13話 フォース
「聞きましたよ、ドラヴェルト様」
アシュレットの上ずった声が修練場の一角に響く。
「何をだ?」
「エーテルをフォースに変換出来るようになったことです。それも何と一日で出来るようになったと伺いましたよ! 本当なんですか?」
「あぁ、まあな。だが何故そんなに興奮している?」
マナへの変換に比べればかなり楽でスムーズだった。
その前にマナへの変換を成功させていた経験が大きい事は否めないが。
「一日ですよ、一日! フォルノスパーダ家直系の血筋の方でも中々おられないんですよ!」
「わかった。わかったから少し落ち着け。それで普通の者ならどれくらい掛かるものなんだ?」
ドラヴェルトは興奮して詰め寄ってきたアシュレットを、手で払いのけながら尋ねる。
「そうですね。半年から一年ほどでしょうか。才能があれば一月も掛かりません」
「それは師匠がついた上での期間か?」
「いえ、独学です。もちろん変換法を知っている前提でですが」
「ほう。思ったより早いのだな」
マナの場合は、本の内容を信じるなら才能がありさらに師匠がついて一ヵ月から半年だったはず。
そう考えると、フォースへの変換はマナに比べて簡単なのかもしれない。
「一日で習得されたドラヴェルト様が言うと嫌味にしか聞こえませんよ」
「ならばどう言えばいい。そんなことよりお前はフォースを使えるのか?」
恐らく前回見たアシュレットが見せた動き。
それがフォースを使ったものだったのだろうと今ならわかるが、念のため確認しておく。
「もちろんです。フォルノスパーダ家直系の従者となるならば、フォースを扱えることが最低条件ですから」
「ほー、それで変換はどれくらいで出来るようになったのだ?」
「半月と少しです」
「なら十分早いではないか。アシュレットもそれなりに才能があるということだな」
無難な言葉を返す。
「ありがとうございます。ですがあまり言葉に気持ちが籠っていない様に思いますが?」
「そうか? まあそうかもしれないな。悪かった。少し気になることがあってな。ところでフォースを使った技か何かを見せてもらえないか?」
治癒術の事について考えを巡らせたかったが、今は術の修行を続けるためにも、剣術に取り組むべきか。
どうも肉体に精神が引っ張られているような気がしてならない。
前世込みで考えれば孫と子以上に歳が離れた若者に対し、不満を表に出した態度で接してしまったことをドラヴェルトは反省する。
「承知しました。何をお見せしましょう?」
「そうだな……。具体的にどういったことが出来る?」
「私の実力ですと、身体強化や武具にフォースを纏わせたりするのが限界ですね。付与も可能ですがまだ一属性のみですし、安定もしません」
と苦笑いするアシュレット。
「そうなのか。フォースを纏わせながら、属性付与してみてくれ」
「申し訳ありません。私の実力では同時に行うことはまだ……」
「そうか、なら剣にフォースを纏わせてあの棒を切ってほしい」
ドラヴェルトは近くの地面に刺さった、大人の足ほどの太さがある木の棒を指さして言う。
「承知しました」
アシュレットは歩いて的に近づくと剣を抜く。
わざとらしく剣を掲げた後、すぐ剣が薄い光を纏う。
アシュレットは、剣を下ろすとそのまま何の構えもなく的に向かって剣を振った。




