4話 アクアマリンへ行こう。
口論になった末、コスプレ男は護衛になってしまった。
面倒だな……人と関わるなんて何年ぶりだ?……5年ぶりか。
はぁ……人と関わるのが苦手だというのに……。
先制攻撃をしたつもりだが足りなかったのか? 僕に多少の怯えが見えたと言うことなのか?
「ところで、お前の名前は?」
「ミイナ」
「ミイナか。可愛い名前だな」
グラッドは爽やかな笑顔をミイナに向けた後、ミイナに背を向けて歩き出した。
何を言ってるんだ、こいつは。いや、名前が、だ。落ち着け。
今まで言われたことがない言葉だがお世辞だ。とりあえず1発殴っておこう。
拳を作り、その背中に向けて殴った。
ゴスッ。と鈍い音がし、ミイナの手はジンジンと痛くなった。
「いでっ! なんだ??」
殴られた背中を触りながら訳がわからない表情で、こちらを見つめてくる。
「……コスプレ男の分際で生意気だからだ。」
むすっとした表情で、ミイナはそう言うとグラッドから目を逸らした。
「言ってる事がよくわからん。それと俺の名前はグラッドだ。コスプレ男と呼ばないでくれ。で、いい加減、家はどこか教えてもらえないか? 送れないだろ」
「崖から飛び降りたら、何故か川に落ちたんだ。家がどこかもわからないな」
6年も外出しないで居ると近所の道すら、わからなくなるものだ。
今までは道を覚える必要などなかったからな。
「移転魔法か。誰かがそこに設置していたんだろう。場所指定に失敗したようだが死ななくて良かったな。……そうだな……人探しの依頼があるかもしれないな。アクアマリンの冒険者ギルドに行こうか」
グラッドは真面目に言っているが……こいつは本当に大丈夫なのだろうか?
病院に行った方が良いと思うが……まさかとは思うが、ここは異世界なのか?
……いや、こんな性格の悪い主人公が異世界に来たなんてありえないだろう。
ちょっと試してみるか。
「グラッド。魔法とやらを使ってみろ」
「魔法を見たことが無いのか?悪いな。俺は魔法が使えないんだ。ギルドに魔法使いがいるから頼んでみるよ」
うん? 本当に? 魔法が存在するのか?……少しだけ期待しておこう。
マジックでしたーなんて展開があるからな。
「……どこへ行くんだ?」
「聞いてなかったのか? アクアマリン。大きな街だよ。ほら、見えるだろ?」
グラッドが指差した方向には、大きな池に浮かんだ街だった。
ファンタジーなにおいがした。
ようやく異世界なのか?と思い始めたミイナさんでした。
コスプレ男と呼ばれるのを止めてもらえて良かったね、グラッドさん。
一方、私は登場キャラが崩れてないか冷や冷やしております(汗)