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ロー内恋愛ー26歳の男ー  作者: 小高まあな
第四章 守秘義務ってご存知ですか?
11/19

4−2

『で、夏休みなんでしょー? 何してるの? 学校で勉強?』

「んー」

 電話の向こう、こずちゃんの言葉に渋い顔になる。

『あ、行ってないんだー』

 あっさり見抜かれた。

「違うよ? 家で勉強してるよ?」

 まあ、午前中はだらだらしちゃっているし、夕方の刑事ドラマの再放送見ちゃっているけど。

『ほんとに?』

 疑うようなこずちゃんの声。

「ほんとに」

 ちょっとだけ嘘をついた。勉強してないことがこんなに後ろめたくなる日が来るなんて、高校の時は思っても見なかった。

 後ろめたくなるっていうことは、就職しないで進学して、勉強している環境に引け目を感じているってことなのかな、ってたまにちょっと思う。周りを見ていると、ちっとも引け目に感じることなんかじゃないって思うのに。皆一生懸命、目的をもって勉強をしているのだから。あたしは、ともかく。

「ほら暑いから外出たくなくて」

 これは本当。家の中にずっといれば、暑い思いをしなくてすむ。

『ふーん? なんでもいいけど』

 こずちゃんはちょっとだけ楽しそうに笑って、

『学校行かないと、ヒロ君だっけ? 会えないんじゃないのー?』

 あたしが感じていたとっても致命的な、この夏休みの過ごし方の欠点を突かれた。

「う、そうなんだよねー」

『暑いからって、ずっと家の中にいると太るわよー』

「うう、それもそうなんだよねー」

 溜息。受話器の向こうで、こずちゃんがちょっと笑った。

『だから、ちゃんと学校行きなさいよ。朝早く行って夜遅く帰ってくれば涼しいんじゃない?』

「それはわかってるんだけどねー」

 まず朝早く起きられないしなー。

『杏子?』

 たしなめるようなこずちゃんの声。

「うー、はーい」

 返事をすると、よろしいと笑われた。

 少しだけ、下に見られているようで不快に思った。

 こずちゃんが人生の先を行っているから。

 そんな風に思う自分が、一番嫌だ。


 だから翌日、午後からの重役出勤といえども、自習室に向かったのは、こずちゃんに言われたからじゃない。ヒロ君に会いたかったからだ。

 あたしだってやるときはやるんだから!

 そう思いながら六法を開く。それから行政法の基本書。

 何故かこの世界では、教科書代わりとして使う、基本的な事項が書いてある専門書のことを基本書と呼ぶ。基本的な事項じゃなくて超マニアックな記述ばっかりのものも基本書と呼ぶんだけれども。

 それとも、自分が勉強の基礎、基本として使うから基本書? でも、同じ科目で基本書何冊も使う人いるしなー。よくわからない。

 基本書選びに一家言持っている人もいるけれども、あたしの選び方は簡単だ。横書きで、できれば二色刷りがいい。わかりやすいから。内容もできるだけ簡単でいい。読んでいて眠くなっちゃうから。

 あたしが使っているこの行政法の基本書は、池田君なんかは「内容が薄い」って批判していたけれども、ばかなあたしには丁度いい、わかりやすい本だ。

 ……ちょっと嘘ついた。これでも、実はわからないことがたくさんある。でも、読みやすいし。

 そんなこともちょっと思いながら、基本書をラインマーカーで汚す作業に従事していると、机の上で充電していたケータイが鳴った。

 バイブ音が響く。

 慌ててそれを止めた。サイレントにしとけばよかった。

 開いてみると、サクちゃんからのメール。『ちょっと相談したいことがあるんだけど、いつなら学校にいる?』

 うーん、やっぱりあたし、学校にいない子として認識されているな。ちょっと苦笑い。「今日はいるよーん。どうしたのー? ラウンジ行くー?」と返信。

 それにしても、サクちゃんがあたしに相談なんてなんだろう? あたし、自慢じゃないけれども、相談は山ほどするけれども、相談をもちかけられたことなんてないのに。……ってこれ、弁護士としては致命的な欠陥じゃない?

 そんなことを思っていると、返事はすぐに返って来た。『今、平気? ラウンジだとちょっと……。外のカフェでもいい?』勿論オッケーだ。

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