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19話 魔術2

 治癒魔法。


 前世では主に水と火、そして光属性の魔法を応用して使うもの。


 簡単な治癒魔法であれば水だけで良かったが、高度でより治癒力が高い魔法を使うとなれば属性の複合化は避けられない。


 一度見たマグノリアが使った初歩的な治癒術は、手に空いた穴さえ塞いで見せた。


 ドラヴェルトの常識であれば、それほどの効果をもたらすのはかなり高度な魔法に該当し、水と火と光の三属性すべてを行使しないと実現しえない高度な技だ。


 だがこの本には治癒術は魔術の一種であると言われているが習得すると、他の魔術を使えなくなる可能性が高い。と軽く一文だけ記載されているのみ。治癒術についての解説は一切ない。


(一度、師に伺う必要があるな)


 治癒属性というまったく別の属性なのか。

 それとも単に水と火の応用に過ぎないのか。


 普通に考えれば一つの属性なのだろうが、それにしてはやはり治癒力が高すぎた。それに本当に攻撃魔術を使いづらくなるのだとしたら非常に困る。


(やはりある程度、前の世界の常識を捨て去る必要があるかもしれんのぉ……。じゃが念のため最後にもう一度だけ確認しておくか)


 常識とは通常便利なものであるが、新たな道を開拓していく場合には厄介な敵になることもままある。


 この世界で魔術や魔法を使うには変換と陣が必須。

 だが前の世界なら必要ない。


 ドラヴェルトはしばらく顔に手を当ててどうするか考え込み、前の世界のごく簡単な魔法を詠唱込みで使ってみることにした。


「我が身に宿りし力を元に、我が指先に雫を生み出せ。 ラクリーマ! ……駄目か」


 今ドラヴェルトが唱えたのは、初心者ですら詠唱を必要としない初歩中の初歩の水属性魔法だ。


 これですら無理とはな……。

 やはり変換と陣が必要なのか?


 いや、まだ諦めるには早すぎる。


 水属性が駄目なら火属性を、火属性が駄目なら他の属性を試せばいいだけの話。それに今のところ危険性は感じない。諦めるのはそれからにしても遅くはないだろう。


「我が身に宿りし力を元に、我が指先に小さき灯火を灯せ。フラーム! これも駄目か」


 体内のエーテルに動きもなく、まったく魔法が発動する気配はない。


「ならばこれはどうだ。我が身に宿りし力を元に、この地を照らす光を生み出したまえ。イルミナ! ……うーむ詠唱は意味がなさそうじゃな」


 どちらも前の世界では、ラクリーマと同じく魔法を覚えたその日のうちに使えるような初歩中の初歩の魔法だ。


 これらを詠唱しても駄目なら、使えない原因が詠唱にある可能性は一旦忘れていいだろう。


(となると問題は変換か……?)


 ドラヴェルトはひらめきを求めて、もう一度魔術書に目を通す。

 魔術を使うにはエーテルをマナへと変換、そして陣を描き、最後に呪文を唱える。


(呪文は駄目。陣はわからんしの……。あとは変換――そうじゃ! マナで使ってみたらどうなる?)


 ドラヴェルトは勢いよく立ち上がった後、胸に手を当てエーテルをマナへと変換する。


 よしやるぞ。


「我が身に宿りし力を元に、この地を照らす光を生み出したまえ……。イルミナ! ぐっ……!?」


 変換したマナが一瞬にして消え、さらにエーテルまでもガリガリと削られていく。それに合わせ耐え難い不快感が身体を襲う。強烈な喉の渇きと上から幕が下りるように視界が黒に染まっていく。


(一体儂の身体はどう……したと……)


 ドラヴェルトは何とか耐えようとしたが、ヨタヨタと歩いた後そのまま床に倒れこんだ。


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