13話 魚釣り
地味な釣り依頼。全ては、新たな召喚獣の為に!
僕たちは、アクアマリンの門を出た直ぐの大きな橋で
釣竿の針にエサを付け、池に投げ釣れるのを待っていた。
「「「…………。」」」
沈黙が続く。地味すぎる。こんなかったるい依頼受けなきゃ良かった。
魚料理なんて、マールさんに注文すれば出来ただろ。
「……新鮮な魚じゃなきゃ嫌だって、しずくが言ってて……」
るんがつぶやくように喋った。
「……人の心読んだな……まぁ、いい……。しずくってのは、新しい召喚獣か?」
「……うん」
「……そうか」
また沈黙が訪れる。
すると、グラッドが釣竿を置き立ち上がった。
「どうし……!?」
どうした?と聞く前に黒い鎧と服を脱ぎ始めた。
死んでいるような目をしている。
「お、おい! なにしてるんだ!」
パンツ以外何も着ていない姿で
「捕ってくる」
そう言い残し、剣を片手に池に飛び込んだ。
残された僕たちは、ぽかーん。と池を見ていた。
「……あいつ、大丈夫か? 剣で魚が捕れる訳ないだろ。せめて槍だよな?」
「うん。槍だよね。でも、グラッドは待ってるの耐えられなかったんだよ。
冷静な判断ができないくらい」
とりあえず、もうグラッドは期待できそうもない。
僕たちは、いつの間にやらエサが無くなっていた針にエサを付け池に放った。
その数秒後、奇跡が起こり始める。
「あ、何か掛かってる! う~~!」
るんが、しなっている竿を一生懸命引っ張っている。
その姿が可愛く見える。
「ミイナ、エメラルドフィッシュ釣れたよー!」
にぱっと満面の笑みで、エメラルドフィッシュを顔の横に持って見せた。
緑色にキラキラ輝いている。にしても大きいな…。30センチくらいある。
「るん、よくやった!」
「えへへー。……あれ、ミイナ。竿しなってるよ!」
「!」
竿を引っ張って、何とか釣ろうとするが重い。こっちが持ってかれそうになる。
「っ~!」
バシャンッ。エメラルドフィッシュを釣り上げた!嬉しい。
待っていたのが苦痛で無駄な時間だと思ってたが、
釣れると全てが無駄だと思わなくなる。
「やったっ……!」
僕は思わず小さな声で、そうつぶやいた。
「ミイナー! みてみてー!」
「ん?」
るんの方を見たら、10匹のエメラルドフィッシュが
大きなタルに縦に入っている。ビタビタと音を立てて。
僕が1匹と格闘している間に、るんは簡単に、ほいほい釣っていたのか。
でもまぁ、依頼はクリアしたな。
「ぶはっ!」
グラッドが池から顔を出した。
「ごめんな。エメラルドフィッシュ、なかなか捕れなくて……って、あれ?」
グラッドが見たものは、エメラルドフィッシュ11匹がタルに入っている光景だった。
ミイナは腕を組んで、グラッドを見つめ
「問題ない。全て、釣った。依頼完了だ。帰るぞ」
「おー!」
ミイナは、グラッドに背を向けアクアマリンへ入っていく。
るんも、大きなタルを軽々持ってミイナについていく。
「ちょ、おい! 2人とも! 待て!」
グラッドは、慌てて池から上がり服を着て急いで追いかけていった。
~アクアマリン冒険者ギルド~
ギルド内のキッチンに着いた。
冒険者はいない。注文がひと段落したらしい。
マールさんは休憩中だった。
「マールさん。釣ってきました。るん」
僕はそう言い、るんに置くよう指示する。
「はーい」
るんは、返事をしてキッチンの受付に、ドンッと大きなタルを置いた。
ビチビチ。ビタビタ。元気そうにエメラルドフィッシュは動いている。
「おや? 早かったねぇ! ……ん? グラッドはどうしたんだい?」
「グラッドは、全裸で池を泳いでいます」
「あっはっはっは! さては、グラッド釣りに耐え切れなくなって
できもしない剣、片手に池に潜ったね!?」
マールさんは、豪快に笑ってそう言った。声、大きいな。
バンッ。と扉が開く音がした。入ってきたのは髪の毛が濡れたグラッドだった。
「おや? 全裸のグラッドがお帰りになったねぇ!」
「?! マールさん、何を……? っは、ミイナ!俺は全裸で潜ってなかったろ!」
「全裸に変わりないだろ」
「うん、変わりないよー」
「まったく、グラッドは、釣りに耐えることを覚えなきゃねぇ!
相変わらず釣りは苦手なのかい?」
「苦手、です……。」
グラッドは苦笑いしながら、そう言って落ち込んでいる。苦手だったのに依頼受けたのか。
「昼は食べたかい?」
「いえ、まだ」
「じゃあ、昼営業は過ぎてるけど、さっそく作るから待ってな!」
マールさんは、魚の入ったタルを奥へ持っていって調理を開始した。
僕たちは、丸机で待つことにした。
数分たつと、刺身、煮物、焼き魚が飛んできた。
どれも美味しそうな匂いがする。
「たーんとお食べ!」
マールさんは、にかっと笑ってそう言った。
「「「いただきます」」」
3人で美味しく頂いた。どれも、うまい。
この絶妙な煮物の味のつけ方は、どうやっているのだろうか。
僕は刺身が苦手だが、それでも食べれる。
焼き魚なんか、絶品だ。
綺麗な焼き具合で、なおかつ半生に焼かれていなくて、生臭くない。
マールさんは、にこにこ笑いながら僕たちの食べる姿を見ていた。
「「「ごちそうさまでした」」」
珍しく、遅く食べていたようだ。3人とも同時に食べ終わる。
「まだあるけど、もういいのかい?若いのに、食欲がないねぇ」
まだあるのか。あ、そうだ。召喚獣。
「すみません。それ、頂けませんか?」
「ん?食べるのかい?」
「食べさせたい人がいるので、頂きたいのですが」
「ああ。そうかい。いいよ。残すと捨てるしかないからね。
魚料理、全部もっていきな」
刺身、煮物、焼き魚を、るんと僕は受け取る。
こんだけ残るなんて。30センチなだけあるな。
「るん」
「はーい!えいっ」
るんは、力を込めるしぐさをすると……。扉が出てきた。
開けると水が今にもこぼれそうな壁?が現れた。
「……人は水に浮かないぞ?」
人は水に浮かないように出来ているんだ。
泳げないという訳ではない。決して。
「大丈夫。呼吸できるし、泳ぐ必要もないから。いこっ!」
にぱっ。と、るんは笑って中に入っていく。
僕は、恐る恐るついていった。
「俺をおいてくのか……?」
グラッドのそんな寂しそうな声が聞こえた。
グラッドさんは、釣りで我を忘れただけなんです。
本来なら、全裸になんかならないんです。
…あ。パンツ姿か。




