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異世界でマーモットの王となりました  作者: バッド
1章 俺たちマーモット

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8マモ マーモットは進化を許されない

『進化先:マーモット+1』


『マーモットが他の種族になるのは神様に禁じられています。可愛いマーモットはそのままの種族が良いのです』


 ごーん。頭にショックの鐘が鳴る。


 悲報。マーモットの可愛さは罪でした。可愛いから神様が許さないらしい。


『マーモット+1:全ステータス10アップ。状態異常耐性がつく。毛皮の艷やかさがアップ。エネルギー効率アップ。寿命がアップ』


 ぬぐぐぐ、ぬぐぐぐ。わかる。わかるけどさぁ。ハリマーモットとか、角マーモットとかウイングマーモットとかになっても困るけどさ。マーモットはそのままが可愛いのは同意するよ。


 でも進化禁止かぁ。少し残念だ。


「はぁ〜。でも、効果はなかなか良いな。状態異常耐性って、ネギやチョコレートを食べたりできるのか? でも、マーモットにネギやチョコレートは厳禁だから食べないよ? それとエネルギー効率は消化系が強くなった? 寿命がアップしたのも良しだ」


 残念であるが、マーモットの可愛さと、仲間との繋がりが失われなかったことに安心だ。……にしても寿命アップと状態異常耐性か……これ、繁殖力が減るんじゃないだろうな? マーモットは春に繁殖するんだ。弱い動物の論理に従い多く産む。しかし強くなり状態異常耐性もついた上に、寿命アップ。なんとなく繁殖力が変わったような気がする。


「まぁ、今は生き残ることが重要だし、先のことは今は考えないでよいか。『進化レベル1』を取得!」


『経験値一万を消費し、固有スキル『進化レベル1』を取得しました』


『進化先をマーモット+1にしました』


 進化スキルを取得すると身体が仄かに輝いて、身体が熱くなる。ふつふつと体内から力が湧いてきて、今までと違った感覚を得る。


「おぉ、これがマーモット+1か。ネーミングセンスゼロだけど、なんか強くなった気がするな。進化して良かったよ。これが進化なのかは分からないけど」


 ステータスが倍だ。人間に比べると強いのかは分からないけど、これならもうスライムには負けまい。


 フフンと鼻を鳴らして足を踏み出そうとして━━コロンと転がった。


 あれぇ? 力の入れ方がよくわからないぞ? もしかしてパワーアップしすぎた副作用?


「動けないぞ! なんか力を入れるとビトンって転がっちまう!」


「ほ、本当です。これでは走れない!」


「もう寝てれば良いんじゃないかしら?」


「コロンコロンって転がるよ〜」


 見ると、ガブたちも転倒して、地面に転がっている。駄目だこりゃ、早急に慣れないと、今魔物に襲われたらあっさりとランチにされそう。


 とにかく力を入れると過剰に入れてしまう。立ち上がろうと手を地面につけると、バネのように跳ね返るし。


 なにが起きてるのかをこれは正確に『理解』した。マーモットでは既に操りきれない能力になっているのだ。そして、その対策も思いつく。


「皆、『体術レベル1』を取得して! 身体の動かし方を覚えるには体術が一番のはずだ!」


『経験値千を消費し、体術レベル1を取得しました』


 取得した途端、最低限の体術と、繊細な身体の動かし方がわかるようになった。再び起き上がっても、もはや吹っ飛んだりしない。本当はこのスキル、取得するつもりはなかったけど、背に腹は代えられない。


「皆も大丈夫……のようだな」


 ミカたちを心配して声をかけるけど……


「ふわぁ、元に戻ったよ。もうゆっくりと寝れるね。おやすみ〜」


 寝ようとしていた。安心して手足を伸ばしておなかを見せて寝そべると、目を瞑ろうとしている。


「まだ寝たら駄目だって! 残りの経験値で他のスキルを取得してほしいんだよ! こら、寝るな!」


「えー、もう寝ょうよ〜、ほら、もう暗くなるよ?」


 マーモットは早寝遅起です。たしかにそろそろ夜になる。いつもなら寝てる時間だ。でも、もう少しだけ頑張って欲しいんだよ。


「ここで寝ると明日のご飯抜き!」


「早くスキル取得するよぅ」


「起きたぜ! 何を食べるんだ?」


「ふむ、天才の僕にはわかりました。藁を上手く敷き詰めるスキルですね?」


「さっさと言いなさい。どんなスキル?」


 四人ともパッと起き上がり、ピギーと鳴くので、その現金さに苦笑しつつ説明する。


「まずは全員『念話』。そして、ガブは『土精霊召喚レベル1』、ルーは『風精霊召喚レベル1』、リリーは『火精霊召喚レベル1』、ミカは『水精霊召喚レベル1』だ」


 爪をフリフリ振って説明する。残り経験値2千。彼らにはサバイバルに必要なスキルを取得してもらう。


「なんで『念話』なの? 面と向かって直接話せば良いじゃない。死にスキルよ?」


 進化で少し頭が良くなったのか、多少頭の良いことをリリーが言ってくる。たしかにこの距離で『念話』の意味はないように思えるんだけど……。思えるんだけど……。


「俺たちの会話、ピギーって周りに聞こえるらしい。家ならともかく車の中だと、周りに俺たちがいますよ。一口サイズの美味しいマーモットですよって伝えるだけなんだ。だから『念話』が必要なわけ」


「……な、なるほど。それは盲点だったわね。私たちマーモット目線では分からないことね。これからは気をつけないといけないわね。でも小声で話せば良かったんじゃない?」


「遠く離れていても会話できるし、今のうちに取っておくのがよかったんだよ」


「脂汗かいてない? ポカンと口を開けて、ソワソワ尻尾を振っているように見えるのは気の所為かしら?」


「キャベツあげる」


「気の所為だったようね」


 シャクシャクとキャベツを食べるリリー。断じて俺の方が頭が悪かったわけじゃないよ? 視点の違いってやつ。うん、そうに決まった。


 では、話を次に変えよう。もう念話のことについての話はおしまいだ。おしまいだからね?


「次に取得してもらった精霊召喚だけど、使い物にならないと思ってない?」


「天才マーモットたる僕の脳内の記憶では、それぞれほんの小さな力しか発動できないとあります。このように、マーモットの名において命ずる、いでよ『風精霊』!」


 眼鏡キャラを意識してるのか、ルーが眼鏡も付けてないのに、目元をクイクイと手で押さえながら、風精霊を召喚する。うん、マーモットの名において召喚されるのは嫌がられないと良いんだけど……。あと、この詠唱を教えたAIアシスタントは蹴りたい。獣魔じゃないんだぞ。


 傍目から見たら、でっぷり太ったマーモットがお手々で顔を押さえて、ピギーと鳴いてるだけです。ラブリーマーモット。哀しいことに召喚士のかっこよさは欠片もない。


 だが、魔法は正確に発動して、魔法陣が中空に描かれると、バレーボールサイズの緑色の六面体クリスタルが回転しながら現れる。クリスタルは僅かに風を纏っており、つむじ風を起こしていた。


「ふ、ワレワレハマーモットダ」


 そして、扇風機の風で変声を楽しむ宇宙人ごっこを始めた。これだろと、チラチラと見て得意そうな天才マーモットルシフェルです。もちもちのほっぺたが風でプルプル震えて可愛らしい。

 

「違うよ。これは組み合わせて使うんだ。リリー、火精を呼び出してくれ。そして風精霊の隣にくっつけるんだ。ガブは土精霊に風精霊と火精霊を囲む網目状の籠を作ってもらって。薄ーい土の籠で、万が一にもマーモットの手が隙間から入って火傷しないように」


「わかったわ。でも炎を風と融合させてどうするの?」


「モニュメントでも作るのか? 命じるだけだから簡単だけどな」

 

 炎と風が融合し、土の籠で覆う。土は焼かれるので陶器のように硬くなり、熱気が周囲を温める。うん、簡単な暖炉の出来上がり。一人用コタツみたいな小さな物だ。


 精霊たちは通常は魔法を使うわけではない。単に存在しているだけだから、弱まることなく存在し続けられるので、省エネできるわけ。


 皆は何をしているのかと、不思議そうに鼻をひくひくと近づけている。火を扱うことを知らないので当然だ。


「……へー、あったかい。でも、おうちの方があったかだよ? これは必要なの?」


「そうだそうだ。この家があればいいじゃねーか。もう寝ようぜ」


 でも、エアコンの効いたバギーの方がマーモットたちにとっては快適だ。コタツは小さいし、外で使ってもあまり温かくない。ミカたちはバギーに戻るとコロンと転がり寝ようとする。すぐに興味を無くしちゃうのはマーモットの本能なのだ。


 でも、しっかりと言い聞かせないといけない。これからの展望を説明しないと生きていけないんだ。マーモットにとっては辛いことだけど、心を鬼にして話さないといけない。


「皆聞いてくれ。俺たちはもう野生の生活をしなくちゃならないんだ。これからは自分たちの力で生きていかないといけないんだよ。おうちもエアコンもオヤツもご飯も自分たちで用意するんだ! これからは俺たちを襲うやつもいるだろうし、しっかりとした心構えをしないといけないんだ!」


 野生のマーモット生活。エアコンが選択肢に入っていることに疑問を持たない転生マーモットである。冬眠する気は、サラサラない野生のマーモットだ。


「え〜。ご飯誰も持ってきてくれないの?」


「あぁ、ご飯も自分でとらないといけないし、それにおうちもしっかりとしたところにしたい。だからこそ、このコタツを使わないとならないんだ。バギーをおうちにするのは限界があるからね」


「なるほど。炎というものを使えば暖かいですものね。天才たる僕には分かりますよ。バギーに置けばもっと暖かいです」


 ふふふと笑って、コタツにベタンと身体を乗せるルー。もうウトウトして寝そうだ。リリーなんかおなかを見せて、すやすや寝てる。危機感ゼロなんだから……。ここは俺が頑張らないと!


 気合を入れる俺の目の前に、ステータスボードがいきなり映し出される。目を丸くして、なにが起こったのかと、表示された内容を見ると意外な内容だった。


『おめでとうございます。マーモットは初めて火を扱いました。これは貴方にとっては小さなことですが、マーモットたちにとっては大きな一歩です。固有スキル『始祖』を手に入れました!』


『始祖:知性体となった初のマーモット。マナが50増える』


 なんと初の火を扱うマーモットになっちゃった。猿が炎を使い文明をもつ生命体になったように、遂にマーモットも知性体になったんだ!


「ねーねー、『始祖』手に入れたよ! ほらほら炎を使ったからだって!」


「ん〜。俺も『始祖』増えたな。ふ~ん」


「ふ~ん、じゃないって! これは凄いことなんだよ! 俺たちは猿から進化した人間のように……」


「猿と人間の違い、よく分からないよぉ」


「zzzzz」


 興奮しているのは俺だけで、皆は身体を寄せ合って寝始める。もぉ~、この凄さが分からないなんて、皆はマーモットだなぁ。


「仕方ない。俺も寝るか」


 興奮しているのは俺だけなのでがっかりだ。なので、皆の上に乗っかって寝ることにする。もふもふな毛皮とぷにぷにのお腹。ちょうどよい布団になるな。


 おやすみなさーい。今日は疲れたよ。


 ━━なにか言うことがあったような気もするけど、眠たいから忘れたよ。基本、マーモットは明日のことを考えないのだ。それは転生した俺もです。気をつけないとな……zzzzz。


 そうして俺たちのサバイバル生活の長い1日は終わったのであった。

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― 新着の感想 ―
こあんやあとか懐かしいですね中二心をくすぐるルビの漢字とかもいろいろあって面白かったなぁw
小声で話せばいいことに気付くとは天才ではないだろうか
風精霊で宇宙人ごっこを初めてやったマーモットは実績にならないの? 初めてやった人類にも宇宙人(偽)という固有スキルをあげたかった。
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