11話 冒険者
3人で、1階に降りた。
受付の場所を通り過ぎようとするとアリシアが仕事の準備をしている。
アリシアは僕の顔を見ると、心配そうな顔で慌てて駆け寄り両肩を掴んで
「ミイナちゃん! 体は大丈夫? なんともない?」
「大丈夫だ、問題ない。離してくれないか。痛い」
「ああ! よかった……。ミイナちゃんの身に何か起きたらどうしようかと思って……!」
そう言いつつ、アリシアは涙目で、ハグしてきた。
顔が豊満な胸に押さえつけられ息が出来ない。
「っ~~! っ~~!!」
「やめろ! ミイナが死ぬぞ!」
「いやぁーっ! ミイナァーー!!」
グラッドと、るんが叫んだ。
「あ、あら? ごめんなさい。ミイナちゃん背低いから当たるのね。大丈夫?」
ハグから開放された。死ぬかと思った。
「……ごほっ……げほっ……。殺す気か!」
「ああ、ミイナちゃんが怒ってる顔も可愛い……」
アリシア、全然反省してないだろ。
「……もう、いい。」
あんな大きい胸なんか。なければいいのに。悔しくなんてないからな。
僕はまだ、成長期なんだ。……虚しくなってきた……。
「……ん!? お隣の美少女は、どちらさま!?」
今頃、るんに気づいたらしい。
「るんは、るんだよー」
「ピンクの髪にツインテール! ミニスカから輝く白い太もも! お人形のような可憐なお顔!
な、なんて破壊力抜群の子なの!? 髪の毛、触っていいかしら! はぁはぁ」
説明してるように喋ってる。しかも、凄く危ない人になっている。
るんの様子を見ると、全然動揺していない。
「いいよー」
いいのかよ。と心の中で突っ込む。
「お、おい、いいのか? アイツは危ないぞ?」
「グラッド、うるさいわよ?」
アリシアは、グラッドに笑顔を向ける。目が笑っていない……。
グラッドは、アリシアに思いっきり膝蹴りされた。見事にみぞおちに入った。
「ぐっ……!」
腹を抱えたまま動かない。グラッド、大丈夫だろうか。
「おー! アリシア、強い! すごーい!」
「うふふ、ありがと。じゃあ、失礼して…!」
アリシアは、頭を撫でたあと、ツインテールを触っていた。
「髪さらさら……ステキ……! ハグしてもいい?」
「いいよー」
いいのかよ!と、心の中で突っ込んだ。
「ああ! たまんない! 可愛い! ステキ!」
アリシアはハグできて、とても幸せそうな顔をしている。
僕は、見てるのも飽きたので食堂に向かうことにした。
グラッドも、腹を抱えながら僕に付いてくる。
「あ! ミイナ、待って~」
るんが慌てて駆け寄ってくる。
「るんちゃん、待ってぇ~」
うふふ。うふふふ。と笑いながら、アリシアも付いてきた。幸せそうでなりよりだ。
メニューを見て、今日の朝は完熟チョコバナナハニートーストにした。
思うんだが、この食堂、オシャレだな。
グラッドは、シチューとパンばっかり頼んでいる。飽きないのだろうか。
るんは、僕と同じものがいいそうだ。
しばらくすると、出来たものがふわふわと、こっちへ飛んできた。
厚めの食パンに、バナナ、バニラアイスが乗っていてチョコがかかっている。
「いただきます」
うん、うまい。
こんなの店でも家でも食べたことなかったが、いいものだな。
食が早く進んでいく。
「ごちそうさまでした」
「ミイナは食べるの早いな……」
グラッドは驚いている。
食べるのに時間をかけるのは好きじゃないからな。
あっちの世界では、とにかく早く食べて、ゲームしてたし。
僕以外の3人は、まだ食事中だが、そろそろ本題に入ろうか。
「アリシア。冒険者になりたいんだが、どうやるんだ?」
アリシアとグラッドが、驚いた様子で立ち上がる。
「だめよ!」
「だめだ!」
2人とも、口を揃えて言ってきた。
「そんな、危ないことミイナちゃんがしちゃだめよ!」
「ミイナは、まだ子供だ! そんなことさせる訳にはいかない!」
「冒険者はいくつでなれるんだ?」
「15歳からだが……」
「じゃあ、僕は17だからなれるな。アリシア、冒険者の手続きできるんだろ?」
「え? ミイナちゃん、13歳じゃないの!?」
「よく言われるが、僕は立派な17歳だ」
「嘘だろ?」
グラッドは動揺した様子で聞いてきた。
「殴るぞ?」
「そ、そうか……。17だったのか……。でもだめだ! ミイナにそんなことは!」
グラッドは、話を変えて必死にそう言っている。父親みたいだな。
「出来ないならいい。他の町へ行ってするまでだ」
「ミイナちゃん」
丸机の向かい側に座っていたアリシアが目の前に来た。
「本気なのね? 冒険者は、危険と隣り合わせよ。いつ死ぬかわからない。
いつ敵が襲ってくるか、わからない。時には野宿もするかもしれない。
ご飯も、まともに食べれないかもしれない」
アリシアは、真剣な顔をして僕の顔をジッと見据えている。
「外に出るってことは、遊びじゃないのよ。
気を抜いたら、手を抜いたら、死んでしまう。
生き物を殺すのに戸惑いを出しちゃいけないの。
ミイナちゃんに、命をかける、命を殺す覚悟があるの?」
「……ある」
「……そう。ならいいの。冒険者の手続きをします」
「アリシア!」
グラッドは怒った声で、アリシアの名を呼んだ。
「グラッド? ミイナちゃんの覚悟を踏みにじる気なの?
戦士にあるまじき行為ではないの?」
「……こんな、弱弱しい子を冒険者にはできないだろ」
「その気持ち、わかるわ。だったら、貴方が護衛すればいいでしょ。
孤高な一匹狼がパーティを組むなんて何年ぶりかしら」
「俺は、守れない」
「昔はね。今は大丈夫よ。自信持ちなさい。いつまでもそんなんじゃ妹が泣くわよ」
「……わかったよ。ミイナ、冒険者になるのは許す。
その代わり、俺とパーティを組んで行動するんだ。いいな?」
「わかった」
真剣な顔で、何か訳ありな会話をしていた。妹がいたのか。
妹とは1度も会ってないが……。何が起こったのだろうか。
「ミイナちゃん。こっちへ来て」
受付の場所へ行く。
「アクアマリン冒険者ギルド受付嬢アリシアは、彼女、ミイナを冒険者に認めます。
では、ミイナ。こちらに名前をお願いします」
契約書らしき紙を出された。
一番下の所にミイナと書く。
「確かに。では、手続きをしますので、少々お待ちください」
契約書に、アリシアは何かを書いて契約書をしまって、
何もないカードに手を当て何かの魔法をかける。
「女神アリア、彼女に祝福があらんことを」
カードが、綺麗な青色になって真ん中にミイナと名前が出てきた。
右下に小さく冒険者認定アリシア、と書かれていた。
「パーティを作ります。名前はどうなさいますか?」
「ミイナが決めていいぞ」
グラッドはそういうが……僕はネーミングセンスなんかないぞ。
どうしたものか……。
「ブラックローズ……かな」
ペンダントがバラの花だし、グラッドは黒い服を着ているしな。
「畏まりました。ブラックローズ、登録しました。どうぞ」
渡されたカードに、パーティ名:ブラックローズと記入されている。
真剣な顔をしていたアリシアは、微笑んで
「おめでとう。これでミイナちゃんは、冒険者を名乗れるわ。
……くれぐれも、気をつけてね。ミイナちゃん、ハグしていい?」
「断固拒否する」
こうして、僕は冒険者になった。
何か、うまく表現できてないような気がしますが…。
ミイナちゃん、冒険者になれました。めでたい!




