第九章 遅すぎる謝罪
数日後。
レオンハルトが帝国を訪れた。
「クリスティーナ」
「お久しぶりです」
以前とは違う。
彼の前に立っても。
胸は痛まなかった。
「謝りたい」
「……」
「俺は君を疑った」
「はい」
「君を傷つけた」
「はい」
「君がどれほど俺を支えてくれていたのか、失って初めて気づいた」
私は黙って聞いていた。
「戻ってきてほしい」
「……」
「俺はリリアンとの婚約を解消した」
私は驚かなかった。
「そして?」
「君ともう一度婚約したい」
私は首を横に振った。
「お断りします」
「クリスティーナ……」
「私はもう、殿下を愛していません」
その言葉を口にした瞬間。
自分でも驚くほど、心が軽くなった。
レオンハルトは苦しそうに顔を歪めた。
「なら……側室では?」
「……何ですって?」
「リリアンを正妃にする予定だった。だが、君を失うこともできない」
「つまり」
私は笑った。
「リリアン様を正妻にして、私は側室になれと?」
「君なら理解してくれると思った」
その瞬間。
私は初めて怒った。
「まだ私を、何でも自分の都合に合わせてくれる女だと思っているのですか?」
「違う!」
「いいえ。同じです」
私は静かに言った。
「殿下は私を一度捨てました」
「……」
「そして今度は、二番目の席を差し出している」
レオンハルトは何も言えない。
「私はもう」
私はカイルの隣に立った。
「誰かの二番目になるつもりはありません」
カイルが私の肩を抱く。
「彼女は私の婚約者です」
レオンハルトの顔が青ざめる。
「あなたが一度捨てた女性を、今度は私から奪えると思わないことです」
「……」
カイルの声は冷たかった。




