16話 兄2
「それじゃあまずは僕が実践してみるから、あとで同じようにやってごらん」
「はい」
アスリオスは胸に手を当てると、ゆっくりと息を吐きながら目を閉じる。
そしてすぐにまた目を開けた。
「これがフォースの第一段階、身体強化だよ。と言っても見た目ではわからないだろうから……リンデール、何か手頃な的を持ってきてくれるかな」
「はっ」
短く返事をし、リンデールは修練場の各所に置いてある木の丸太で出来た的を持ってきた。それをアスリオスの目の前に突き立てる。
「身体強化すればこんな風に……はっ、ふっ、てぇや! ……出来るようになるんだよ」
アスリオスは声に合わせてまず二本の指で丸太を貫き、次に手刀で穴が開いた部分から下の丸太を斜めに叩き切る。
最後に地面に落ちそうになっていた木片を拳で粉々に砕いた。
「フォースを身体に纏わせたりはしていないのですか?」
「してないよ。純粋な身体能力によるものさ」
それでこれか。
改めて思うがこの力を使えば、魔法使いにとって永遠の課題であった己の肉体の軟弱さを解決出来るかもしれない。
フォースという力に対して、研究意欲がふつふつと湧いてくるのをドラヴェルトは感じる。
「じゃあヴェルもやってみよう。まずはエーテルをフォースに変換するところから」
「はい」
ドラヴェルトはアスリオスのやり方を真似て、胸に手を当て集中する。
瞑想以外の姿勢で変換する事は、マナへの変換を含めて初めてだったが、案外すんなりと変換に成功する。
「出来ました。ここからどうすればいいですか?」
「自分の身体を何かの器だと思って、その中をフォースで満たすイメージをするといいよ」
ドラヴェルトは少し考えた後、自分の身体を前世でよく食料の保管に使っていた細長い壺に見立てる。
それから身体をフォースで満たす為に、エーテルをフォースに変換していく。
(これは……かなり辛いな)
例えるなら連続で無詠唱魔法を使い続けるような感覚か。
魔法が使えない者なら、全力で階段を駆け上がったり駆け上ったりを繰り返す行動が一番近いだろう。
体力だけでなく身体を制御する力も同時に求められている感じだ。
それでも何とかドラヴェルトは、気合で自分の体に見立てた壺をフォースで満杯にする。
引き換えに身体の方は立っているのすらしんどい状態だが、頭だけは何故か不思議と高揚している。
「あに、うえ……で、出来ました」
「その状態を維持したまま、的の残った部分を思いきり殴ってごらん」
「はい! てやぁぁぁ!」
声を出して的を右手で思いきり殴りつける。
拳が当たった的はバキっと音を立ててヒビが入る。
(まだだ!)
完全に折ってみせる。
ドラヴェルトは左手で殴りつけようとしたが、その前に身体に満たされていた力がフッと抜ける。
(まずい、身体が動かない……)
目の前に迫る地面。
だが寸でのところで、腕が横から差し込まれ身体が止まる。
「助かった。アシュ――」
礼を言いながら顔を上げる。
が目に映ったのは、アシュレットではなくリンデールの姿だった。




