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第3話

長くて埋まらないですね(汗)

 …そういえば、鈴鹿が両親の代わりに朝食を作り始めてもう一年ほど経つ。


 オレ達の両親は、海外に出向いてバリバリ働くお仕事の方たちなのだが、その職種が普通ではない。初めて聞いたときはオレも耳を疑った。


 四年前の、雪が降る日だった。


 オレが居間で鈴鹿と話していると、いつもと変わらない様子でオレに親父が話しかけてきた。

「祐季。少し、いいかな」

「ん?いいけど、どうしたんだよ急に」

 親父は少し困った顔をして、小声で言った。

「鈴鹿に聞かれたら困るんだ。外で話そう」

「外って…雪降ってるぞ」

 外の雪は日が落ちてますます質量を増していた。

 雪だるまに換算するなら軽く10体は生み出すことが出来ただろう。

「大丈夫。寒くないから」

 親父は笑っていた。

 そのことはあまり腑に落ちなかったが、嘘をついたことがない親父がこんなことで嘘を言うとは思えなかったし、何より鈴鹿に隠すようなことを話すと言うのだ。

「じゃあ、行こう」

「ああ、なるべく手短に話すから、寒くなくてもね」



「実は私と母さんはね、祐季や鈴鹿とは遠いところにいるんだよ」

 玄関先で、親父は独り言のように言う。

「なに言ってるんだよ。ちゃんとここにいるじゃないか」

 質問の意味を理解できなかったオレは、ありのままの現実を口にする。

「そういうことじゃなくてね。そう、知っていることが違う。世界の捉え方が違うって言うのかな」

「…?」

 親父の話では頭がこんがらがっていくだけだった。

 ただなんとなく遠まわしに言っているということが分かったので、なんだかそれが子ども扱いされているようで嫌だった。

「なんだよそれ、もっと素直に言っていい。オレだってもう子供じゃないんだし」

 そう言ってもらえると助かるよ。と親父は言った。


「私たちはね、魔法が使えるんだよ」


 な…


「なんだよ!そ…」

 一陣の風が吹いた。条件反射で腕で顔を覆うが、その風の不自然さに気づく。

「冷たく…ない?」

 父親を見上げる。父親は今までに見たことのないほど、嬉しそうな顔をしていた。

「私が使うのは自然干渉の魔術が基本なんだけどね。さっきの風も初歩中の初歩みたいなもの。母さんはルーンを専攻していたらしいけど、私にはさっぱりだ」

 親父の思い出深い話にも興味があったが、今はそんなことよりも胸の中を占拠している感情があった。

「親父…」

「どうしたんだい?祐季」

 その声は、オレが口にする言葉を見越しているようだった。

「オレにも、魔法が使えるかな?」

「ああ、使えるとも」

 親父は笑った。

翌日から、親父は師となり、オレは親父の弟子となった。

だが最初から実技を教えて貰えるはずもなく、当然基礎知識の勉強から入ることになった。

「何事も基礎が大事だからね」

オレが駄々をこねると、親父はいつもそう言っていた。

いくら強力な銃を持っていても安全装置の存在を知って、それを外さないと弾は撃てない。要はそういう事らしかった。


一年ほど経つと、ようやく初歩的な魔術を教えて貰えた。体内の魔力を使用して、

『魔術』を行使する。


魔力とは例えるならば、個人の持つ精神力のようなものと親父は言っていた。

それともう一つ、 魔力とは個人差はあるが誰でも持ち得るものだとも言っていた。

なので、極少量の魔力しか持たない魔術師や、体の最大容量を軽く超えている魔力を持った一般人もいるらしい。

こんな感じで、オレの魔術に対する知識は十分に養われたのだが、実技になった途端親父の表情が曇った。そして第一声が、

「まさか…ここまでとは」

うるさいやい。オレだってもう少しうまくするつもりだったさ。

親父が見よう見真似でやってみろというので、詠唱行程や術式まで完全に同じにし、発現させた。

「はぁっ!」

気合い一発。

親父のようにはいかなくても少しぐらいの風は…!

「…」

「…」

無風。

いや、無風を通り越して静寂が訪れた。庭の木から聞こえてくる雀のさえずりがオレを馬鹿にしているように聞こえた。

「祐季、言いにくいことを言ってもいいかな」

オレはだんまりを決め込む。

それを無言の頷きと捕えたのか、親父は悲しいほど的確な追い討ちをかけてきた。

「祐季、君に魔術は向かないみたいだ」

その言葉自体が呪いのようにオレの脳髄に響き渡った。

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