14話 しずく
今更言うのも申し訳ないのですが…。
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ありがとうございます!
こんな何かが足りないような小説を読んで頂いて
とても嬉しいです。これからも宜しくお願いします。
あと間違った言葉があれば、ご指摘お願いします。
水の壁に入る。ちゃぷん。と音がした。
水に入っていく感覚が嫌で寒気がする。
泡で出来た階段があり、るんが平然と降りていく。
その後を付いていくものの……泡が無くなりそうで怖い。
「…………」
るんは呼吸が出来ると言っていたが、念のため息を止める。
だが、さすがに息が続かない。
「ぶはっ! はぁっはぁっ……。……呼吸、できる……」
「むぅー。呼吸できるって言ったのにー」
るんは、ほっぺたを膨らませて拗ねている。
「人は水に浮かないからな」
「泳げないって不便だねー」
「人は! 水に! 浮かないんだ!」
そう言って、左手に焼き魚を持ったまま、右手で、るんのほっぺたを引っ張る。
すごくやわらかい。赤ちゃんのほっぺたみたいだ。
「いひゃい、いひゃい! ごめんなひゃい~!」
涙目になって両手をパタパタさせながら謝っていたので手を離した。
「うー……。もう、言いません。ごめんなさい」
……涙目でそんなこというなよ。
水に浮かないだけで意地はって、ほっぺたを引っ張った僕が情けなくなる。
「……すまなかった」
僕は小さな声で、先に歩いている、るんに言った。
「ミイナ、何か言った?」
くるっと振り返って笑顔で聞いてきた。
聞こえなかったらしい。2度は言わないぞ。
「……なんでもない。しずくって子は、どこにいるんだ?」
「んーとね、あそこだと思う」
るんが指差す方向。
そこは、マーメイドが住むような、貝殻や煌びやかな宝石の装飾がある城だった。
「……随分、豪華だな。なのに何故、魚料理を要求するんだ?」
「交渉したんだー。そしたら、新鮮な魚料理くれたら良いよって」
「そんな簡単に契約出来るものなのか」
「うん。しずくは優しいから。他の子はどうなるかわからないけど」
「戦うことになったりするのか?」
「そうなるかもしれないねー」
それこそ、本当に契約って感じがする。勝てるかどうかわからないが。
話しているうちに、階段を下り終えた。
目の前には、大きな城がある。
「しずくー! 来たよー! 開けてー!」
るんは大きな声で扉に向かって叫んだ。
サファイアやらパールの宝石、貝殻がついている装飾の大きな扉がゆっくりと開く。
「いこっ」
にぱっ。と、るんは笑って先へ進んでいった。
僕は後に付いていく。
広い廊下が続いている。
壁にはサファイアのランプが一定の間隔であって
青く輝いて道を照らしてくれている。
しばらく歩くと、ようやく大きな扉に着いた。……疲れた。
一人で住んでいるわりには広すぎるだろ。
「しずく。開けてー」
扉がゆっくり開く。
……目の前には……。
……竜。とても大きな竜。
蛇のような体で丸まっており、綺麗な透き通った鱗と尾ひれ。2本の曲がった角。
目は青く美しく、そして恐ろしい。
「……しずく……なのか?」
「うん!」
全然しずくって名前と合わないと思うんだが……。
もっと綺麗な名前の方がよかったんじゃないか?
そんな事を考えていたら、竜が空を飛んでいるような綺麗な泳ぎ方で
しずくがこちらに来た。
泳いでいる途中で、青く輝いて目の前には──
腰まである長い水色の髪の毛を、みつあみにして、ひとつに束ねている。
僕と同じ身長のるんとは違って、背が高くアリシアと同じくらいだろうか?
僕は142センチで高く感じるのだから、160はいっているだろうな。
「……初めまして、しずくと申します」
微笑んでそう言い、お辞儀をした。綺麗な澄んだ声だった。
「初めまして、ミイナです」
つられて、お辞儀する。
「しずく! 約束の新鮮な魚料理だよー」
「ありがとう。皆さんは食べたのですか?」
「うん!」
「そうですか。では、全部頂きますね」
ぱしゃんっ。と音がした。
少し離れた場所に、水で作られた透明の机と椅子が出現する。
「こちらに置いてもらえますか?」
刺身、焼き魚、煮物を机に置いた。
「いただきます」
手を合わせ、そう言ったあと
いつのまにか作られていた水の透明の箸を手に持ち
食べ始めた。食べるの早いな。僕と同じ速度だ。
「…美味しい。やはり、新鮮なものに限りますね。
ミイナさん、るんさん、ありがとうございます」
そう言って微笑んでお辞儀をした。
「あ、あぁ。どういたしまして」
何か、調子が狂う。礼儀正しいからだろうか?
「では、お約束通り契約しましょう。……私と契約してもよろしいですか?」
「ああ」
「ありがとうございます」
しずくは微笑んで、またお辞儀をする。
そして、本来の姿である竜に戻った。
「我が名は、しずく。契約は果たされた。
我は、新たなる主人ミイナに忠誠を誓おう」
グルルル。そう猫の甘える時の声を出し擦り寄った。
僕は思わず竜の姿でいる、しずくの頭をなでる。
僕が撫でるのを止めると、しずくは人の姿に戻った。
「……忠誠の証を、契約の証に刻みますので出してもらえませんか?」
契約の証……つまり、ペンダントのことか。ペンダントを手渡した。
「薔薇のペンダントですか。女の子が持つには可愛らしいですね。……では、失礼します。」
ペンダントが青く輝いた。
「ご主人様、どうぞ」
ペンダントを受け取った。
ハートのプレートには、るんの宝石の下に、しずくの宝石がついている。
青く輝くサファイアのように見えるが、どこか違う。
まるで生きているような輝きを放っていて、とても綺麗だと思った。
「……綺麗だな。」
「ありがとうございます。……私を使う時の説明をさせて頂きます。
私は、水属性の召喚獣です。恐らく水の中なら何者にも負けません。
攻撃、防御の水魔法を使うことが出来ます。水の他に、氷魔法も使えます。
あとは、どう使うかは、ご主人様次第です。
前のご主人様は、メイド服というものを着てくれとせがまれましたが……
いかがいたしましょう?」
「いや。メイド服は着なくても良い。攻撃や防御が出来るなら十分だ」
「そうですか。どうやら、私はメイド魂が足りないと叱られていたものでして……」
前の奴、どんな奴だよ。男だったのはわかるが。
るんに無理矢理入れられてた知識で、ぼんやり覚えている。
前の奴のなんて、いらない知識だったから忘れたが。
「るんはねー、お兄ちゃんって呼びなさいって言ってたよー」
「……ハーレム、楽しんでたんだな」
「ハーレムってなにー?」
「るんは知らなくていいことだ」
「そうですね。るんは知らなくていいことですよ。
契約は終わりましたが……お帰りになりますか?」
「ああ。帰って早く寝たい」
「畏まりました。では、私の背中にお乗り下さい」
しずくは竜の姿になり背中に乗るよう言った。
僕と、るんは背中に乗る。扉がバンッと勢いよく開いた。
凄い速さで進んでいく。水の上の移動が楽になりそうだ。
体感10分くらいの長い廊下も、5分くらいで玄関の扉に着いた。
止まることもなく進んでいく。激突するのではないかと冷や冷やしたが扉は勢いよく開いた。
泡の階段も、上ることなく泳いでいく。
あっさり現実世界に出れる入り口に着いた。背中から降りると、しずくは人の姿になり
「ご主人様。どんな御用でも構いませんので、いつでも私をお呼びください」
と、言ってお辞儀する。
「かなりの頻度で呼ぶぞ、せいぜい頑張るんだな」
「光栄です」
しずくは微笑んだ。
僕は、しずくに背を向けて現実世界への扉へ入っていく。
「しずく、またね~」
るんは、大きく手を振った。
「またね」
しずくは微笑んで、お淑やかに手を振りかえした。




