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17話 炎と水の戦い

 中に入ると、暑さでギルドと、こちらの温度差に体が追いつかず、頭がくらくらする。


「なんでっ……なんで来てくれないの……! ミイナのバカァァァアッ!!」


 アリスは涙目で大声を出して、炎をあちらこちらに振り撒いている。るんの家具が燃えていく……。

 「あぁぁ……」と、るんが涙目で呟いた。


「……『水よ。我が命に従い、我が元に来い』」


 青い魔方陣が現れ、水が噴出し人影が現れる。


「ご主人様、お呼びでしょうか」


 しずくは、そう言って僕に向かって、ひざまづいた。


「あいつを何とかしてくれ」


 ミイナは不機嫌な顔で、アリスに指を指した。


「畏まりました」


 しずくは、手のひらで、水の大きな丸い塊を作り出し、ふーっと息を吹きかける。

 アリスの頭の上まで移動させて、パンッと手を叩いた。


 バシャァァンッ。アリスはビショ濡れになる。


「きゃぁ! み、水! るん! なにしやがるんですの!! ……あ」


 アリスは、腕を組んだ僕と、メイド立ちしている、しずくに気が付いた。


「しずく! 貴方っ……! いつの間に契約したんですの!?」


「昨日です」


 しずくは、そう答えて微笑んだ。


「なんですって!? あ、あんな偽善者が先に契約するだなんて……! るん! どういうことですの!!」


 アリスは、るんを睨む。るんはミイナの後ろに隠れて


「だって、頼んでもアリスは戦って勝ったら契約するって言い張るから、

ご飯でもいいよって言ってくれた、しずくにお願いしたんだもん!」


「るんが戦えばよい話ですわ!」


「るんは戦うのできないもん! 回復しか出来ないもん!」


「しずく以外に契約なさいな!」


「無理だったのー!!」


「ムキーーーー!!」


 アリスは地団駄を踏んで悔しがっている。そんなに、しずくに先に契約された事が嫌なのか。


「偽善者とは……酷いですね。そんな風に見えますか?」


「淡々と喋るアンタがムカつくんですの! 前の主人が貴方ばかり構って……!!」


 アリスは、わなわなと怒りに震えながら、しずくに指を指した。


「……それ、嫉妬ですよね? 主に前の主人が構って貰えなかったから、私怒ってるのよって感じですね」


「ち、違うますわ! もう、いいですの! 戦いますわよ!」


 あからさまに動揺して『違うますわ』とか言っている。そういうことか。

 どうやら、戦闘モードに入ったらしい。

 赤く光った。本来の姿に戻るようだ。アリスはどんな姿なのだろうか。

 ……九尾の狐。金色の毛並みは美しく、大きな体は恐怖を覚える。

睨んではいないだろうが、睨まれているような感じがする。


 しずくも、青く光り水竜になる。


「ご主人様。今回は、指示なしでも勝手に動くように致しますのでご心配なさらないで下さい」


「ああ、宜しく頼む」


「絶対! 勝ってみせるんだからぁぁっ!! 『火炎』」


 ボッ、ボッと、サッカーボールほどの大きさの火の玉が現れ、ぐるぐると回っている。


「行きなさい!」


 アリスが指示を出す人物は、しずく。生き物のように火の玉は向かっていく。


「『水壁(ウォータウォール)』」


 しずくが、そう言うと目の前に水の大きな壁が現れる。

 火炎は、あっさり消えてしまった。


「ムキーー! こうなったら……『焔』ぁっ!!」 


 アリスが人型に戻り両手を上げ、そう言うと、ゴォォオオッと燃え滾る大きな炎の玉が手の上に浮かんでいる。

 なんていうか「オラに元気を分けてくれ」的なアレに見える。


「いっけーー!!」


 両手を、しずくの方へ向けるとこっちに来た。熱くて何だか戦うのも、かったるく……あ。躾しないといけないんだった。


「『水壁(ウォータウォール)』」


 あっさり大きな水の壁で防いだ。


「甘いですの! 『火炎』!」


 いつの間にか、回り込んでいた九尾狐姿のアリスが火炎で攻撃してきた。


「『水玉(ウォータボール)』」


 しずくは、体を回転させて水の玉を放出する。水の玉は、しずくを守るように回り火炎を相殺させた。


「『渦潮(アクアストーム)』」


 しずくは相殺させて、直ぐ渦潮を発生させた。まるで竜巻のように、至近距離に居た狐アリスへ……!


「ひゃぁ! いやっ! うぁぁああああーー!!」


 狐アリスは必死で吸い込まれないよう、半ば強引に逃げた。凄いな。

 すると、しずくは、人型に戻り、パンッと手を叩いた。

 それと同時に、アリスの立っていた場所に、大きな穴が空き落ちた。

「きゃぁ!」とアリスは悲鳴をあげる。


「ご主人様、捕獲完了です」


 しずくは、にっこりと微笑んでお辞儀をした。グラッドは「おー」と感心していた。

 僕は、アリスが落ちた場所へ向かう。覗くと、人の姿に戻っていたアリスが体育座りで上目遣いをしていた。

 

「なによ。こっち見ないで」


 むすっとした顔で、そう言うと僕から目を逸らした。


「そうはいかない。僕のゆうじ……下僕の大事なものを燃やしたそうじゃないか。謝って貰おうか」


「ミイナー。今、友人って言いかけたよね?」


 るんは僕の後ろに隠れていたのに、僕の顔を覗き込んで聞いてきた。


「いいや、断じて言っていない」


「……嫌」


 アリスは体育座りで、うずくまったまま言った。


「アリスが苦手なものは何だ?」


「水!」と、るんが即答する。


「しずく」


「畏まりました」


 アリスが居る穴の中に水を注ぎ込む。


「ひっ! いやっ! ごめんなさい! ごめんなさいぃ!!」


「よし。燃やしたものは、アリスが弁償しろ」


「な、なんでですの! るんが悪いんですのよ!」


「るん悪くないもん! アリスが人の話、聞かなかったから!」


 アリスと、るんは、大声で口論している。猫のように毛が逆立っているようにみえた。


「大声で喧嘩するな。で、るんが悪いのか?」


「違うよ! るんは、説明したんだよ! 

 戦うことが出来ないから、食べ物か何かで契約できないかって。

そしたら、『絶対嫌だ。戦ってこそ召喚獣の契約なの、戦いなさいな』って言うから、

しずくの所へ行ったんだもん!」


「るんが戦えば良かったのですわ!」


「無理だって言ってるでしょ!」


 ムキーーッ!と、2人は言い合っている。


「アリスが悪いな。るんは戦えっこないだろ。弁償しろよ」


「い、嫌ですわ!」


「しずく、水」


「畏まりました」


「い、いや! 待って! ごめんなさい! ごめんなさい!! 弁償します!!」


 アリスは慌てて立ち上がり、涙目で必死に謝っている。


「如何致しましょう?」


 しずくは、もう水を入れる準備は出来た状態で、僕を見て聞いてくる。


「もう十分だ。必要ない」


「はい、畏まりました」


 アリスは、ほっとして座り込んだ。


「で、僕が……いや、しずくが勝ったからには契約してくれるんだろうな?」


「……もちろんですの」


「しずく、あそこから出してやれ」


「はい。ご主人様」


 しずくは、手のひらからシャボン玉を作り出し、ふぅっと息を吹きかける。

 ふわふわと、シャボン玉は、アリスの居る穴の元へ行き……

体育座りのままのアリスが、大きなシャボン玉に入った状態で出てきた。

 

「……しずくに負けるなんて、ムカつきますわ……。ずるいですわ。火なのに水で倒すなんて……ぶつぶつ……」


 そんなことを小さな声でアリスは呟きながら、うずくまっている。

 すると、しずくは近づいて


「とんでもないですよ。アリスは強くなりましたね。追い抜かれそうで恐ろしいですよ。修行しなければなりませんね」


 しずく、嘘つけ。表情は至って冷静だったぞ。と僕は思ったがアリスはそうではなかったらしい。


「……本当ですの?」


「もちろんですよ」


 ニコニコと微笑む、しずく。

 アリスは落ち込んでいる顔から、嬉しそうな顔をして


「そうですの! いいですこと? わたくしは絶対貴方を超えて、最強召喚獣になってみせますわ! オーッホッホッホ!」


 元気になって高笑いしている。単純だな。まぁ、良かったよ。イジイジしてるよりは、その方が良い。


「……で、契約はしないのか?」


「あぁ、そうでしたわね。契約の品をお出しなさいな」


 僕は、アリスにペンダントを渡した。


「まぁ、るんにしてはオシャレなペンダントを作りましたわね。どれ……

『わたくし、九尾アリスは、ミイナを主人と認め忠誠を誓いましょう。契約の印をここに示す』」


 アリスはペンダントを握り締め、赤く光り輝く。


「ほら、もうよろしくてよ」


 アリスから、ペンダントを受け取る。しずくの宝石の下に赤く輝くルビー。

 まるで、燃え滾るように輝くそれは、怖くも暖かいような、そして優しさを感じる綺麗な宝石だった。


「アリスのも綺麗だな」


「当然ですわ!」


 アリスは、えっへんと威張っている。


「そうそう、わたくしは攻撃特化型ですわ。

自分の身は、自分で守りなさいな。圧倒的な力で敵をねじ伏せてさしあげますわ!」


 そう説明して、オーッホッホッホ!と、高笑いしている。


「……そういえば、前の主人は何て言えと言ってたんだ?」


「アイツは、思い出したくもないですわ。散々『にゃー』と言えだの、

『べ、べつにアンタのことなんか好きじゃないんだからね!』と言えだの五月蝿くて。

ムカつくから燃やしてやりましたわ」


 燃やしたのか。可愛そうに。でもまぁ、人が嫌がるのはやっちゃいけないしな。


「その後、しずくが火を消したけれど大やけどしてて、るんが治すの大変だったんだからー」


「ところで、そこの男は何なんですの? 微笑ましそうに見てますけれど」


 アリスが、グラッドに指を指した。


「あぁ、初めまして、ミイナの保護者のグラッドだ。よろしく」


「それは、お初にお目にかかりますわ。偉大な召喚獣、九尾のアリスですわ!」


「こいつは、保護者でもなんでもない。お節介なめんどくさい奴だ」


「そうなんですの」


「おいおい、それは酷くないか? ……ああ、素直になれないのか。可愛いな」


 そう言ってグラッドは頭を撫でてくる。僕は、グラッドを殴った。と、思ったら手を捕まれた。


「何度も食らわないからな」


「……アリス、懲らしめてやれ」


「わかりましたわ。『火炎』」


「うわっ! ちょ! 止めろ!」


 グラッドは全部回避した。すばしっこい。


「さて、契約は済んだし、僕は帰るからな」


「ええ、夜以外は、いつでもお呼びなさいな。夜はお肌が荒れますの」


「ああ、わかった。じゃあな。るん、扉作ってくれ」


「はーい」


 るんは扉を作った。扉は赤くなっていない。そこへ入っていく。

 グラッドも慌てて追いかけてきた。


 契約、あっさり出来たな。これで3人目か。

 今度、契約する時は何時になるのだろうか。しばらくは来なさそうだな。

 そう思いつつギルドへ帰宅した。

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