Secret+No.1
アンハッピーエンドです。
私の好きな作者は乙一さんです。
乙一さんの作品を知っている方はわかるかとおもわれますが、
私も少なからず彼に影響されています。
なのでハッピーエンドで楽しいというような作品とはまた一味違います。
ぜひぜひご賞味あれ。
【秘密】・・・隠して、他人に知られないようにすること。またその事柄。
毎日四十分かけ、電車と徒歩で学校に来、朝のホームルームが始まるのを机に伏せて寝て待つのが相沢和輝。
「おい、和輝聞いたか?」
今日はそんな日課を自転車で十分の野誠に邪魔をされた。
「なんだよ。」
和輝は顔を伏せたまま無愛想に答えた。
「おいおい、朝から元気ないなあ。」
誠は呆れたような口調で、パンと筆箱しか入っていない鞄を机の横に捨て置き、和輝の前の席に座った。「誰のせいだよ。」
日課を邪魔された和輝は機嫌が悪い。
「雪村さん、南庄一に告られたらしいぜ。」
が、その言葉を聞いた瞬間飛び起きた。
「は?」
寝起きで視界が悪いが、目を大きく見開いて誠を見た。
「おはよう、びっくりしたか?」
和輝の額が寝ていたせいで赤いのを、指で教えながら楽しそうに誠は言った。
「いや、べつに。」
額を前髪で隠しながら、気持ちとは反対のことを和輝は言った。
「あれ、お前雪村好きじゃなかったっけか?」
なおも楽しそうな表情で誠は攻める。
「だ、誰がそんなこと言ったかよ。」
同様を隠しきれていないのを自分でも気がつきながら必死で言い訳をした。
「ま、駄目だったらしいけどな。」
誠は、意味深な笑顔を和輝に向けた。
「俺には関係ないけど。」
白を切ってはいるが、安心した顔は隠しきれなかった。
「で、その庄一君今日来てないんだけど、どう思う?」
行動派の誠は、庄一に直接真相を聞こうとしていたに違いない。つまらなさそうな顔で天井を仰いだ。
「何でお前はそう、人の嫌がるようなことを好むかな。」
誠とは正反対な消極的で何かと神経質な和輝には理解できなかった。
「いやいや和輝くん、これは君の親友として、南のやつがどうして振られたのか知るべきではないか?」
もう一度寝なおそうとしている和輝を止めながら誠は言う。
「意味が分かりませんね。」
あえてよそよそしく答える。
「庄一と違う告り方をすれば、成功するかもしれなではないか。」
どこかの評論家のような口ぶりで、完全に伏せてしまった和輝の頭を軽くたたきながら誠は言った。
「告る気なんかないよ。」
その手を払いのけながらそっけなく答えた。誠はちぇ、と舌打ちをし、教室に入ってきた友人の方へ庄一の話をしに駆けていった。
和輝と雪村晴海は中学の頃からの知り合いで、結局知り合いのままではあるが、高校からの晴海しか知らない他の男子には負けない。と、よく分からない自信を持っていた。晴海は決して世間で言う「美人」だとか「かわいい」といった容姿の持ち主ではない。が、なぜか周囲を引き込んでいく不思議な魅力がある。その魅力に、女には興味はないとしている和輝も引き込まれてしまった。南庄一はどちらかというと目立つほうではない。晴海は男女ともに評判もいい。それもあって告白などという賭け事に近いことは誰もしようとは思わない。当然和輝もそのうちの一人なわけで、庄一の告白は衝撃的であった。
続く