、彼女をお家に連れて行きなさい」
「はい」
大いなる魔法使い……か。ミイナがなるのか?
確かに、大いなる魔法使いは変な奴ばっかりらしい。
ミイナがなっても何ら疑問にはならないが……。
そもそも、魔法を覚えたいなんて冒険者でもなりたいのだろうか?
危険な事はさせたくない。お父さんは反対だ。俺は父親じゃないが。
そんなことを考えつつギルドに帰ってきた。
アリシアに、これでもかというくらい怒られたが、俺のせいではない。本のせいだ。