52マモ スパイなマーリン
(回帰者ねぇ)
本日はスパイなマーモット、その名はマーリンです。子供たちの中でも明らかに不審な4人を見張るべく、スパイとして華麗に侵入しています。
「ねぇ、見てみて? マーモットってね、お触り禁止で本来はこんな膝の上に乗せてキャベツを食べさせたり、撫でたりできないんだよ? よくわかんないことになったけど、こうやって撫でることができるようになったのは唯一いいことかな」
「お前、幸せなやつだなぁ、俺たちは異世界に召喚されたんだぜ? もう戻れない可能性が……いや、後ろ向きな考えになっても仕方ないか、本来のお前は中年女性になって、悲しそうに皆を助けられて良かったと笑ってたからな」
「見野君……妄想は口にしないほうが良いよ? そういう妄想はせめて小説にしておきな?」
「お前にそういう風に慰められると、本当に俺の妄想かもとか思っちまうよ」
見野という男子がやれやれと肩をすくめると、周りの子供たちも苦笑気味に、二人のやり取りを止めることはない。どうも冗談の言い合いとかではなさそうだな。
(どうもこの子供たちは他の人たちはとは違うようだな。ふふふ、ゼロゼロマーモットとして、拠点内を散歩、いや、確認していて良かった)
ランという少女のお膝の上にちょこんと乗せられて、頭を撫でられながら、キャベツを食べてるけど、スパイだよ、そこら辺をウロウロと散歩してたら捕まったわけじゃないよ。
最初はそっと頭を撫でるだけだったのに、人慣れしてるとわかると抱っこされて、毛皮をさわさわ撫でられて気持ち良い。目を細めて、フワァとあくびをするとランに寄りかかりながらスパイです。
今は彼らの建てたお家の居間にて、遠藤英雄、見野麻生、数奇ラン、本屋鍵音の話を聞いてるんだけど、その話の内容が極めて面白い。
「見野君の知ってる未来ならどうなってたんだい? そこを教えてくれると助かるんだけど」
遠藤という真面目そうな男子が尋ねると、見野は困った顔で頭を振る。
「本来はあそこで数奇が考えなしにコインと寿命を交換して、一気に中年女性まで歳をとる。そして考えなしにスロットをしまくって、その中で大当たり5枚揃いの聖剣カリバーンで先生たちを吹き飛ばすんだ。そして爆発音を聞いて現れたジャイアントゾンビに本屋は叩き潰されて、さらにスロットをして出した魔法のスクロールを考えなしに使って倒す」
「ねぇ、さっきから私が考えなしに行動してるように聞こえるんだけど、私はいつも綿密にして戦略的な行動をすることを心に決めてるよ?」
「赤点を出すのが戦略的なのか?」
「赤点ギリギリだから大丈夫。戦略的に無駄な力は使っていない証明だよね?」
「ええととと、そんなことではなく、私死んじゃうんですか!? 始まってすぐに死ぬモブ役みたいにですかっ!」
「生き残れるように選択したんだから良いじゃん。それよりもだ、俺の歩んだ未来とは違うんだよ」
抗議をする鍵音をスルーして、戸惑った表情になる見野だけど、どうも彼は未来から過去に飛びされたらしい。よくある悲惨な未来で死んだら、始まりに回帰していたと言うことらしい。普通は回帰をしたことを隠すのに、2人にはバレたらしい。ランは回帰を理解していないようなので2人である。
「あのアミさんという人だね?」
「あぁ、回帰で見たこともない奴が現れたら、だいたい憑依者だったりするパターンが多い。あの美女はハズレスキルが最強だったパターンだけど、それだけじゃ同じ未来を歩むことになるはずだから生き残った理由にはならない。恐らくは憑依者だからこそ、違う行動をとったと思うんだよ。切れ者ぽいから憑依者だということを黙ってるんだろうな」
「あれって、下手なナンパじゃなかったんだ。見野君は無謀な試みをしてるなぁと思ってたのに」
「お前憑依者だろとかどんなアグレッシブなナンパだよ! まぁ俺も直球すぎる質問をしたと反省してる。普通は隠すもんだもんな」
「憑依者ってことは、人の肉体を奪ってることになるから、普通は隠すよ。でも、憑依者の可能性があると思うのは僕も賛成。これだけ変なことが起きてるから、なにが起きてもおかしくないし、それなら未来が変わってることに説明がつく」
見野の話を茶化すランとは違い、まともな話をする遠藤。私死んじゃうのと慌てる鍵音はガン無視して話は続くけど、アミは憑依者じゃないよ。転生者がここにいるよ。
ランに着ぐるみよろしく抱っこされながら頭を撫でられているおとなしいマーモットが転生者だとは誰も思わない模様。
「……でも、アミさんは良い人っぽいよ。皆を助けてるし、異世界人? との会話もできるようだし」
基本善人っぽいランは楽観的に言うが、そこは見野も遠藤も同じようで、ランの言葉に頷く。
「そこがまだ助かったところだな。憑依者が悪人とか、最悪な展開だし」
「この先の本来の未来はどうだったんだい? ジャイアントゾンビを倒した後の話なんだけど」
「この先は学校に戻って、ランのスロットで出た武器で武装すると、冬の間は近くのコンビニとかから食料を集めて、おとなしく引きこもり、春になるのを待つ。そこからは俺たちは独自の集団を結成して行動をすることになるんだよ」
「順当なところだね。この積雪だから、見動きできないし、引きこもり一択は正しいよ」
「いや、遠藤の言う通りに一見順当の選択に見えるんだけど学校といういかにもな拠点は、他の奴らから見ると格好の狩場だった」
「格好の学校……」
「数奇のお口を誰かチャックしてくれ。でチートアイテムを大量に持つ俺たちはゴブリンやオークなどの知性を持つモンスターはもちろんのこと、人間たちからも狙われて多くの学生が死んじまった。這々の体で逃げ出して、異世界人の王女たちに助けられる……けど、その先は不利な取引をして奴隷のようにこき使われる人生となったわけ。で、俺は自身の固有スキルを使うこともできない無能として最底辺で生きてきて、最後はゴブリンの集団を呼び寄せる囮として死んだんだ」
「なんというか……妄想乙? せめて心の中では自分自身を主人公にしようよ」
「数奇の口を押さえてくれ、本屋」
常に余計なことを口にするランは遂に鍵音が口を押さえることとなり黙ることになってしまった。ムグムグ暴れるので、マーモットもお口を押さえてあげたよ。
「俺たちはこの世界に召喚されたらしいんだ。だけど失敗して日本全体を召喚したので王族や高位貴族、首都とか大きな都市は壊滅したから、小規模の貴族たちが我こそはと王になろうと活動し始める。それに対抗するかのように日本人の何人かも王となろうとして、人を集めるんだ。気づいているかもしれねーけど、日本人の固有スキルで戦闘や生産に使えるスキルを持つのは少ない。中年以上は『健康体』とか『美肌』とか使えねースキルばっかなんだよ」
「あぁ、固有スキルがある程度人の望みを叶えるとしたら、日本人ならそうなるだろうね。話は分かったよ、そういう人たちもカモにされるというわけか……。この世界は戦国時代となり、僕たちは悲惨な未来となると」
日本人はどうやらしょうもないスキルが多いみたいだな……でも、中年以上なら健康診断で引っかかる奴が多いから、健康体は欲しいよ。美醜を気にする人なら美肌とか、美少女化とかのスキルを持つ奴もいるかもな。美少女とか美女とか幼女には要注意かも!
ふんふんと聞くスパイなマーモットだが、この話の流れだと━━。
「だから、一人二人が戦うだけじゃない、皆で戦う意識を持たないと。俺たちは戦える集団になる必要がある。予想外だが、あのアミという女をどうにかして仲間にしてな」
「あの人なら現在の状況を説明すればいいんじゃないかな? 回帰は隠しつつも、危険性を説明すればいいんだ」
「あぁ、俺もそう思ってた。それに出会った王女は学校近くだった。あの装甲車で数時間移動してたから、この冬の間に周囲を探索しても出会う可能性が低いしな。その間で戦力を向上させる!」
力強く手を握りしめる見野の言葉は心強く、皆も頷く。でも、数時間散歩していたマーモットのお陰だよね? 学校から数百キロは離れてるもんね、歩きならここまで1週間はかかる。しかも魔物を警戒しながらならもっと時間はかかるだろう。
これを計算に入れて俺は散歩をしていたのだ。決して放置車両を潰したり、魔物を轢き殺すことに快感を得て走ってたわけじゃないよ。生存者を探していたのだ。
「でもアミさんが信仰している神様を聞いておいたほうがよい。先生は神農だったが化け物になっていただろ? しかも信徒となった奴をカボチャ頭にしてたしな」
「たしかに。見野君の未来では同じような化け物に変化させる神様とかいたのかい?」
「それがわかんねーんだ。俺たちは異世界人側についたし、王を名乗る日本人たちと戦っても、下っ端ばかりだったから。でも、今思えば、異世界人をやけに嫌う奴が多かったように思えるな。もしかしたら、敵の王が化け物に変わるのを見てきたか知っていたのかもしんねー」
悪魔に魂を売り化け物となった者たち。しかもそれは日本人だけとなれば無理もない。言葉を交わす事も出来ずに化け物と化す日本人たちを恐れてもおかしくない。
「というわけでだ。俺たちの神様は大丈夫なことは知っているが、念のため確認しておこう。俺の神様は『ノルン』だ。以前は時の神様であるのに、固有スキルはなんの役にも立たねーじゃねかと思ってたけど大違いだった。今はその固有スキルもないから、もう使えねーかもしれねーけど」
「僕はヘラクレス様だ。『勇者』の力と合わせるととてつもない身体能力を使えるみたいだよ」
「ヘラクレスの『超身体能力』は半神であるヘラクレスだからこそ耐えられるからな。使うとしても数秒に抑えておけよ? そうしないとお前死ぬか、再起不能の寝たきりになるからな」
「未来で僕はそうなってたんだね? 助かるよ」
見野は遠藤の未来の末路を知っているのかな? スキルの副作用を知っているのは大きなメリットだな。
「私は運命の神『フォルトゥナ』だよ。毎日タワシをくれる神様!」
常にタワシを出し続ける少女である。本物のフォルトゥナだったら、かなり不敬かもしれない。
「お前の運が悪いだけだろ。で、本屋は?」
皆の注目が鍵音に集中し
「う、うわ~ん! 私だけ何もないんだぁー、私の神様はどこー! 私は誰も神様がついてないよ!」
鍵音はずるいよと叫ぶと部屋を出ていってしまうのだった。
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