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23話 暗黒期

 青い鳥。それは、100年前に遡る……。暗黒期。と言われているそうだ。

 魔王が復活し、空は黒く染まり、魔物が大量発生した。

 魔物たちは、次々と色んな町に襲い掛かり……

町は、人骨だけしかない町と化したり

燃え尽きて、何もなくなっていたり……。

 毒の霧に冒され苦しみながら死に行く者たちもいた。


 唯一、残ったのは、大きな都市『アクアマリン』

 そして、三大都市『雪の森、スノーホワイト』『光の城、オロール』『幻の桜、マリア』。

 この4つの都市は、勇者が魔王を倒すまで全滅することがなかった。


 どうやって守ったか、というのは伝説として、

その街の国王のみが書物で知っているものなので、

アクアマリン、スノーホワイト、オロールの伝説は、マリアの者は詳しく知らないし説明も出来ないらしい。


 唯一、知っているのは、召喚士の「全ての都市が絶滅するぞ!」という発言。

 きっと、召喚獣が他の3つの街で守ったのだろう。と言う話だとか。


 それはさておき、マリアの100年前の話に遡る。


 マリアは、壊滅寸前まで来ていた。

 民と御子は、枯れてしまった大きな桜の木の隠し扉から中に入り、

民たちは皆、怯えていた。

 魔物は、どんなに忍者が倒せど隊列をなして、どこからかやってくる。

 御子の特別な未来を見る能力で、どこから魔物が来るのかは、わかっていた。

だが、数が多い。あそこから来るとわかっていても、

忍者の数よりも遥かに多いその魔物たちは、優れた忍者たちの数を、少しずつ減らしていった。


 民は、号泣する者、パニックで叫ぶ者、暴れだす者……。

完全に、絶望感に支配されていた。御子は叫んだ。


「皆さん! 諦めてはなりません! もうすぐです。もうすぐ神の使いが助けにやってきます!」


 その声で、暴れることは無くなったが絶望に満ちた表情は変わらなかった。


「御子様はそう言うが、我々はもうダメだ。我々は、奴らに殺される……」


 民たちは口々にそう言っていた。

 ……そんな時だった。「キュイ~~~~~!」という小鳥の声。

 忍者たちは、その声を聞くや否や、直ぐにその場を離れた。

 大きな音を立てる突風。

竜巻がいくつも作り出され魔物たち全てを細切れし、次第に粉と化す。


 戦闘が収まり、静まり返ったマリア。

 そこに、遠くから大きな黒い狼が走ってくる。

「……敵か?」忍者たちは警戒し刀を構える。


 よく見ると、狼の上に少年が乗っていた。少年は叫ぶ。


「おい! 早く俺に飯を寄越せ! じゃないと全ての都市が絶滅すんぞ!!」


 忍者は冷たい視線で答える。


「偉そうな奴だ。貴様なんかに食べ物を与える訳がないだろう。助けてくれたのはこの鳥だ。お前ではない」


「だーっ! お前ら忍者か? 頭固くてダメだ! 話の通じる奴はいないのか!?」


 そう少年と忍者が口論している時に、御子がやってきた。

忍者は驚いて叫んだ。


「御子様! 早く中へお入りください!!」


「静まりなさい。……トウマ様、来てくださり、ありがとうございます。

民の皆さん、この方に、暖かい食事を与えてください。それこそがマリアを守る術なのです」


 御子は、トウマに頭を下げてから、民にそう言い付け、トウマを桜の木の中へと案内する。

民たちは、慌てて料理を作り、トウマに食事を与えた。

 トウマは、あり得ない速度で、食事を食べると


「足りない! もっと寄越せ!」


 と言う。民は慌てて、何度も食事を作った。

食品がもう残り少ししかない。という所でトウマは満腹になり外へ出る。

 民たちは思う。俺たちが餓死しそうだ……。と。


 食事を終え外へ出たトウマは、上を見上げ、

木の枝に止まっていた小鳥に向かって手を差し出す。

小鳥は、トウマの元へ行き手にとまった。


「いいか、エアリー。ここでお前は待機だ。ここ絶対守れ。……サボるなよ?」


「相変わらず、失礼な奴ね。あたしがサボるとでも思っているの?

さっさと、魔王倒しに行きなさいな。その間、契約解除するから。自由にさせてもらうわよ?」


「あー、はいはい。失礼しました。ありがとな、エアリー」


「ふん。感謝されるような事はしてないわ。あたしは自分の意思でそう決めたのよ。

あんたなんか、必要ないわ……」


 エアリーは、ぷいっとそっぽをむいてそう言った。

……どこか、悲しそうな雰囲気を出しながら。


「帰ってくるから。大丈夫だって」


 そう言って、笑いエアリーの頭を、ぽんぽんと叩くように撫でるトウマ。

 エアリーは、顔が赤くなる。そして一言。


「死ね。消えろ変態」


「んだよ。わかりましたよ。消えますよ。行くぞ、クロード」


 黒い狼は大きく頷き、伏せをする。その上にトウマは乗って走り去った。

エアリーは、その背中を無言で見つめる。どこか、寂しそうに。


 その後からは、魔物が来ても平気だった。

 ほとんどの魔物を、エアリーが風魔法で倒し、忍者は余った魔物を倒す。

 時々、エアリーが忍者にかける黄緑色のオーラは、忍者の戦う速度を上昇させ

無敵と言って良いほどの強さを発揮した。


 その数時間後、黒い空は晴れて魔物が来なくなった。

 忍者たちは、刀を天に掲げ勝どきを上げ、エアリーは、桜の木の周りを舞い飛ぶ。喜んでいるかのように。

 次第に、桜の木は黄緑色の光を放ち、桜の花が咲き誇った。

散り行く桜の花びら。御子は、中から出てきて、涙目でエアリーに声をかける。


「エアリー様、ありがとうございます。貴方様のお陰で皆さんが無事でした」


 御子は、深々とお辞儀をした後、両手を上げる。

エアリーは微笑んで、御子の傍へ……。





「……と言うのが、このマリアの伝説でございます」


「そんな話があったんですね……知りませんでした」


 グラッドは感慨深い顔をして敬語で答え、納得していた。

一方、ミイナは、もの凄く不機嫌な顔で


「長い!」


「お、おい。ミイナ。だからこの方は……」


「グラッド様、いいのです。召喚士様には、御子は仕えるものだと言いつけられております」


「で、僕はどうしろと? 生憎、そのエアリーは召喚できないぞ。契約してないからな」


「そうですか……。では、今度、契約なさったら召喚なさってくださいませ」


「わかった。そうする。じゃあな」


「お、おい。ミイナ待て。御子様、失礼しました」


 ミイナとグラッドは神社から出て、その場を離れようとする。

 御子は慌てて、ミイナの後を追いかけてきた。

背中を向けているミイナに向かって


「召喚士様! 待ってください。召喚士様には特別待遇にさせていただき……」


 させていただきます。どうぞ、こちらへ。と御子が言おうとした時。


「そんなのは、いらない」


 と、ミイナは、キッパリと断った。


「何故そのようなことを?」


「僕は、普通の冒険者として行動したいんだ。特別待遇なんていらない」


「……そうですか。わかりました。失礼な事を言ってばかりで申し訳ありません。

もし、何かに行き詰まり困ったことがございましたら、未来を視ますゆえ、お申しつけて下さいませ」


「それもない。未来を視るのはつまらないからな。もう帰るぞ。疲れたし眠い」


「はい、お休みなさいませ。召喚士様」


 御子は、深々と頭を下げてから、ミイナとグラッドの去る背中を見送り、大きな桜の木を見る。


「……神様、召喚士様とグラッド様に加護があらんことを……」


 両手を合わせ、そう言うと……ザァァッと強めの風が吹いた。




 ミイナとグラッドがギルドに戻ると、どんちゃん騒ぎは静まっていた。

腹踊りしていた男は、酔いつぶれて寝ていた。

 冒険者の1人が酔いつぶれた奴の両足を掴みずるずると引きずっていった。


 やっと仕事が終わった。とタバコを吸い休憩していた料理人の若い男にグラッドは声をかける。


「すまん、ディール。簡単なもので良いから作ってもらえるか?」


 コワモテな顔をした若い男、ディールは、

ギロリと睨みつけたがグラッドの顔を見ると睨むのを止めた。


「あん? ……グラッドか。しゃーねーな。ちょっと待ってろ」


「2人分よろしく頼む」


「連れがいるのか? ……おー、おー、彼女か。いいぜ、作ってやる」


 にやにや笑うディール。グラッドから視線を逸らしタバコをくわえたまま

フライパンを手に取った。


「言っておくが、彼女じゃない」


 ご飯を炒めながら、ディールは、はっ。と笑った。


「わーかってるよ。お前が彼女作るわきゃないよな。ほらよ。2人分」


 ドンッ。と受付の机に置く2つの半熟のデミグラスがかかったオムライス。


「ありがとな」


 グラッドは、ミイナの分と自分の分を右手と左手で持ち、近くの机に置く。

遅い夕飯となったが、もくもくと2人で食べ始めた。

 そんなところへ、ディールが来た。


「どうぞ、お嬢さん。デザートのチョコバナナスペシャルパフェだ」


 にかっ。と爽やかな笑みを浮かべるが、コワモテな顔のせいで怖い。

 ミイナは、一言も喋らず、オムライスを食べる。


「おい、ミイナが怖がってるだろ。止めろ」


「んだと? こんなに爽やかな笑みをしているってのにか? マジかよ!

怖がらないでくれよ。オレだってこんな顔してるが良い奴なんだぜ?」


「普通、自分で言うか? ……ミイナ。こいつは、口は悪いが良い奴だから大丈夫だ」


 ミイナはオムライスを全て食べ終わった後。


「……ふん、僕が大食いだと思ったか? そんなものはいらない。

それに、僕は怖がってなんかない。僕は眠いんだ。もう帰らせてもらうぞ」


 立ち上がり、スタスタと早足で部屋へと向かうミイナ。

 ディールと、グラッドは、ミイナが去るまで見守った後。


「……アイツ、怖がってたよな?」


「ああ。確かに、ミイナはお前に対して怖がってたぞ」


「可愛いな」


「だからって手出したら、ぶん殴るからな?」


「お前、もしかしてアイツのこと好……」


「保護者だ!」


 グラッドの怒鳴る声が静かなギルド内に響いた。


「あー、わーかってるって。お前はホントからかうと、おもしれぇなー。はははっ」


 と言うだけ言って、ディールは笑いながら逃げていった。

 グラッドは、ため息をついて「俺も寝るか……」と呟いて、部屋に向かっていった。

 マリア滞在1日目が終わった。

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