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9話 街

「これが地方都市か中々に立派だな。名前は確か……ル、ル、ルノリースト!」

「フォルノースです。ルノリーストは東にある都市ですよ。ドラヴェルト様」


 アシュレットが答える。


「一点減点ですね。ヴェル様」

「ぐっ……」

 

 先端が金属で出来た筆記具で紙に何かを書き込むマグノリア。

 

「その筆記具は何ですかマグノリア先生」

「これはエーテルペンです。軸の中に陣が刻まれていて、定期的にエーテルさえ供給すればインクの補給なしにずっと使うことが出来るんですよ」

「へえ、そんなものがあるんですね」

「そうですか、これも覚えていないと。授業で少し触れたはずですが。このペースだと再テスト確定ですよ」

「ぐっ……」

 

 この世界で初めての外出だというのに。

 だがこのまま不合格にでもなれば、また魔法が塔のいてしまう。


 ドラヴェルトは一旦好奇心を抑え、テスト合格に向けて今日の予定を再確認する。

 

「アシュレット。今日の予定だが最初は街の中にある店でパンを買い、最後にマグノリア先生用の魔術書を書店で買う。という流れでよかったな?」

「はい、その通りです。ただしパンは貴族や富裕層向けの白いパンでお願いします」

「わかった。では店の場所を教えてくれ」

 

 ドラヴェルトの問いを聞いたアシュレットは、マグノリアの方を見る。

 

「私達はお教えしません。街の方々にお尋ね下さい」

 

 マグノリアは首を横に振り、そう答えた。

 

「わかりました、マグノリア先生。これくらいのテストすぐ終わらせてみせますよ」

「はい、そうなるよう期待しております」




ーーーー




「ドラヴェルト様、この調子では我々が飢え死んでしまいますよ?」

「わかっている! アシュレットお前は黙っていろ」


 そろそろパン屋を探し始めて二時間が経過しようというのに、ドラヴェルトは未だに見つけられないでいた。


「大体この街は広い上に人が多すぎる! ここからどうやって白いパンが売ってる店を探せというのだ」


 ちょうど昼の時間なのか、どこの通りも人通りがかなり多い。

 大通りでは平たい角を持つ翼のない龍に似た生き物が荷車を引いており、物珍しいのか子供連れを中心に立ち止まって眺めている。

 そういうこともあり、人垣が邪魔になって街の様子がほとんどわからない。


 せめて子供の身でなければ……。


「それを言っては授業になりませんから。そうですよね? マグノリア様」

「ええその通りですわ。アシュレット様」


 二人に微笑まれたドラヴェルトは、何が何でも自分一人の力でパン屋を見つけて見せると心に固く誓う。


 しかしどうやって見つければいい。

 ドラヴェルトは何か手がかりはないかと、その場でぴょんぴょん飛び跳ねながら辺りを見る。


(ふむ……。そういえば食べ物を持っている者たちは、皆あの通りから出てくるな)


 存在には気づいていたが、人が多すぎてあえて候補から外していた通りだ。


(こうなれば行くしかあるまい)


 その通りの先は市場だった。

 通りに沿って様々な店が並んでいる。

 

 その店の間を多くの市民や人が引く荷車などが行き交っており、人々は周りの人をかき分けるようにして前に進んでいる。


 たがドラヴェルトは比較的スームズに歩くことが出来た。

 それは何故か多くの人がドラヴェルトの方を見るなり、自主的に道を開けようとしてくれるからだ。


(どうしてだ? ああ……後ろの二人がいるからか)


 騎士と聖職者のような格好をした美男美女の二人がいれば、貴族か何かと思って思わず避けてしまうのもわかる。それにドラヴェルトの今の格好も貴族らしい着飾った服装になっている。


 と言っても黒地が多いので、黒髪と合わさって地味な印象は拭い切れないが。


(ん? あれは……。そうだ。その手があったか!)


 串焼きの肉を何度も頷きながら頬張っている髭もじゃの男を見て、ドラヴェルトは閃く。


 あの男のように食べ歩きをしている人の中から、白いパンを食べている人間を探して尋ねればいいと。幸い探してすぐに白いパンを頬張りながら歩いている者を見つけた。


 質の良い服を着た一人で歩いている子供だ。


「そこの……」


 いや待て。

 食事中の者に話しかけるのは、マナーに反する行為かもしれない。

 今はテスト中だ。念には念を入れておくか。


 ドラヴェルトはそう考え、一旦子供の後をこっそりとついていくことにした。

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