14話 フォース2
その動きはまるで小枝を振り払うような軽い動きだ。
だが棒は真っ二つになり地面に落ちた。
「どうでしょうか?」
「うん、凄いと思う。石や金属もフォースを使えば、同じように切断出来るのか?」
「可能ですが厚みや質次第ですね。私の実力だと城壁や質の良い鋼を切断することは厳しいです」
やはりこの世界の剣士や騎士といった存在は、十分魔法使いの脅威になり得る。
ドラヴェルトは頭の中で剣士や騎士の位置付けを大幅に修正し、一旦魔法使いと同じ位置に付けた。
「ならば上位の剣士であれば可能ということだな?」
「はい、もちろんです。エーテルランクで言うと、エキスパートになれば十分可能でしょう」
「ランク? エキスパート? あぁ、授業で習ったな。なんだ僕の従者だというのにまだマスターではないのか」
エーテルランクとは、魔術師と剣士共通の実力を表す階級のことだ。
プライマリーから始まり、ベーシック、アドバンス、エキスパート、マスター、グランドマスター、アークといった順で実力が高くなる。
先ほどの言葉から考えると、アシュレットのランクは恐らくまだアドバンス辺りと言ったところか。
「無茶を言わないで下さい。私の才能だといくら頑張ってもエキスパートの中級か上級が限界ですよ。マスターなんて夢のまた夢です」
「ふむ。そう思うのは勝手だが、自分で限界を決めて上を目指す気概がない人間が僕の従者なのは、あまり嬉しくはないな。せめてマスターくらいは目指して見せると言えないのか?」
ドラヴェルトの問いにアシュレットは力なく首を振る。
「無理ですよ。それに自分だけではありません。今までの先人の記録から自分の限界はエキスパートだと、そう判断しているんです」
「だが記録を参考にしたにしろ最終的に判断を下したのは自分自身であろう?」
「確かにそれはそうですが……」
アシュレットは顔を歪めながら答える。
まだ本心からは納得いっていない様子だ。
何事も最初が肝心だというし、ここははっきりと言うべきか。
「わかった、はっきり言おう。これからも僕の従者を続けるなら己に限界を作るな。僕は最終的にアークを超え、古代文明の強者のみが至ったというその先を目指し、それでもまだ足りないとしたらさらにその先をも超えるつもりだ」
「そんなの不可能です、絶対に出来ません。アークですらその時代に一人いれば良い方なのですよ?」
「可能か不可能かどうかはやってみなければわからんだろう。昔の人間に出来たのなら、可能性は低かろうが決して不可能ではないはずだ。違うか?」
「…………」
アシュレットは言葉にならない呻き声を発しながら、俯き考え込む。
そのまま時が止まったかのように考え続け、チラホラと修練場に人が増えてきた頃、ようやくアシュレットが口を開いた。
「正直、まだ自信はありません。ですがドラヴェルト様が高みを目指すというのならば、私も諦めずに努力し続けようと思います」
光の灯った瞳でアシュレットが力強く宣言する。
「よく言った。それでこそ儂の従者じゃ」
「ははは、ドラヴェルト様またお年寄りのような口調になっておられますよ」
「おっとまた母上に敷かれてしまう。気をつけんとな……」
二人で向かい合って笑う。
「いやー、これは朝から良い物を見せてもらったよ」
「こ、これはアスリオス様!」
アシュレットは、声を掛けてきた人物に対して慌てた様子で礼をする。
黒髪に明るい金色の瞳を持つ青年だ。
その斜め後ろに付き従うよう佇んでいる銀髪の女性。
両者ともに軽装の黒い鎧を身に着け、正面から見て分かるほどに大きな剣を背負っている。
立派な武具に先ほどのアシュレットの対応からして貴族か。
それにあの髪と瞳の色。
もしかすると……。
「久しぶりだね、アシュレット。ヴェルも元気そうで何よりだよ。また歩いている姿が見られるなんて兄として喜ばしい限りだ」
兄と名乗る青年は顔を綻ばせ、ドラヴェルトを迎え入れるかのように両手を広げた。




