16話 黒猫ミイナちゃん
朝日が眩しくて目が覚めた。
カーテンが開いている。僕としたことが、無用心な。
「そういえば……あの夢、本当なのだろうか……?」
先に、るんが報告しに来ると思っていた。
まさか、召喚獣が夢の中に出てくるとは思わなかった。
「るんに、聞いてみるか……。『光よ。我が命に従い、我が元に来い』」
魔方陣が現れ、輝き……そして陰が見えてくる。
「ミイナ! なぁにー?」
「聞きたいことがある。金髪のアリスって名前の少女は召喚獣にいるか?」
「居るよー。それが、どうしたの?」
いつもなら心の中を読んで喋っているのに、読んでいないな。良い事だ。
「夢の中で、挑戦状を叩きつけられた」
「え! るんには、そんなの一言も言ってないのに!」
やはり、あの召喚獣は、るんに何も言っていないらしいな。
「むぅー。ミイナに言う前に、るんを通してからにするのがルールなのにー。ホント、自分勝手なんだからぁー」
るんは、そう言って、ほっぺを膨らませている。
拗ねているようだが、可愛いな。
「自分を倒したら、契約してもいい。明日に備えて寝なさいな。って言ってたから今日がその日なんじゃないか?」
「そうなの? うーん……どうだろ。アリスは気まぐれ猫だからなぁ」
「つまり、今日じゃない場合もあるのか?」
「うん」
ということは、僕はどうすればいいのだろうか。……まぁ、いいか。
冒険者らしく依頼でもこなしていよう。
「そうか。もういいぞ。帰れ」
「はーい!」
るんは、扉を作り、笑顔で手を振って帰っていった。
扉だったり、魔方陣だったりするが…統一しないのだろうか?
後で聞いてみるか。僕は、顔を洗うことにする。思うんだが、水を暖かくできないだろうか?
火の召喚獣とかで、暖めることが出来ればな……。
「つめたっ!」
そして、僕は、鏡を見て今更だが重要な事に気が付いた。
「……服、ずっと同じだ」
自殺する前の、長袖に長ズボンのラフな格好のままだった。
「依頼をこなす前に、グラッドに服買ってもらおう」
代金は出世払いで。僕は、いつかビックになる人間だからな。たぶん。
部屋から出てギルドの1階に向かう。
丸机に立っていたグラッドが、こちらに気が付いて手を振る。
もう注文して食べていたようだ。
「ミイナ、おはよう」
「おはようございます」
「今日は、るん召喚してないんだな」
「ああ。召喚し続けると疲れることがわかったからな。ところで、君は常にシチューとパンのようだが飽きないのか?」
「マールさんのシチューは絶品なんだぞ? ミイナも頼んだらどうだ?」
絶品なのか。どれだけ美味しいのだろう。僕も頼んでみることにした。
しばらくすると、ふわふわと飛んできた。
シチューは、黄色くて美味しそうな匂いがしている。
パンは頼まなかった。パンまで食べたら、朝からボリュームがありすぎる。
「いただきます」
スプーンで一口。……うまい。普通の白いシチューとは違う濃厚な味。
カボチャの味が全体に広がる。コーンがシャキシャキして、そして甘い。確かに、絶品だ。
「美味しい」
「だろ?」
グラッドは、にやっとした顔で僕を見つめている。
「ごちそうさまでした」
これなら、何杯でもいけるな。朝からだと、さすがに嫌だが。
グラッドも食べ終わったようだ。2人で、キッチンへ向かい食器を片付けに行く。
「なぁ、グラッド」
「どうした?」
「服が欲しいんだが。出世払いで、どうにかならないか?」
「そういえば突然、移転魔法を使われたから服が無いのか。いいぞ。行こう」
「それなら! 私がつれていくわ!」
アリシアが急に出てきた。この人、神出鬼没だな。
「いいのか? 君は、受付の仕事があるんじゃないのか?」
「いいのよ! 意地でも休みを取ってみせるわ! いいわよねー?」
他の受付嬢たちに、そう聞くと
「いいですよー。アリシアさん滅多に休暇取りませんし」
「アリシアさん、休みを満喫してください」
あ、いいんだ……。
「ね? じゃあ、行きましょう! レッツ・ゴー!」
僕の手を掴んで引っ張っていく。
「お、おい! 手を繋がなくても付いていく!」
「私が手を繋ぎたいから繋ぐの! さぁ、行きましょう!」
「俺を置いてくつもりか!」
「グラッドはギルドで待ってなさい! 女同士で服選びするんだから! いいわね!」
「……はい」
アリシアに引っ張られながら、ギルドの方を見るとグラッドが寂しそうにしていた。
……すまない。グラッド。アリシアを止められそうに無い。
広場に出ると、色んな商人が小さな店を開いていた。
少し黄色くなった白い布で、四角くテントらしきものを作ってあり
そこに物を並べて「いらっしゃーい!」と元気よく声をあげている。
そのテントの数は、いくつあるのか、わからないほどだ。
「あそこらへんが、服の商店が並んでる所ね。さ、行きましょ」
僕は頷く暇もなく、引っ張られている。
「いらっしゃーい! アリシアさん、久しぶりだね! 良いの揃ってるよ!」
どうやら、アリシアと知り合いらしい少年は笑顔で声をかける。
「うふふ。久しぶりね。この子の服を探してるんだけれど、冒険者用ので良いの無いかしら?」
「それなら、今流行のフード付きローブ! 猫耳や、ウサ耳が付いてて可愛いよ!
あとねー。戦士関係は、フリルの付いたミニスカ甲冑とかが人気かなぁ」
「まぁ! 猫耳フード付きローブ可愛い! ミイナちゃん、着てみなさい!」
「え? いや……猫耳は……」
「いいから! はぁはぁ」
ものすごい勢いで迫られた。……怖い。
「……は、はい……え、えっと、どこで着れば……?」
「奥に試着室あるから、どうぞー!」
誘導されるまま試着室に入った。
黒い猫耳ローブを着る。丈が短いワンピースのような感じだ。ミニスカートのようになっている。
白いレースがスカートの先に付いていた。ミニスカなんて久しぶりに着た。恥ずかしい。
「ミイナちゃーん。着たー?」
「あ、ああ」
僕がそう答えると、アリシアはカーテンを開けた。
「黒猫ミイナちゃん! なんて可愛いのかしら! はぁはぁ」
「こ、これは……嫌だ……」
「これ買うわ!」
「まいどありー!」
僕を他所に、どんどん話が決まっていく。
「お、おい! 僕の意見は無いのか!」
「そんなに似合うのに着ない方が勿体無いわ」
「せ、せめて丈が長い方がいい」
「そうだったわね! ミイナちゃんの綺麗な足を簡単に他人に見せたくはないわ! これの丈長いのある?」
「膝くらいの丈なら、ありますよー」
「じゃあ、それお願い」
あっさり決められてしまった……。ああ、何で猫耳ローブなんだよ……。
買ってもらった以上は、着ないと申し訳ないし……。
仕方ない……開き直って着るしかないな……。
「あと、そこにある白ウサ耳ローブも買うわ」
「え!?」
「まいどありー!」
ピンクのふわふわした奴が付いているウサ耳ローブも買われてしまった。
……僕は、普通の地味なローブが良かったのに……。
なんで、こんなことになってしまったんだ……!
ほら、あそこのマネキンが着ている、まさに魔法使いって感じのローブにトンガリ帽子とかが良かった。
「ミイナちゃんは美少女なんだから、こういうのを着て破壊力抜群にしつつ悪態つけばモテること間違いなしよ!」
アリシアは、そう言って親指を立てた。
「僕には、さっぱり理解ができない」
「うふふ。それでいいのよ。今は。じゃ、ボク? またね」
「はい! アリシアさん、いつでもお待ちしております!」
少年は顔を赤くして、お辞儀をした。あの子、アリシアに恋してるだろ。
「良い買い物したわー。もうお姉さん死んでも良いくらい! あ、だめよ。フードかぶらなきゃ!」
アリシアは、そう言ってフードをかぶせてくる。人目が恥ずかしい。
「……僕が死にたくなってきた……」
「ミイナちゃん、顔真っ赤。可愛い~」
アリシアは、僕の頭を撫でてくる。
しばらく歩くと、ギルドに着いた。
「ミイナ、おか……どうした? それ」
「ふふん、可愛いでしょう?」
「……アリシアが勝手に選んで買ってった……」
「似合ってるな。可愛い」
僕は動揺してグラッドを殴った。ゴスッと良い音がする。
「いでっ! なんだ? 照れてるのか?」
「うるさい! とにかく、フードは被らないからな!」
「あーん。せっかく買ったのにぃ……。被らない方が恥ずかしいんだなと思うから可愛さ倍増だけれど」
うふふ。とアリシアは笑った。
「どちらにしろ、フードは被らないといけない時が来るから、覚悟しておいた方がいいな」
グラッドは、いたずらが成功でもしたかのように、クックック。と笑っている。
「……はぁ……なんでこうなった……」
がっくしと、落ち込んでいる時だった。
『ミ…ナ…。ミイナ。聞こ…る?』
「るん…か? どうした?」
『ちょ…と、召喚…てくれ…かな? しゃべ…ずらく…』
声が途切れ途切れで、よくわからない。召喚して欲しいようなのでしてやるか。
「『光よ、我が命に従い、我が元へ来い』」
魔方陣から、るんが現れた。
「ミイナ! 大変だよ! あの子本気だったみたい!」
「あの子ってなんだ?」
「アリスだよ! 戦闘する準備していたみたいで、ミイナが来ないから泣いて大暴れして大変なの!」
「大暴れして被害があるもんなのか? 召喚獣の住んでる場所って、あんまり被害がなさそうな気がするんだが……」
「そりゃもう、るんのソファとか、ベッドとか……大事なもの燃やしまくって……うえええん! 助けて~~!」
るんは大泣きしている。そりゃ大変だ。行かなければならない。
「ひっぐずっ……あれ? ミイナ、その服どうしたの? 可愛いね!」
るんは泣いていたのに僕の服を見て気が反れたらしい。
フードを被ったままだった。慌てて被るのを止める。
「気にするな。行くぞ、アリスにはお灸を据えてやらなきゃならないからな」
「うん!」
「俺もついていく。何か危ない臭いがするからな」
「うん、いいよ。扉作るね。えいっ」
るんが、いつもの通り扉を作ったら、普段は黄金の扉なのに赤くなっている。
「あ、ミイナ。中に入ったら、しずくを呼んだ方がいいよ。危ないから」
「ああ。わかった」
「いざとなったら、俺が倒すやもしれないが良いか?」
「それは無理だと思うよ。召喚獣は、召喚獣でないと弱らせることは出来ても倒せないから。唯一できるのは初代の召喚士様だと思う。じゃあ、いくよ」
僕たちは、るんの部屋に居るらしい、アリスに会いに行くこととなった。
たぶん、今回の召喚獣は問題児だな。るんの大事なものを燃やすのは宜しくない。
しっかり躾しないとな。……燃やすって事は、火属性か。しずくなら余裕だろう。
相変わらず、ノリとテンションで書いております。
うん、だから私の小説はダメなんだよね^^;
こんなんでも楽しんでもらえたなら幸いです。




