18話 リードと、マリア
僕たちがギルドに帰還する。
ギルドの窓を見ると、真っ暗だ。あっちへ行ったのは昼ごろだったはずなのに。思ったより時間がかかるらしい。
そんな事を考えてたら「うおっ!」と驚く男性の声が聞こえた。
声のする方向を見ると、どこかで見覚えがある。
……誰だったっけか?
「な、なんだぁ? グラッドじゃねぇか。いきなり扉から出てきやがって……」
「ん? ……あぁ、リードか。久しぶりだな」
ああ、リードか。僕が始めてギルドに来た時に、グラッドに絡んで来た男。
「へっへ。ちょっと遠出しててよ」
「どこへ行ったんだ?」
「荷物を届けに『マリア』まで行ったんだよ。相変わらず桜が綺麗だった」
「そうか。『マリア』に行ったのか。土産は無いのか?」
「無いに決まってるだろ? お前は余裕で行けるじゃねーか。
……ああ、そういえばオレがいない間にパーティ入ったんだって? そこの嬢ちゃんと」
リードは、にやにや笑みを浮かべながら僕とグラッドを見つめている。
「……おい、リード。ミイナは彼女とかじゃないからな? 保護者になってるだけだ」
グラッドは、そう答えた。
すると、リードは、グラッドの肩を慰めるように、ぽんぽんと叩いて耳打ちをする。
「そんな事、言ったってよ。オレァ、わかってるぜ? こんな若い子と一緒に夜な夜な……」
「おい。リード?」
グラッドは、両手で、リードの両肩を掴んだ。顔は笑っているが、目が笑っていない。
「あーあ。わかったって。まったく、お前は性欲っつーもんがねーのか?
お前に彼女というものが居る時なんか見たことねぇ」
「俺に、彼女なんか作る資格ないからな。別にいなくてもいい」
「……お前、未だに引きずってんのか? 過去は過去だろ。もう良いじゃねぇか」
「……過去は過去なんて片付けられる訳が無いだろ。俺の罪だ。それは一生消えることがない」
「……はぁー。まぁ、いいさ。何度言ったってダメだろうしな。オレはもう寝る。またな」
やれやれ、とリードはお手上げして、その場を去っていく。
グラッドは、今まで、パーティを組まなかったり、彼女を作る資格がないとか言う。
重い訳ありのようだな。本人が言うまで聞くつもりはないが。
リードは、僕の前を通り過ぎる時に小さな声で
「グラッドを宜しく頼む。変えられるのはお前だけかもな」
と、言ってきた。そんな重そうな過去をどうにかするなんて無理に決まってるだろ。
僕に過度の期待をするな。
それで、出来なかったら文句言うんだろ。かったるい。
「ああ、おやすみ」
「おやすみなさい」
グラッドと、リードの話が終わった所ので食堂で食べ物を注文する。今日は、グラタンを頼んだ。
昼ごはんを飛ばして晩御飯になってしまった。不思議なことに、あっちへ居た時はお腹が空かなかった。何故だろう。
2人で食事しながら、僕は、さっきの話で疑問に思ったことを聞いてみた。
「グラッド。『マリア』とは何だ? 街なのか?」
「ああ、街だよ。3国の中にある国だ。……と、いっても……『オロール』や、『スノーホワイト』より田舎だが」
「ほう……。どういう街なんだ?」
「着物、という変わった服があってな。戦えない街娘たちや、店屋の男たちのみ、それを着ている。
食べ物は、一風変わった和菓子ってものがあってな。それが花の形をしていて綺麗なんだ。でも食べれるんだぞ?
漬物は……あんまり美味しくないが……和食って奴は見事なバランスでうまいんだ」
なるほどな。日本と同じだと思って良いようだ。漬物、苦手なのか。僕もだが。
「それに、常に散ってはいるんだが咲き誇る枯れない大きな幻桜が中心にあってな……。
あれを見ながらだんごを食べるのが最高なんだ」
「幻桜で花見か。見てみたい。そこへ行くぞ」
「お、おい。お前は、まだ冒険者素人なんだぞ?
道中、危険な目に会うやもしれないのに素人のミイナが対処なんかできないだろ」
「僕を誰だと思っている? 将来ビックになる僕が、いつまでもアクアマリンに留まる訳が無いだろう」
「だからといって、まだちゃんとした仕事もしていないのに行かせる訳にはいかない」
「だったら、僕1人で行くまでだ」
「……はぁ。わかったよ。何を言ってもお前は行くと決めたら行くんだな。仕方ない……マリアに連れてくよ」
よし。明日は、マリアに行こう。もう3人も召喚獣がいるし、きっと平気だろう。
そうと決まったら、明日に備えて今日はもう寝よう。とても眠い。戦闘したせいだろうか?
「じゃあ、僕は明日に備えて寝ることにする。おやすみなさい」
「おやすみ。俺は明日の準備してから寝るよ」
3階の手前から5番目の、いつもの部屋に入る。
黒猫ローブを脱ぎ、部屋にある寝巻きローブに着替えてベッドに入る。
ボーっと、天井を見つめて……いつのまにか寝た。




