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5話 ギルドの受付嬢アリシア

 歩くこと10分。アクアマリンの入り口に着いた。

 ……疲れた。こんなに歩くのは久しぶりだ。ああ、もう寝たい。10時間くらい。途中、おんぶしてやろうか? と聞かれたが断固拒否した。


 アクアマリンは、かなり大きな湖に浮かんだ街だ。

床は白いタイルと青いタイルが目立っている。風呂で見たことあるような気がする。

こんな大きな街なのに、どうやって浮かんでいるのかと聞くと巨大な魔法石を

下に埋め込んでいるらしい。

潜って見るとわかるそうだが、人は水に浮かないからな。無理な話だ。


 外は、水に囲まれていて入り口に大きな橋がかけてある。

入り口以外は、高い壁に囲まれていて出入り出来ないようになっているらしいが……時々、その壁を乗り越えていく泥棒が居るらしい。どんな奴か見てみたい。


 100年前の戦争で大いに本領を発揮した。と説明していたが話が長くなりそうなので止めさせた。


「にしても……ここはコスプレイベントでもやっているのか?」


 アクアマリンの人々は、殆どが騎士の格好をしていたり魔法使いの格好、戦士の格好をしている。

中には魔法使いっぽい奴が高そうな杖を持っている。いくらするんだ、アレは。


「いや、何もやってないぞ? ほら、着いたぞ」


 大きな木材の建物に看板が付いていて『冒険者ギルド』と書かれている。

やっと着いたか……。もう15分歩いた。死ぬかと思った。歩くのが面倒だ。はやく寝たい。


 中に入ると、目の前には受付嬢らしき人が居て左にはボードがあり、右には丸い机が5つ。冒険者らしき人々が立ったまま飲食をしている。

 その内の気さくそうなヒゲを生やした男が、こちらに気づき近づいてきた。


「おう、グラッド! 依頼終わったのか?」

「ああ。リードは先に終わっていたんだな」

「ん? なんだぁ~? その娘は。彼女かぁ?」

 リードは、にやにやしながら、からかった。

グラッドは、動揺する様子もなく答える。


「いや、違う。迷子になってた所を保護したんだ。人探しの依頼を見に来た」

「ふーん、そうか。嬢ちゃん、親に会えるといいな」

 ミイナを見てニカッと笑い頭を撫でようと手を伸ばしてきたが、ミイナはスッと避けてグラッドの背後にまわりながら答えた。


「別に会えなくてもいいがな」

「親が可愛そうだろ。今頃、心配してるぞ?」

「そうだぞ、嬢ちゃん。親に心配かけちゃいけねぇ」

 グラッドは諭すように声をかけ、それに同調するようにリードも言ってきた。


「心配してるかもしれないが、僕は帰るつもりはない」

「どうして、そう思うんだ?」

 グラッドは心配そうな顔をしている。一方ミイナは、むすっとした顔でキッパリと言い放つ。


「君に教える必要はない」

「そうか」


 困ったような笑みを浮かべたと思ったら、グラッドは受付嬢の所へ向かった。とりあえず僕は付いていく。どこかへ行こうとすると腕を掴まれるからな。

 リードはというと、それを聞いた後、何も言わずに、丸い机の方へ行き、他の仲間と酒を飲み始めた。


「人探しの依頼に、この子は居ないだろうか?」


 何かの紙を整頓していた受付嬢は顔をあげてグラッドを見た。

 四角い黒いメガネをかけていて、知的な印象を放つ大人の女性。

ゆるいウェーブがかかった肩につくくらいの茶色の髪が美しい。

 スラリとしたウエスト、足。たわわに実った大きな胸。そして背が高い。

見る者を全てを魅了させるような美人である。


「人探しの依頼ですね」

 そう義務的な答えをしているのにもかかわらず、その声は惹きつけられる魅力をもっていた。

 ミイナは相手は同姓だと言うのに思わず見とれていると、その受付嬢と目が合った。

 ──その瞬間、受付嬢は知的な口調から一変した。


「び、美少女! か、可愛い!! 何この子!? グラッド!! どこから誘拐してきたの!!!」


 受付嬢は、はぁはぁ言っている。今までのあの印象はどこへやら。ミイナはドン引きした。


「はぁはぁ。そ、その黒くて長い綺麗な髪の毛、触っていい? その後、一緒にご飯食べましょう? パフェご馳走するから!!」

 受付嬢は、ミイナに手を向け、わきわきと動かしながら口説いてくる。

「全力で拒否する」

「アリシア、止めろ。落ち着け。仕事をしてくれ」

 アリシアという名らしい受付嬢は深呼吸してから、咳払いをひとつ。


「……失礼しました。少々お待ちください」

 と言って、ipadと同じ大きさの板らしきものを取り出し

「こちらに手を置いてください」

 意味がわからない。罠かもしれないと警戒し何もしないでいると、グラッドが「大丈夫だ」と言うので恐る恐る手を置いてみた。

 すると『捜索依頼はありません』と青い光で表示した。


「無いみたいですね……。ギルドが無い所なのかしら……?」

「ギルドが無くても騎士に言えば騎士が登録させるはずなんだが……何かあったのだろうか?」


 2人が、どうしたものかと悩んでいる中、割り込むようにミイナ言った。

「僕は、それよりも早く寝たい」


 すると、アリシアは興奮しながら

「それなら、お姉さんのベッドが空いてるわよ! そこで寝なさい! ねっ? 後でお姉さんが添い寝してあげるから!!」

「断固拒否する」

「うん、止めた方がいいぞ。何されるかわからないからな。

ギルドのだが、カギ付きの宿とってやるから待ってろ」

「失礼ねー。許可が無ければ何もしないわよ」

 アリシアはそう言いながら、メガネをくいっと上げた。

 グラッドは宿屋担当っぽい隣の受付嬢と話し始めた。


 ……この受付嬢と2人きりにするな。怖い。

 そう考えながら、腕を組み、アリシアと目を合わせずにいた。

 アリシアは、ミイナの顔を覗き込み話しかける。


「お姉さんね、アリシアって言うの。貴方の名前は?」

「……ミイナ」

「ミイナちゃんね……! よぉーく覚えておくわ。うふ、うふふふふ」


 怖い。怖いよ。なにこの人。


「待たせて悪かったな。3階の15番が泊まる部屋だから、ゆっくり寝ると良い」

「遅いぞ! バカ!!」


 グラッドに案内された。ギルド内、丸い机を通り過ぎ奥の階段を上り

3階の手前から5番目、15番と書かれたのドアの前に着いた。


「カギ渡しておくから。ちゃんとチェーンかけておけよ。

アリシアは予備のカギ使って入るかもしれないからな。

じゃ、明日7時頃に1階に来てくれ。朝ごはん食べたら情報収集しよう」

「わかった」


 カギを渡され、グラッドは僕に背を向け歩いていく。世話好きな奴だ。

僕を助けてくれて、捜索依頼を探して宿まで用意してくれて……。

……お礼を言わなければ……。


「……待て」

「ん?」

「……あ……」

「あ?」

「……ありがとう。」


 僕は逃げるように部屋に入ってカギとチェーンを閉めた。

グラッドの小さな笑い声が聞こえたような気がしたが知るもんか。

 とにかく、寝るんだ。明日は早いらしいしな。ベッドに入り、ふと思い出した。

 ……そういえば、魔法みせてもらうの忘れたな。今日は疲れた……明日でいいや……。

 ミイナは泥のように眠りについた。

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