47マモ 生徒たち
『おめでとうございます! 貴方は王を倒しました! 経験値10000取得。雑魚いカボチャも滅ぼしたので追加で経験値10000を取得します』
経験値が入った旨の悪意のありそうな連絡が入るがそれどころではないマーモットです。
天井が崩れて、瓦礫が押し潰そうと落ちてくるし、足元がドカンドカンと落ちてゆくのだ。
「うひょー、ビルが崩れる! 崩れるよ? おのれ、ジャックオーランタンめ、やられたからって自爆スイッチを入れたな!」
テテテテテテ
四本脚で急いで廃ビルを脱出してます。なにせ狡猾なる農王とやらが押した自爆スイッチにより廃ビルが崩壊し始めているのだ。根本から廃ビルは吹き飛び、自重に耐えられなくなった廃ビルが俺を押し潰そうとしてます。
断じて、マーモットブレスのせいじゃない。第二形態のマーモットブレスは強すぎるけど、眼前の風景は跡形もなくなり、サラサラと砂埃が舞うだけになっているけど、マーモットブレスのせいじゃないもん。小動物が廃ビルを吹き飛ばすなんてできるわけもんね? 万が一俺のせいだとしても、マーモットは鳴くのが商売だから責められないと思うんだ。
というわけで、高速にて駆け抜けて脱出を目指すマーリンです。脱出ゲームスタート!
ゴゴゴと廃ビルが崩壊する中でも余裕はある。なにせ、俺は数々の脱出ゲームをしてきた経験者だ。爆発まであと何分と出ても、余裕を持って宝箱を開けようして失敗しまくり、ようやくのこと銃の部品を手に入れて爆発に巻き込まれるテクニックの持ち主なのだ。
『プレイヤー、予想するにこの廃ビルが崩れる時間は━━』
何分だ? 大丈夫、途中で宝箱がなければ余裕で脱出できるテクニックを持ってるから。
『5秒です』
「え」
現実はゲームのようにはいかないと、マーモットは理解しました。
レイの言うとおり、廃ビルは一気に崩壊し、瓦礫が土砂となり、俺を押し潰すのであった。
◇
「まきゅ」
崩れて小山となった瓦礫がガタガタと動き、ピョコンと埃だらけのマーモットが頭を出す。
「危ない危ない、第二形態じゃなかったら死んでたかも」
高ランクの身体能力と高レベルで攻撃を防ぐ魔法障壁とマーモットの穴掘り能力の三つの力は廃ビルが崩壊し、埋められてもマーモットは大丈夫だと体験しました。
身体が埃だらけだよ、ペチペチ落としながら周りを見ると一面更地となっていた。ヒューと風が吹き、雪が舞うのがわびしさを感じさせる。
ジャックオーランタン、恐るべき敵であった。簡単に倒せたけど、実際弱かったけど、それでも第二形態にまでされたのだ。基本能力はかなり高いのが王なんだろう。これから他の王と出会った時は気をつけないといけないね。
「とはいえ、そこらに王がほっつき歩いているわけでもなし、マモベースに戻ろっかな」
ウ~ンと背伸びをして、周囲を見渡すと遠くにマモベースが駐機しているのが見えた。どうやら安全を確保するために離脱しておいた模様。さすがはアミである。
そんじゃ合流しようかなと、のんびりと歩き、マモベース近くに、疲れた様子でよろよろと歩く二人の人間がいることに気づく。
「お~い、みかんから戻ったんだ、中に入れてくれよ〜」
「くそっ、鈴木と佐藤コンビはモブでありながら、死なない立ち位置だと思ったのに。クマに変身する美女を恋人にしたり、非日常を安全な立ち位置で眺められる美味しいキャラ位置だと思ってたのにひでーめにあった」
「佐藤の口車に乗せられた俺が馬鹿だったよ。にしても、みかん状態で放置とか酷くないか? 冬じゃなかったらマーモットとかに食べられていたかもしれねーよ」
「お前だって、話に乗ったろ! くそっ、佐藤は二枚目じゃなくちゃいけないのか。運動不足のオタクはダメなのか」
「運動するアニメに影響されて、体を鍛える奴なんて実際いないしな……。オタクというか、弱気で不健康そうなのがイメージ悪いんじゃないかな? あと清潔感と服のセンスと会話力と」
「正論を聞かせるなよ。分かってる、お互いに分かってるだろ。ワンチャン、鍵音ちゃんはオタクに優しいと思ってたんだけどなぁ」
「あの子は数奇のガードが硬すぎて会話もできねーよな。まぁ、美少女二人が抱き合う姿に新たなる扉を開いた奴も多いけど」
二人して悔しがったり、罵り合いをしたり、グヘヘと笑ったりと忙しそう。
名前を聞かなくても、鈴木と佐藤と分かるセリフありがとう。みかんってなんのことだろ? 呪い? 元に戻ったのなら別に良いか。マーモットはのんびりと暮らせば良いだけで、細かいことは気にしない性格なのだ。
『アミ、ボスは倒したから開けてくれ』
『了解であります』
テチテチとハッチに近づくと念話を送ると、重々しい音を立ててハッチが開いていく。「おい、マーモットだよ」「高級ペットの王様だ、あのデブリスは一匹100万円するんだぜ」と、俺を見て佐藤と鈴木がコソコソと後ろで騒いでいる中で、飛び出してきた人。
「おきゃーり、まーちゃん。お散歩しゅるならニニーにちゃんとほーこくしないとだめでしゅよ」
「むぎゅう」
強烈に抱きしめてくるのはニニーヴだ。幼女はプンプンと怒って、俺の頭を高速なでなでで擦ってくるので、少し痛い。でも、マモベースを飛び出しとても心配をかけたようだから、諦めて抱っこされておくか。
ぶら~んと抱っこされて、幼女と一緒にマモベースに入ると、まさか幼女が出てくるとは思わなかったようで、遠慮がちに二人が揉み手をしてくる。
「え~と、入っていいっすかね?」
「俺たち遭難して、いや、この場合、遭難でいいのか?」
「???」
幼女は話しかけられてもコテンと小首を傾げて不思議そうにしている。原因は明らかで、言葉が通じないためだ。だが、哀れっぽい小物ムーブをする二人の状況は分かるようで、ニパッと笑顔を見せると手招きして、なかに入れてあげるのであった。
そして物珍しそうにキョロキョロと挙動不審に見渡しながらついてくる2人とブリッジに到着すると━━。
「お願いします。この先に学校があるのですが、多くの学生が残っているんです。どうか助けに向かってくれないでしょうか?」
「カリバーンをあげてもいいですから、みんなを助けてください。本当にギリギリで生きてるんです」
「お前、それはカリバーンじゃねえって言ってるだろ。その取引をするとあとで激怒されるぞ」
「あたたたたた」
四人の子供たちがアミに必死になって頭を下げていた。最後の女の子だけよく分からないけど、状況は分かるよ。
「おかえりなさい、ボス」
「たらいま〜。ねーねー、見てみて、まーちゃんね、埃で真っ黒くろくろマーモットなんだお。あとできれーきれーにしてあげなくちゃ、ニニーいしょがしい、いしょがしい」
大変なんだよと、忙しいふりをする幼女である。忙しいと口にするのが嬉しくて仕方ないようで、やれやれと俺の頭を撫でていた。
そんなほのぼのな光景も四人には目に入らないようで、アミへのお願いは続いている。鈴木と佐藤が声をかけると、喜びの表情で良かった良かったと言うが、感動の再会シーンはモブ二人にはないようで、すぐにお願いに戻るので、二人が少しかわいそう。
にしても、アミにお願いしても無駄だ。ここのボスは俺であり、決定権は俺が持つ。アミは俺の許可がないと絶対に動かないからね。
チラリと横目で撫でられている俺を見てくるので、コクリと頷き許可を出す。ここにきて助けないとの選択肢はないからな。
「わかったであります。それではマモベースを発進させますので、案内してください」
コントローラーは引き出しに隠して置いたようで、パネルを操作していくアミ。そのできる軍人さんの光景に皆が尊敬の視線を送る中で学校に向かうのであった。俺もマモベース発進ってやりたかったなぁ。でも、マーモットが操るのはさすがに怪しいから我慢して、隅っこで寝ていようっと。
◇
学校に到着したら、大騒ぎとなった。
「おい、自衛隊が助けに来たぞ」
「あたしたち助かったんだ」
「早く乗せてくれ」
マモベースが到着すると、よほどきつい生活をしていたのだろう。軍用の危険な揚陸艦なのに、無防備に学生たちは飛び出してきて、マモベースを囲んでくる。
「ハッチオープン。避難民は貨物室にて待機してください。エアコンをつけておきますし、軍用レーションを配布してもよいでありますよ、軍用レーションは倉庫にあるので、持っていくといいです」
「ありがとうございます。そこまでしてもらえるなんて、どうお礼をすれば」
「早く行くであります。お礼はあとでもいいですよ、今は皆を助けるのが先決でしょう」
「はいっ、本当にありがとうございます」
子供たちは満面の笑顔でブリッジを出ていき、アミはさりげなくブリッジのドアをロックして他者が侵入するのを防ぐ設定にする。まぁ、ブリッジを占拠されるのは困るからね。それにしても軍用レーションなんかあるんだ。キャベツ味かな?
俺も避難民たちの様子を見に行こっと。好奇心でテチテチとついていき、その後少し後悔する。
━━学生たちは泣いていた。生活がよほど厳しかったようで、開けるとホカホカと温かいお弁当になる不思議な軍用レーションをむさぼるように食べていた。
「うぅ、久しぶりの温かいご飯。温かいご飯って、こんなに美味しかったんだ」
「うん、この部屋も暖かいし、私たち助かったんだね」
何枚もジャージを着込み、この極寒の寒さを耐えてきたのだろうか。肌は真っ赤で霜焼けが酷そうな学生たちは、このままでは死んでいたのは間違いない。
凍傷になっている人はいなさそうで、霜焼けですんでいるのは、きっと魔物を倒してステータスが上がったからだろう。ステータスの中でも魔力は、肉体の頑丈さを地球の頃とは一段上へと引き上げているからな。
最初に助けた6人は偉いことに、自分は食べずにせっせと軍用レーションを運んでいるので見上げた子供たちだと感心しちゃう。
「ピキピキ(お前らもレーションを食べて休んでろよ。残りの軍用レーションは俺が運ぶからさ)」
見ていて可哀想なので、少し手伝ってやるか。テレキネシスを使えば楽々だからね。
「ぐ、軍用レーションは俺が運ぶから、私たちは休んでって」
「本屋、このマーモットの言ってることがわかるの!?」
く~るに手を振ってやり、騒がしい後ろを気にせずに俺はテチテチと貨物室を出るのであった。
◇
「え~と、軍用レーションがあるのは倉庫だって言ってたよな。こっちかな」
案内板を見ながら、テチテチと通路を歩き、倉庫を探す。巨大な揚陸艦はやっぱりロマンだよなぁ、落ち着いたら探索してみようかな。
扉の開けっ放しの部屋を見つけて、ここかなと中に入り━━。
「ん、まだ避難民がいたの?」
倉庫に一人の少女が佇んでいることに気づく。
「次元を超える召喚の中で一番簡単な方法はなんだと思いますか?」
電灯の下で、キラキラと金糸のように美しい金髪をツインテールに纏めているメイド服の少女は、穏やかな笑みを向けて問いかけてくるのであった。
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