第三章 ランチタイム、ブレイクタイム、ぐっすりお昼寝タイム
コツコツコツ。
先生が黒板にチョークで書く音。
課外実習も終わり、今度は同じイオ先生の座学の授業なんだけど…。
この授業には天敵がいる。
え?なにかって。
敵はつかみどころもなく。
正体もつかめない。
そして極めて概念的…存在?
え?悪魔?
違う違う。
まぁ魔には魔なんだけど…。
眠い方の魔。
そう、睡魔である。
窓際から入るやさしいあたたかな光があたしを惑わし、夢の世界への扉を開けそうになる。
今日のあたしの最大のお仕事はイオ先生の授業を耳の穴かっぽじって、最後まで聞くことなのである。
ちなみに隣の席のマリアは寝ない。
あたしは成長期か何かなのだろうか。
「ジャイアントマメマメの豆は天界では貴重な植物性たんぱく質の一つであり、ほかの天界産の野菜と比べても…。」
ふむふむ、たんぱく質が…とっても…豊富で?
炭水化物が…。
脂質が…。
三権…分立?…。
私の頭の中で回る三権分立、三半規管。
やばい、目、閉じそう。
というかもうすでに眠い。
授業開始一分後。
あたしの精神はすでにまどろみの中にあった。
眠気に襲われ、途中から文字があやふやのふわふわに…。
整然とした文字の羅列も乱れ、途中からノートに羽ペンでぐじゅぐじゅの線が描かれる。
あーなんかめっちゃ眠い。
今日のお昼は…はんばーぐ弁当?、北極にあるのはあいすばーぐげんしょう…むにゃむにゃ…。
「ちょっ、アリア寝てる…。寝てる…。」
ほっぺたにツンツンとした感触。
これは羽ペンの羽の部分かな?
ちょっとくすぐったい。
隣のマリアにツンツンされ、やっと起きるあたし。
「ふぁあぁ?あたし、寝ちゃってた?」
「うん、ぐっすりとね…。」
隣で微笑むマリアの顔。
「あとついでにヨダレも…。」
見れば、机の上にヨダレの跡、慌てて、机の上をふきふき。
あっ。ノートにもついてる。
ハンカチを取り出しこっちもふきふき。
ちなみにマリアにハンカチ貸してって言ったら断られた(当たり前( ̄― ̄))。
「あっ、ノート破けた。」
途中まではきれいに書いてたのにな…。
あとで、マリアにノート見せてもらお…。
ヨダレで使い物にならなくなったページをはぎ取り、気を取り直して…。
よしっ。今度は大丈夫。しっかり授業に集中…する…ぞ。
ぜったいに…寝ない。
決意を新たにイオ先生の授業に耳を傾ける。
「今はもう行くことができませんがかつての地上では空を飛ぶ列車に…。様々な文明の利器が存在したと言われ、その地上の文化は天界にも影響を…。」
ぜったいに寝な…。
いん。
だ…。
からね…。
羊が一匹、執事が一人、お世辞は一人前…。
私の脳内で繰り広げられる謎映像。
古風な映写機で移されるその内容はまさにわけワカメ。
昆布にワカメ、グローブジャングル…。
くがー。
一瞬で意識を手放した私。
「って、もう、寝てるし‼早くない?さっき起こしたばっかなんだけど。」
べちんと両方のほっぺたに感触。
「ほえ?」
「はーい。起きて授業聞こうね~。」
「ほえほえほえほえー。(ほっぺた触らないで)」
☆☆☆
「アリアさん。寝てる時にインク壺ぶちまけませんでした?かわいい顔が台無しですよ?インクまみれで…。」
「ふぇ?」
「はーい。アリアうごかないでねー。」
ごしごしごしと、雑巾みたいなやつでマリアにご丁寧に拭きあげられる。
「いてて。」
雑巾みたいなやつの表面がチクチクして肌に刺さる。
ソレ顔拭いて、大丈夫なヤツですか?
あたし、女子なんですけど…。
銅像か、お墓と勘違いしてません?
「はい綺麗になった。もう寝ちゃダメだぞ。」
イオ先生にちょっとだけお小言頂戴した。
「はい、すいません。努力します…。」
私の肌剥げてないよね?
大丈夫だよね?
この後トイレで念入りにチェックする私なのだった。
☆☆☆
「え?あれ?雑巾じゃなくて、質の悪い贈答用のタオルだよ。もう、アリアったら親友の顔、そんなんで拭くわけないでしょ?」
「雑巾じゃなくてよかった…。」




